決断をするのは大変だ。
新しいことを始めようとするとき、人の体は一つしかなく、時間は平等に24時間であることから、何かを手放してからその道へ進むかの決断を迫られる。
まだできる、まだやれる。そんな余力ある状況で手放していくには、相応の覚悟が必要だと思うのだ。考えられる可能性を色々と拾い上げて自分と向き合う作業なのでとっても面倒だし、わりと骨が折れる作業である。
だから世の中には『始めたことをやめない』と決めている人もいるくらいだ。それはそれでその人の選択であるし、なにより継続は力なり。
良い悪いは誰にも決められないが、わたしは仕事柄、他人の人生の岐路を見つめる機会が多いからか、継続することだけが最良の選択肢なのか、というところは日々問うていたいところである。
というわけで『大切なお知らせ』と同時に発表された有観客ワンマンライブ。2部制の2回目は配信もしてくれるとのこと。こんなご時世でなくとも年末に東京遠征などできるはずもないわたしにとっては非常にありがたい。
さてさて、現場に行けないわたしがアシュラのライブをライブハウスで観たのは2019年10月16日が最後だ。コロナがなければ春に北九州で観られるはずだった。
息子のイヤマフに書いてもらったサインが、保存のためにと吹きかけたフィキサチーフで滲んで読めなくなってしまい、次のライブでまた書いてもらうんだと思ったまま、結局そのままになってしまった。
ステージの上にいる人たちだけど、サインを書いてもらうのは特に地方のライブハウスではさほど難しいことではなかった。ライブ前に物販に行けば嫌な顔一つすることなく気軽にコミュニケーションを取ってくれるからだ。
次の時にお願いすればいいや。そんなふうに簡単に考えていた。
長く生きてきて世の中に不変なものが無いことなんて知っていた。ただ、さすがにこんな世界になるとは思っていなかった。
池袋Admはあまり大きな箱ではなく、普段だってソールドアウトになってしまう。たしか去年の年末もアシュラはワンマンライブをAdmでやったと記憶しているが、その時だってすぐに売り切れてしまっていた。果たして今回の定員は何人だったのだろう。第1部と第2部。狭き門であったことに違いないだろう。
ライブ、行きたかったな…。カズマさんの最後を見送りたかった。
もしもツアーが予定通り行えたとすれば、全国の同じ思いの人たちがそれぞれの会場に集ったことだろう。脱退や解散といった『大切なお知らせ』に伴うバンドの変化は突然やってくる。発表する側はもちろん事前に色々な準備をしているのだからその突然感はないかもしれないが、受け取ってばかりの側からするといつだって突然だ。
今回は流れに沿ったライブの感想ではなくて、全体的な感想になってしまうけれど、カズマさんの新しい門出を祝いたいなと思っているし、まだアーカイブが残っているのでみんなチケット買って観るといいと思う。
twitcasting.tv
いつものSEで出てきた4人(サポートキーボードのアツシさんを入れて5人)。
どうしても後ろにセッティングされてしまうし、基本的にボーカルと丸被りになるので、ドラマーは見えないことが多い。しかしどうやらAdmは今日の配信のためにドラム撮影用の新しいカメラを購入したとのこと。お陰で普段はあまり見えないカズマさんの姿がよく見える。ありがたいことだ。
Admに実際足を踏み入れたことはないが、VRライブハウスだったり、普通のライブ配信であったりで、何となくの広さを把握しているが(都の基準に沿ってライブをやったら…という例のバズった動画も脳内参考資料の一つだ)観客有りの状態で配信もするとなると、またそれは大変なのだろうと思う。スタッフや機材が増えればまた別の問題も出てくるだろうからだ。
最初少しだけ音が小さくて、どうやらそれはわたしだけではなかったようで、コメントの指摘を受けて『男が女を唄う時』の途中から少し音量が上がって聴きやすくなった。
セトリ
・はじまりの唄
・ALIVE
・絶対彼氏以上
MC
・男が女を唄う時
・Someday Somebady
・中野新橋ラプソディ
MC
・Starlight Blues
・旅人の行方
・運命の少女
・ジャパニーズマン
換気タイム&MC
・山の男は夢を見た
・D×S×T×M
・Final Fight
・Whiskey Coke Brandy Strike!!
MC
・TM NEET WORK
・月はメランコリックに揺れ
MC
・ENCOUNTER
・Daring Darling
・Over the Sun
全体的に今回は1日2回公演の2回目ということもあって、落ち着いていたように思う。ただMCの中にもあったけれど、久々にお客さんの前でやるライブだったから何だか照れ臭いとのことだった。『照れ臭い』とはまた独特な感性だなと思った。雑に分類すると『緊張する』と言ってしまいそうなものだが、亞一人くんの語彙は面白いなと思う。
『Re:ENCOUNTER』というタイトルにふさわしく、ENCOUNTERに収録されている曲を中心に構成しながらも、それまでの定番曲も織り交ぜたセトリ。第1部はまた違う内容だったということなので、そちらに参加した人の感想を楽しみに待ちたいところだ。
何よりアシュラはとにかくライブがカッコいいので、もう本当にライブをたくさんやってほしい。亞一人くんはステージの上が何よりカッコいいと思う。今年はライブの機会が少なくて、プライベートでも悲しい出来事があって青ばんづくりもあるから大変だと思うのだけど、やっぱりステージに立っていてほしい。
ステージブランクが少しだけ感じられたけれど、それは歌詞間違いだったり、煽りで噛んじゃったりしたところぐらいで何ら問題ない小さなことだ。終始楽しそうでよかったと思う。
ただ楽しいながらも終わりに近づいていくたびに亞一人くんが、あと5曲とか、あと3曲か…なんてシミジミ言うもんだから、ちょっとだけしんみりしてしまった。
門出の曲となる『ENCOUNTER』は本当に歌詞がとても良い。ずっと変わらないが正解ではないから、振り返れば変わっていく人生の中で、本当に一瞬ともいえる短さで、それでも濃密に過ごしていくのが他人との縁なのではないかとわたしは思う。だからこういう歌詞の曲がとても好きだ。
世界中で予定が変わってしまった人がいるだろう。こんなはずじゃなかったと誰もが思った1年だったと思う。そこが上乗せされていることで何だか特別なことのように思えてくるけれど、出会いがあり、別れがあって、本来はそれが当たり前なのだ。
バンドも組織であると考えるならば、加入した途端に肩書がつく。明日からは『アシュラシンドローム』の肩書が外れたカズマさんだが、円満退社と同じようなもので振り返られる過去として積みあがっていくのだろう。
youtu.be
今回の配信では(というかどの配信であってもだろうと思うけど)お客さんが映らないように配慮されていたと思うのだけど、Darlingの時に最前の人の手が映っていて、なんだか去年までのライブが終わった後にTwitterにアップされていた動画みたいだなって思って嬉しくなった。
画面の前からでは伝えられないものを、きっと伝えてくれたのだろうし、感染者数が多くなってきてもしかして観客を入れてのライブが難しいのではないかという不安もあったので、Admに行って見届けてくれる人がいてよかったなと本当に思う。
ラストの『Over the Sun』は言わずと知れたRSR出演が叶った時の曲だ。
youtu.be
「これから」への期待を歌った歌だと思う。ラストを飾るにふさわしい。最後の最後、配信はカズマさんの1ショットが多く映されていた。
2019年10月3日の渋谷ワンマンの時のバックステージパス風ステッカーには、サインはあるのに日付が入っていない。忘れられたそのスペースを見るたびに「持ってきたらいつでも書くよ」とカズマさんが言ってくれたありがたさをかみしめるのだと思う。それもまた良き。
カズマさんのこれからの未来に幸あれ。
2021年は良い年になっていけるよう願いを込めて。そして今年は一度もアシュラシンドロームのライブに行くことが出来なかったから、来年はライブハウスで会えるといいな。
カズマさんの新しい活躍の場『MOCMO』
いつもおいしそうなので、いつか絶対行く!
MOCMO sandwiches