箱日記

ライブに行った感想を細々とつづっています。

2019年11月15日 打首獄門同好会 獄至十五ツアー 熊本Be-9 V1

熊本の対バンが発表されたときは、リアルに嬉しかった。
岡崎体育くんのことは知っていたけれど、チャンスがなくてステージを観る機会に恵まれていなかったからだ。

打首さんの今回のツアーは47都道府県、全部をまわる大規模なツアーである。春にスタートして夏フェスの時期を挟んで前半後半に分かれており、前半では6月に福岡と大分に参戦した。地元福岡はバックドロップシンデレラとの対バンで、わたしはついにバクシンチャンスを引いたのだ!と喜び勇んだのが記憶に新しい。
対バンツアーは色んな意味や事情が込められていると思う。わたしは自分のことを音楽好きだと思っていないし、聴くものは偏っているし、理論も何にもしらないので語れるものは何もないが、体育くんのステージが観られるというのは単純に嬉しかった。

 

平日なので息子と2人で行こうかと先行チケットを2枚とっていたことをすっかり忘れ、偶然仕事が休みだった夫を誘ってじゃあ一般でチケットとるよ、となぜかさらに2枚とることで4枚のチケットを手にすることに成功した。3人家族なのに見えない力が働いてしまっていた。なんということだ。余ってしまうじゃないか。

チケットを取り間違えるだなんて、まるでライブにめちゃくちゃ行っている人みたいじゃないか!「ライブ行きすぎてて、チケットどれとってるかわからなくなっちゃったー」とか言ってみたい。いや、今こそ言うべきだったのだ。しまった。
無事にお譲りすることができたからよかったものの、今やチケットが取れないバンドとしての立ち位置を確立しつつある打首さんのライブに空席を作るわけにはいかない。次からはどんなに浮かれていようと、どれほど酒を飲んでいようと気をつけねばと思う。

とにもかくにも、後半ツアーの熊本と佐賀は、夫も含めて家族3人での参加となった。
家族で行くとなれば、公共の交通機関ではなく車が断然安上がりだ。運転は普段から車で出張に出ている夫に任せてしまえばいい。
わたしは自分自身も仕事で車を使ってわりと走るし、実家に車で帰省することもあったので運転自体は嫌いじゃない。お酒が飲めないことだけが、ただそれだけが悲しいのでなるべくライブの日は電車移動をしているだけだった。運転手がいるならそのあたりは気にしなくてもよいではないか。

さて、何時に会場に着くように旅立つか。夫は開場時間を聞いてくるが、わたしは平日の仕事終わりじゃなければオープン時間もスタート時間もあまり気にしない。なぜなら昼と呼ばれる時間のうちにたどり着くように家を出るからである。
夫からはよく「リハでもするんか」と言われてしまうが、しない。何もしないが遅くても15時には会場を確認したいのだ。先行物販が16時くらいということを考えても、15時が妥当なところだと思う。
今回は少しだけゆっくりめに家を出たので、ナビが示す到着時刻は16時。不安である。もし何らかのアクシデントが起きてしまえばオープンに間に合わないかもしれない。

本日のオープンは18時、スタートは19時という平日仕様。16時半から先行物販。会場は熊本Be-9。
福岡Be-1、長崎のBe-7、大分Be-0、そしてここ熊本はBe-9という箱だった。名前の羅列を見てわかるように同じ系列のライブハウスである。
チケットを見るとBe-9V1と書いてある。「v1」ということは「v2」もあるということか。実はこの箱には行ったことがなく、3階建ての上と下でキャパの違う箱が2つあるのだということは今回初めて知った。

市電とともに熊本城を横目に見ながら時間貸しの駐車場へと車を移動させる。おそらくは中にいるわたしのいで立ち(体育くんのロンTとキャップ、そして獄パン)で、管理のおじさんは、こいつらは夜遅くなる組だと判断したのだろう。その駐車場は22時30分に閉まり、次は朝7時まで開かないということを重要そうに告げてきたのだ。
22時30分…微妙である。ライブは完全に終わっているだろうが、さて家に帰ろうかとするには少し早いようにも思う。19時スタートのライブに向けて15時頃から待機しているわたしは、終わる時間も読み切れないものである。

仕方がないと場所を変えて、少し離れた立体駐車場に車を停める。時刻は16時少し前。本当にナビの示した時間通りにたどり着くことができた。

先行物販の準備が着々と進んでおり、ふらりと打首さんの物販列に並んでみる。しかし並んでまで買うものといえば何があるのだろう。よく考えれば体育くんの方が買うチャンスが少ないのではないだろうか。そう思って列を外れて並びなおした。

本当はふかふかのてっくんが欲しかったのだが、どうやら売り切れているようで、残念ながら買うことができなかった。その代わりにワニさんタオルと夫が欲しがったのでTシャツを購入した。

物販を終えてしまえばまたやることはなくなってしまう。いやでもいいのだ。ライブ前はやることがないことこそが絶対的正義だ。何かやらなければならに事があるなど非常に困る。

そうしてトイレに行ったり、甘いものを食べたり、車の中で少しゆったりしていたら、あっという間に入場整列の時間となった。
今回のチケットはわたしだけA番。息子と夫の分は一般で取ったのでB番だった。いつだってAの1番だったらどうしようという夢を見るのだが、そうそう良番には巡り合えないものだ。今回もA番とはいえ199番。キャパ700ということを考えれば悪くはないが、良い!といえるほどでもない。

しかしこの狭い場所に700人もの人が集まるのだと思うと、とんでもない空間である。大通りから入ってきて商店街のちょうど裏手にあるこの箱、目の前の道路は狭いわりに車も通れば、自転車や歩いている人も普通にいる。隣はマンションだし苦情が多い場所だと困るな…と思ったが、スタッフの雰囲気からしてそこまででもなさそうだ。
しかしこの日はイベント会社「BEA」からスタッフが駆り出されており、分かりやすくスタッフ用のベストを着用して入場整列を始めた。

わたしはこの入場整列の様子を眺めながら「なんて段取りが悪いんだ。全員初めてか?」と心の中ではいら立ちを隠せなかった。
700人をさばこうと思ったらかなりの労力である。それは理解しているし、別に急ぐほどのことでもない。スタートまでは1時間ほどあるのだ。その間に入場ができていればなんら問題ないではないか。BEAのベストを着ているということは普段からこの箱のことを知っているわけではないし、見よう見まねでなんとかということであれば応援したい気持である。

ただそうした背景をもってしても、あれはちょっとひどいのでは?と思った。声は大きいのだが段取りがとにかく悪いので何番がどこに並べばいいのかまずわからないし、チケットを片手に箱の横にある階段を何度上ったことだろう。
細かい整理券番号はお客様同士で確認をお願いしますと言っていたけれど、そもそもどこまでそのシステムが共有されているのか不安になる。入場待機は困難をきわめた。

しかし何を言っていても順番に箱の中にinしていけば、いずれは自分の番がやってくるものである。
いざ入ってみれば199番など、ガラガラに等しいものだ。わたしは迷った。音が一番いいだろうと思うのはPA卓の後ろだが、最初からその場所にいるのは少々リスキーだ。

フロアはこんな感じで。
ステージが見える。まだ人の入りがまばらで、3列目くらいまでしかできていなかった。6列目くらいかなー、フロアの段差と、そこにある柵。あの柵を握りたい衝動に駆られるのだが、ここは我慢だ。
いったいどのくらい見えるのだろうか。そんなことを考えながら、息子が来るのを待っていた。
ソールドアウトの公演は思ったよりも後から後から人が入ってくる。今回の箱はフロアに段差がいくつかあって、後ろでもステージが見えるように工夫されていた。やはり息子のことを考えるならば、最後列ということになるだろう。そう思って最後列の下手端にて本日の場所を決めた。

体育くんのライブを生で観たことがなく、映像でもさいたまスーパーアリーナの【トロッコにのって】しか知らないので、お客さんのノリがよくわからなかったのだが、体育くん好きのフォロワーさんに聞いたところダイバーや押しなどはほとんどないとのことだった。ならば体育くん目当てのお客さんは体育くんが終わってから後ろに下がらないと大変なのでは?なんて思ったりもした。しかし何度観ても【トロッコにのって】は面白すぎる。


打首さんもYoutubeで確認できるライブ映像は大きな箱のものしかない。小箱でのライブフロアがどんな風になっているのかはそれを見るだけでは分からない。最近のMVは非常に可愛らしいキャラクターが前面に押し出されているし、知らないまま真ん中あたりにいると危険ではないだろうか。

そんな心配したところでわたしの力ではどうにもできないことを考えていたら、B番のチケットを持っていた息子と夫が現れた。入場整列さばきは不安しかなかったものの、まだスタートまでは30分近くある。息子が何度もわたしの時計を確認する。前に詰めてくださいとスタッフからの声が聞こえる。このままでは入りきれないから前の方に進んでくださいと入口付近で誘導している様子を眺めながら、いやでもこれはスタート押すんじゃない?と思っていたのだが、19時ちょうどにライブは始まった。

体育くんが出てきた。
わー画面の中にいる人が目の前に!
知っているけど知らない。初めてのステージ。今日が初めてだと告げると、もう何度も体育くんのライブを観ているフォロワーさんが「初めてなんて羨ましい」と言った言葉が印象的だった。そう初めては1度しかない。

バンドではなく、一人でステージに立つ。それはそのステージの全てを一人で背負っているということで、持ち時間の全て、フロアにいる全員が体育くんを見ているということだ。
今回の箱がキャパ700。それだけの人数が全員、何をするのだろうと思って視線を向けているという状況はものすごいことだと思うし、6月のさいたまスーパーアリーナに至っては、18,000人という今日の人数よりはるかに多い、もう何が何だか分からないほどの数の視線を一手に集めていたのだから、どんなメンタルなんだろうと単純に尊敬してしまう。

わたしが体育くんを知ったのは、対バンしたときの会長のツイートか何かだったと思うのだけど、ちゃんと認識したのは、例のファンクラブ騒動の時だ。
やり方としては何が正しいなんてことを外野から言うつもりはない。正解はどこにもなく、最適解を見つけていく必要があるだけのことだと思う。
何かをやろうとすれば色んな意見が出るし、新しいことに対しての受け止め方はそれぞれである。そんなことは今に始まったことではないが、昔と違うとすれば個人の、本当に個人的事情を踏まえた意見がリアルに本人に届いてしまう。それがSNSが盛んな今の時代のリアルだ。
あの時、体育くんが書いた文章を読んだのだが、自分の言葉で、目的について語り、出てきた意見について考えを伝えるその姿勢がとても素晴らしいと思った。それ以来、わたしは彼に対しては好印象しかもっていない。

じゃんけんをして勝った人だけ飛ぼうということで、わたしと息子はチョキをだして勝利した。おかげでジャンプすることができたし、非常に満足である。
今回は箱も大きく、一般で取った人のほとんどは体育くんが来るからだったと思うので、おそらくフロアは半々くらいだったのではないだろうか。
打首さんの人気はうなぎのぼりなので、小さい箱だと一般発売分の枚数は少ないのではないかと思う。そう考えると対バンが発表されてからではなかなかチケットが押さえられない。しかし熊本はバランス的に体育くんファンも多くいたことだろう。それでも熊本には初めて来たと言っていた。
会場を温めていく手腕は目を見張るものがあった。楽しいのだ、とにかく楽しい。お客さんの心をつかむのが抜群にうまいと思う。小さな箱で少ないお客さんの前でステージをこなしてきた積み重ねを感じて嬉しくなった。アウェイに強い人のステージは観ているだけで楽しくなる。

普段予習はしないのだが、体育くんのMVはよく見ていたし、どの曲を聴いていればもっと楽しめるのかなと思い、フォロワーさんに聞いたら予習するのはおすすめしないと言われた。

コール&レスポンスをしようと投げかけられ、非常に難解なコールを求められるという場面があり、なるほどなと笑ってしまった。絶対に覚えられないのに何とか覚えてやってやろうと思うのだが、確実に無理なものを投げてくる。ダンスも難しすぎるし、クラップだってさすがに8小節は覚えられない。

打首のホームページ見た? 表の看板見た? 岡崎体育って書いてあったやろ。なんで予習してこないんだ。
そうディスられるところまでワンセットだ。これを味わうには予習をしてこない方がなるほど楽しい。ただどう考えても予習のしようがないという非常に理不尽な状況であるのだが、ちくしょう!となりながら笑ってしまう。

ステージに設置されているパソコンを操り、ネタを挟みながらステージが続く。しっとりとしたバラードを歌っていたかと思えば「心の声」として自らをディスるような言葉が流れてくる。
もしかして最後に「愛してるぜとか言うつもりじゃないだろうな」と「やめてやめて、そういうのはイケメンが言うからこそ絵になるんだ」とこれは自分をディスっているというよりも、少し皮肉めいたものも含まれていて、そのさじ加減が心地よい。彼にしかできないステージングだと思う。

照明が体育くんを逆光で照らし、センターにある台に上って、満を持してからの「愛してるよ」で締める。あの曲は何というタイトルの曲だろうか。発売されている音源はあんまりやらないと聞いていて、それはいったいどういうことなんだろうと思っていたが、本当にどの曲も知らないものばかりだというのに、全部が楽しい。

ロック界隈と一緒にやることが多く、WODをやってみたいということで、事務所に相談してみたが、ポケモンの主題歌とか歌ってるし危険なことは…とNGが出たそうだ。ならば世界一やさしいWork of Deathをやるということで、フロアが左右に分けられる。
いいところで合図をするので、割れたところからゆっくり歩いて元の位置に戻るというこれ以上ないほどのやさしい仕様である。
「みんなケガしてない? メガネ落ちてない? 靴落ちてない?」と気づかいの言葉が投げかけられるが、端の人がちょっと狭い思いをするだけで、何が起こるはずもない。

面白いステージって、カッコいいステージよりもハードルが高いと思う。様子がおかしいバンドを好んで聴くわたしにとってフロアの掌握率はライブを楽しむための非常に重要な要素だ。お客さんの心の動きをしっかりとつかんで操るからこそ面白いし、音楽的なポテンシャルの高さやオリジナリティがなければ寒すぎてみていられなくなるだろう。コミカルな部分はゆるぎない音楽的な基礎があるからこそ生きるものだと思うのだ。

途中物販の話が出ていて、さいたまスーパーアリーナのDVDについて語っていた。お金を払って買えば、ライブ映像が収録されてるんだから実質タダだと。そうなのだお金さえ払えばライブ映像が観られるのだと思えば実質タダであることは間違いない。ペイしたものを受け取るのだから、物販で売っているものはみんな実質タダであるという考え方はライブに足げなく通う我々のような人間には共有されている認識である。

初めて観た体育くん。本当に楽しいステージだった。この日紅白の出場者発表があり、残念ながら枠にもれてしまったことはツイートで目にしていたが、本人も悔しそうだった。来年はきっと出られることを祈っている。

最後の曲です、と体育くんが言えば「えーーーー」とフロアから声がかかる。「えーーーってちょっとそれ」「どっちの”えーー”」というコール&レスポンス。ここは丁寧に教えてくれるので、参加することができた。
みんなが楽しめる、本当に良いライブだったと思う。


そして、今日の打首さんのステージのために転換が始まった。わたしは家族に別れを告げ、人の波をかき分けて居場所を探す旅に出た。下手側からゆっくりと移動していく。体育くんを見終えて、後ろに下がってくる人たちとすれ違いながら、できるだけ前の方を目指した。
近づくたびに目線が下に下がっていく。フロアは段になっていて、前に行くほど降りていく構造になる。二段目の柵から少し後ろのあたりまでやってきて、そこから先はなかなか進むことができない。これ以上無理をするのは難しいと判断してその場にとどまった。
わたしが移動している間にもステージの上ではセッティングが行われていく。スクリーンが用意されて楽器の音が聴こえてくる。初めて打首さんのライブに行ったとき、転換で幕がなく本人たちが現れたのを見て驚いたことが懐かしい。今はその頃よりもスタッフが増えているが、やはりふらりとステージに出てくると「あ…!」と思うものだ。
セッティング中は、まだだ…まだだぞ…と自分に言い聞かせながらその姿を眺めるのが定番となっているのだが、この日は何かしらのやり取りがフロアと会長との間に起こっていた。流れていたBGMを基盤としたやり取りだったのだが、いかんせん界隈の音楽を知らなすぎるわたしにとってそれが一体何なのかわからないし、中央あたりでぼっちとなっていたので、何なのかを確かめる術がない。もちろん後ろにいたとしても、うちの家族の引き出しもまた偏っているので答えを見つけることはできなかっただろう。この日のBGMでわたしが知っている曲といえば、気志團の「One Night Carnival」とセクマシの「サルでもわかるラブソング」、ビレッジマンズストアの「サーチライト」の3曲だけだ。あとは知らない曲だったと思う。


そうしてセッティングも終わり、ステージには誰もいなくなる。始まるまであともう少し。BGMが大きくなったのを合図にフロアからは歓声が響いた。
今日もSEはバックドロップシンデレラの「池袋のマニア化を防がnight」だ。曲に合わせてメンバーがステージに出てくる。あす香さんはドラムセットの椅子に座り、junkoさんと会長がそれぞれストラップに頭を通して客を煽る。わたしはこの始まり方が好きだ。「それでは始めます打首獄門同好会ですよろしく タカドンジャーン!」の流れが古き良きだと思うのだ。開口一番バンド名を名乗るのが定番化しているのがとてもいいし、VJにも同じタイミングで一文字ずつバンド名が表示されるのが非常に良い。毎回見ていても良い始まり方だなと思うし、フェスなどでは安心感と安定感のある始まり方だと思う。

聖飢魔Ⅱの場合はたいていが「創世記」という曲からなのだが、演奏陣だけがステージに立ちメロディを奏でる中デーモンが後から出てきてよく聞くあの笑い声の後に必ず「聖飢魔Ⅱ」と名乗ってからライブ(ミサ)が始まる。こういうお約束があるときたきたきたきたーーーとなるので、打首さんにもぜひ続けてほしいと個人的には思っている。

最初に名乗りを上げてくれるバンドは好きだ。フェスや対バンの多いライブなどではさらに積極的にやってほしい。知識のないわたしは名乗りもないまま曲に入ってそのまま数曲始まってしまうと、「誰?」となってしまうことも多い。

その点打首さんは最初に名乗りは上げてくれるうえに、次の曲名も言ってくれる。曲の名前を言う言わない論争は前回も書いたかな。わたしはどちらも言ってくれるステージングの方が馴染み深いし好きだ。

1曲目は【こどものねごと】
この始まりは定番になっているのかもしれない。「オッケーくまもと遊ぼうぜ」で始まった。オッケーの後には任意で文字が入れられるのが最近の定番だ。
DONGARAスタートもたまには混ぜて、こちらを翻弄してほしいなどという淡い期待もしてはいる。
だって本当は「爆走体制」だって聴いてみたいのだ。そうやって定番をいくつか作ってまぜこぜにしてしまえば、今日は何だろうなーと頭の中がグルグルと回り始めるような気がした。

この曲、ミニアルバム「まだまだ中堅」を初めて聴いたとき、これ絶対ライブの1曲目じゃん!って思ったんだよね。というかみんなそう思ったはず。
予想通り、発売以降はずっと1曲目がこれだ。そうなると発売前はどの曲が1曲目だったんだろうと思って昔の感想をざざっと眺めてみたけれど、ライブハウスでのライブを観た経験が乏しすぎて驚いた。
武道館以前に福岡と長崎で戦国絵巻ツアーで観ているのだけど、その時のことはどこにも書いてない。ゆえにセトリは覚えていない。
以降となると、去年の山口周南のロットンとのライブと対バンツアーの筋少とのZeppダイバーシティ。今年に入ってからの獄至ツアー福岡と大分。
わたしのライブ感想文は打首さんとアシュラの2バンドをメインに作成しているが、ライブの数としては同じくらいなのだが、フェスとライブハウスの割合は随分と違うのだなと思った。アシュラはどちらかというとライブハウスが多い。
そうそう、打首さんの1曲目だが、「こどものねごと」以前のものだと、周南では「島国DNA」、ダイバーシティでは「DONGARA」だ。ラインナップ的にちっとも参考にならなくて残念である。

2曲目は…と書いていきたいところなのだが、今回の熊本はちゃんとしたセトリがわからないので、本当にこのタイミングだったかは定かではないというまま書いていこうと思う。

【島国DNA】
いつものマグロたんが泳ぐフロア。下手側にいたのだが、触れそうで触れないもどかしさを抱えながら必死に手を伸ばす。
「ワニさんも仲間に入れてあげてー」…と会長が言うと、今度はおもむろに同じような素材で作られているであろうワニさんが投げ込まれた。これは体育くんの「感情のピクセル」という曲をもじったものだ。このワニさんがまたかわいいの。マグロたんもだけどワニさんもどこから見つけてきた子なのかわからないのだけど、かわいい。

そして聴きたかった、ぜひ聴きたかったこの曲。【Fly Away】
ベストアルバムの収録曲がまだわからなかった頃、ベストだけど新曲が3曲という情報だけが先に出た。そのうち1曲はこうぺんちゃんのMVがかわいい「なつのうた」で、わたしは「なつのうた」が発表になったとき、ああきっとあと2曲は重めの曲だ、とそう思ったのだ。

新しく購入したアルバムは頭から再生するようにしていて、18曲中の17曲目、流れてきた瞬間に「はいキタコレ好きなやつーーーー!」とテンションをあげてしまった曲である。そのままリピートボタンを押して、何回も繰り返して聴いてみた。これは好きなやつだ。わたしはやっぱりメタルが好きだ。色んな味付けがあるライブやバンドが好きということは間違いないのだが、オーソドックスなものがくると嬉しくなってしまう。純粋なメタルバンドではないけれど、邦ロックというジャンルでもないと思っていて、ラウドロックがよくわかっていないけれど打首さんはメタル寄りだと思うのだ。ジャンルの話はあまり詳しくないし、するともめるのであまりしたくないのだけど…。

購入したCDを初めて聴くときは、基本的に最初から流すようにしている。ランダム演奏(今はシャッフルというのかな)という聴き方もあるけれど、曲順に意味が込められていると思うので、初回はそのこだわりも含めて楽しみたいのだ。
しかし先日、CDを売るということについて書かれたとある記事を会長が引用RTしていた。


不定期に放送される「渋谷のナイト」でもバンド運営論と称して、昨今の音楽業界についてインディーズバンドマンたちと、L&DKの菅原さんで熱く語られていたのも記憶に新しい。
わたし個人としては、CDはグッズ化されて残るとは思うのだ。ただ、会長が言うようにPCからDVDドライブがなくなって、そもそもPCを持っている人の数も減ってきているのかな。我が家は古いPCを使っているので気が付かなかったけれど、最新のものはドライブが付いていないのだ。そうなればCD買ってきても取り込めないのである。
以前あるあるくんのライブで物販に並んでいた時、初めてアシュラを観てよかったと言っていたお客さんに思わずCDを勧めたら、家にCDを聴くプレイヤーがないと残念そうに言われてしまった。
わたしはそれを聴いて、本当にカルチャーショックを受けてしまって、CDが売れないということは知っていても実感としてはまだわたしは一昔前にいたのだなとものすごく納得してしまった。今や多くの家庭ではCDを買っても聴けないのである。
たしかにそれも時代の流れだと思うし、物理的な物が手元にあるというのは安心ではあるけれど、実際購入したCDを毎回プレイヤーに入れて聴いているかといえばそうでもないのだ。
配信は便利だ。たとえばたくさんのバンドが出るライブに行ったときなど、スマホとイヤホンさえもっていれば、すぐに購入できてなおかつ帰り道でライブの余韻に浸りながら聴けるのだ。これほど贅沢この上ないだろうと思う。

良い面もたくさんある。わたしが一つ懸念しているのは、「アルバム」とか「シングル」といった概念がなくなっていくだろうこと。
音楽配信、つまり月定額でアーティスト名検索をすればあらゆる曲が出てくる。それを例えばアーティストで絞って自分なりのプレイリストを作ることができる。
そうすると曲ができたら配信に載せる形になっていくのが自然で、コンセプトアルバムのような本当にしっかりとしたテーマで意味づけしたものは残りそうな予感もあるが、普通のアーティストはアルバムというものを作らなくなるだろうと思う。
それはそれで非常に寂しい気分だ。

A面B面というレコード文化において作られた概念は、カップリングという言葉で残っているように思うが、そろそろ限界だと思う。わたしがいつも感想を書くときに「音源」という言葉を用いるのは、「アルバム」「ミニアルバム」「シングル」というCDとともに根付いていた言葉が当てはまらなくなってきているからだと思う。
A面はさしずめ「リード曲」としてYoutubeでMVを先行公開するものが近しいだろうか。
シングルCDの3曲目がカラオケ音源だった頃が懐かしい。果たしてあの文化はいつ廃れてしまったのだろう。

そんな風に移り変わりの中にいる。会長は試行錯誤しながら新しいものを取り入れていくだけではなく、ど真ん中で文化を作っていこうとしているのだと思う。
そしてそれは体育くんも同じで、わたしは知らないけれどそういう気概の人たちはたくさんいるのだろう。
音楽で飯を食うのは難しい。昔からずっと言われてきたことだが、今は少し意味合いが違っていると思う。

【TABEMONONO URAMI】
久しぶりに聴いた。プリン!この曲のイントロ最高だよ。こういうちょっとヘビーな曲調だと、どうやってノったらいいんだっけ?ってわからなくなる。ヘドバンだよなって思うのだけど、観たい!と思うのと、周りからちょっぴり浮いてしまうので結果右手を挙げてこぶしにする感じになる。
プリンは武道館ぶりかもしれない。特に確認はしないけど、とにかく久しぶりに聴けて嬉しかった。かっこいいんだもん。可愛い曲もいいのだけど、せっかくの7弦ギターと5弦ベースなんだもの。重めの曲が聴きたいと思ってしまうのです。完全にわたしの好みの問題です。

【きのこたけのこ戦争】
打首さんの曲の中で唯一、WODの指示が出るこの曲。
今回のライブを観ていて思ったのだけど、会長はステージの上では歌と演奏と達者なMCというこの3つをしっかり行っていて、曲中にフロアに向かって何かを要求することが少ない。
クラップであったり、ヘドバンや何らかの手の動きなどの、そうした煽りはほとんどないということに気が付いた。アシュラのライブだと亞一人くんがそういう役割を負っていて、オイオイのところがあったり、山を作って左右に振ったり、あーいえーを歌ったりと色々忙しい。
最初に行ったときにその忙しなさに驚いたのも事実で、打首さんの方がわたしにとってはオーソドックスな形であることは間違いない。

今日のフロアは段があって危ない。このままではケガをしてしまう。二段目から向こうは安全のため別の方法でやろうということになり、Work of deathの指示がでた。体育くんがやった左右に分かれて、合図とともにただ歩いて元の位置に戻ってくる、というあれだ。
WODのタイミングを見計らって、前の方に行こうかなと思っていたわたしにとっては少し残念だったが、それはそれで面白い。
分かれるがよい、分かれるがよいとなって、きのこ軍とたけのこ軍に分かれ、いつもの会長の合図でそっと歩いて戻る。カオスだ。体育くんの時は後ろから観ていただけだったが、実際に参加してみると非常にカオスなのである。
「ケガしてない?」「靴は?メガネは?大丈夫?」というねぎらいの言葉までもがセットで、本日のきのことたけのこの戦争は非常に優しさにあふれるものであった。そういえば体育くんがきのこたけのこを指して「打首のほら、曲でもやるでしょ。菌類となんか植物の幼い頃の歌みたいなやつ」(うろ覚え)と言っていたのが面白かった。どちらもチョコレートだ!と思ったものだ。

珍しくギターを持ち替えないまま始まったのが【はたらきたくない】。
コーンとなつのうたとこのMV可愛い勢3曲は、あの首相にプレゼントしていたヘッドレスギターで演奏されていたように思うが、今回はナチュラルカラーのギター2本を替えることはあっても、ヘッドレスギターの出番は最後までなかった。珍しい。
ギター漫談のように祝日のなさへの恨み言を語るMCが最近の定番であったが、熊本では意外にあっさりしていたように思う。月曜日にはきっとみんな再び心を一つにするだろうと言っていたのは、こちらではなくて佐賀だったかな?
アルペジオをやっぱり少しへみってしまう会長がかわいい。

【New Gingeration】
物販、もしくは会場入り口に無造作に箱に入れられた新生姜ペンライトがあれば、その日のセットリストにはこの曲が含まれている。
初めて来た人はそんなシステムは知らないので、会場に入ってペンライトを持っている人がいると「え?なにあれ、どこにあるの?」ってなるんだよね。
息子は心得たもので、ペンライトが置いてあるときはいち早く手に取って準備万端である。
あす香さんのコールに合わせて、新生姜コールをするのが楽しい。
大分の時に最前列に行けたのに、この曲はやらなかったからギターソロの時の新生姜ヘッドに触るというのはいつか叶えたい夢だ。

【まごパワー】
この曲、かっこいいねえ。Bメロのところのドラムが好き。ライドシンバルのカップの音だと思うのだけど、気持ちいいと思う。
未だに「超絶全開熱愛最強 猛烈快進撃制御不能」が覚えられなくて、むぐぐ…ってなってしまうけれど、猛烈快進撃のところとか声に出して言いたい日本語になっていて、会長の歌詞は深い意味はないけれど、言葉の響きはかなり考えて作っているよなと感心してしまう。
文章としての歌詞の意味は平易なんだけど、ストーリーがちゃんとあって、言葉選びにはかなり気を使っている。大澤節だよなーと思うのだ。
面白おかしい歌詞、とひとくくりにしてしまうのは非常に大雑把で、しっかり練られているところがとても良い。
今回のベストアルバムに入っていないので知らない人も多い曲なのかもしれないけれど、この曲のMVは演奏シーンがカッコいい。10獄放送局ではおなじみのあの建物は一般家庭のように見えるけれど、いったい何なのだろう。
この曲はしっかりギターソロがあるので、大好きだ。超ラブ孫のコールも心地よい。

【Shake it up 'n' go ~シャキッと!コーンのうた~】
この曲はついついついつい、VJに目を奪われてしまうんだよ。可愛いから。
打首さんのライブは気が付いたらVJをガン見してしまっている時があって、いやいやせっかくライブに来ているのに見るべきはそこじゃないって思うのだけど、どうも動くものや意味が明確なものに目を奪われてしまうのかつい歌詞や映像を見てしまうんだよね。ただ、オノマトペギターを堪能する、堪能タイムでもある。

【猫の惑星】
この曲は初めて打首さんのライブに行った長崎で聴いた以来かな。あの時はたしか対バンとの共通点を探していったら猫だった、というMCがあって、どうやら当日のセトリ変更だったみたいで、レアなんだよって後から常連さんに教えてもらったんだ。おおそれはラッキーって思ったからよく覚えている。たくさん予習していたからこの曲のことも知っていたけれど、カッコいい曲だからまた聴きたいなって思っていたらMVが出来上がって、ベストアルバムに入って、だから絶対にこの日は聴けると思っていた。
ロディアスでちょっと物悲しい曲なんだけど、あす香さんの声がとても綺麗。最後のギターの余韻が美しいよね。音が消えるまでのわずかな時間がとても贅沢だと思う。

【デリシャスティック】
体育くんの紅白出場が決まっていたら、お祝いになっていたのだと思うのだけど、残念ながら今年は出演者の中には入っていなくて、だから来年の出場を願ってと配られたうまい棒は赤と白。エビマヨネーズとチーズ。
細かい仕込みが段取られていて、さすがと思った。来年はぜひ出場してもらいたいとみんな思ったはずだ。

体育くんが言っていた「実質ゼロ円」ネタを引っ張って、打首さんのグッズ紹介も「実質ゼロ円」縛りで、会長がしばらく頑張っていた。途中でネタ切れになってしまい「実質ゼロ円やめてもいい?」みたいに言っていたのが可愛かった。
武道館のDVDとブルーレイの話もしていたけれど、打首さんは結成15周年という年数のわりに、映像化されたライブが本当に少ない。2枚だもん。ライブは生ものだからライブハウスに来てほしいという会長のこだわりは尊重したいところではあるが、人気が出てきてチケットが取りづらくなっているという現状を考えると、映像化を前向きに検討してもらいたいものである。
そのこだわりを守るべく、47都道府県ツアーなるものを敢行してくれる恩恵は受けつつも、どれほど近くに来てくれていたとしても、どれほど行きたくとも、様々な事情で行けないライブもある、というのは少数派の意見ではないと思っているし、生ものの良さを知っていてもなお、何度も再生して追体験をしたいという楽しみ方も一つの価値であるとわたしは思っている。

うまい棒はエビマヨをゲット。フェスだと受け取った瞬間に食べちゃおうとする人がいることがあるが、今回もこれから配られるのがうまい棒だということを知らなかった人たちが周りにいて、主催ライブにご新規さんが増えるのって素晴らしいことだなと思った。

【私を二郎につれてって】
ニンニクアブラヤサイマシマシ カラメカタメブタダブル の後、誰よりも早く手をたたこうとしているわたしがいる。クラップを求められたり、手を挙げることを強要されることがないライブだというのに、どうしてわたしはここでクラップしてしまうのだろう…とふと疑問に思って、誰がこの動きを決めたんだ?どうして定番化していると思うのだ?と思ったのだけど、ああサカムケちゃんだ、ということに気がついてほんのちょっぴり寂しさを思い出してしまった。
たぶんわたしがライブで定番だと思っている動きは、サカムケちゃんが誘導していたものなのだと思う。風乃海くんはノリノリでVJをやっているけれど、お客を煽ったりはしないので、打首さんのライブの雰囲気が変わったと言われるのは新しいお客さんが増えたというのももちろんだろうが、その違いもあるかもしれないなと思った。

【ニクタベイコウ】
今回のツアー後半戦は、久々家族での参戦だった。家族というのはわたしと夫と息子という核家族化の中で生活を共にしているフルメンバーを指す。
夫とわたしは音楽の趣味が合う方だと思う。あいまいな表現にしてしまうのはジャンルについての話ではないからだ。

ニクタベイコウはわたしも夫も大好きな曲だ。何度もライブで聴いたけれど、いつだって大好きだ。
打首さんのライブは今日はハズレだったなということが無いように思う。もちろんプロである以上、ハズレの日などあってはならないのだが、いつも安定しているのだ。毎回ある程度のクオリティを保つというのは、並大抵のことではない。

彼らにハマりたての頃、バズリズムに出たときだったと思うのだけど、この曲を演奏していて、その映像がとても良かったのを覚えている。

わたしは徐々に前を目指していたのだけど、この曲の時は暴れん坊ゾーンから一つ後ろ、2つ目の柵の3列目くらいのセンターまでやってきていた。男性が前にいると背がわたしより高いので、なかなか見えづらいのだが、何とか余白を駆使してステージを眺める。コールのタイミングも言葉も歌詞も、しっかり覚えているはずなのに、またもVJに目を奪われるのだからなんともったいないことか。


【踊るポンポコリン】
この曲の時に張り切って踊りながら前方へさらに近づいた。もう暴れん坊ゾーンは見るからに危なすぎたので混ざれなかったけれど(だって任意か無断かわからないけど、抱えられてダイブしてしまっているように見えた人がいたから怖くて)踊るってタイトルが付いているのだから踊りたい。ということで裏打ちの気持ちいリズムで踊る、踊る、踊る…。
ちょっと無理しちゃったくらいに踊ったのだけど、これがもうしんどい。とにかくしんどい、肺胞死んでるんじゃないかな?
曲が終わってからも動機が止まらず、これは…このまま誰かに助けを呼ぶとかそういう感じになっちゃ…と思っていたら何とか収まった。いやー年を取るとつらいものです。
わたしは会長とあす香さんと同じ年なんだけど、2人のように体を動かす仕事をしているわけではないし、junkoさんのような奇跡の身体能力を持ち合わせているわけではないので、無理は禁物なのである。

わたしの視界は随分開けた。7列目くらいかな?最前列じゃなくてもこのくらいの距離ならステージがよく観える。
いつもこのくらいでもいいのだけど、打首さんのライブだと危険ゾーンでもあるので注意が必要だ。それでも最近のライブに行ってみて思うのが、思うほど危険でもないのかもしれない。わたしは武道館の時のアリーナでライブ開始早々にもみくちゃになったイメージが強くてどうしてもセンターを避けてしまうが、九州のライブは関東ほどの危険はないだろうと思う。

今は秋、ということで秋は実りの季節だ。本編ラストはやっぱり豊作を祈るこの曲となる。
【日本の米は世界一】

お馴染みのMCも初見さんが多ければ初めて聞くものだろうと思う。武道館のDVDとZeppのDVD。この2枚しか打首さんのライブDVDは世に出ていない。
米のイントロ、『米、米』のコール4回目の声の大きさで、初めて来た人たちの数を何となく想像する。でも言っちゃうよ。言いたいもん、あのタイミングで。

今この感想を書いている時点ですでにライブから1か月経過しているから、細かなことは忘れてしまっているのだけど、楽しさの余韻だけ残っている。

今回少し寂しさを感じてしまったのがアンコールだった。
打首さんのアンコールは「最初から、最初から」なのだけど、わたしが初めて行った打首さんのライブって去年の長崎で、長崎って違うのよ、「もってこーい!もってこーい!」というご当地アンコール。
だもんで、その翌日福岡で観たときに初めて「最初からコール」を聴いて、なんだこれすごくいいなって思ったというファーストコンタクト。
そして、その次のライブが武道館だったがために、わたしにはこの「最初からコール」はとても思い出深い。だってあの日の「最初からコール」なんてものは、打首さんのライブ史上に残るアンコールなわけだ。

それが、どうしたことか聞こえてこないのだから困ったものだ。
わたしはライブの楽しみ方は人それぞれだと思っているし、手を挙げるも頭を振るも自由だと思う。コールだってやらなくてもいいのかもしれない。
でもさ、アンコールって呼び声じゃない。終わらないでって気持ちを届けないとダメなやつじゃない。たとえセトリに予め含まれているものだったとしても、やっぱりアンコールは届けたいんだ。

想像してみる。
ヘトヘトで袖に戻って水分補給しながら、少しタオルで汗を拭いて。打首さんはしないけれど、バンドによっては衣装替えの時間でもある。アンコールで着て出てきたバンドTシャツは、だいたい物販で売っているものだ。
一度楽屋に戻るという人たちもいるらしい。でも打首さんはいつも比較的短いのできっと袖にいるだろう。
手を打つ音が聞こえて、最初は小さいけれど一瞬でフロア全体からの音となる。それをきっと聞いていると思うんだ。積極的に耳を澄ませているというわけではないと思う。でも何かをしながらきっと聞いているだろう。舞台袖で。

わたしは古い人間なので通常は「アンコール、アンコール」と声を出すものだと思っているが、最近の主流は手拍子のみだ。しかし打首さんのアンコールは声がある。「最初から、最初から」だ。その声がステージからいなくなったメンバーに届くのだ。

メンバーがアンコールにこたえて再びステージに戻ってくる。会長が「最初からだと〇〇からになっちゃうよ」というところまでがセットなのではないのか。
もちろん自分以外の声も聞こえていたが、わたしの周りで声を上げている人はいなかった。声を出しているのが不安になるくらい誰も言わないのが寂しかった。DVDを見ていなければ、最初からというアンコールはよく分からないだろう。でも一定数の人が言い始めたことは追従しても良かったのではないだろうか。だってアンコールだから。Extraなのだから。


あともう少しだけ演ります。そう言ってアンコールが始まった。
熊本の前は鹿児島で、鹿児島の前が札幌だったという日本を駆け巡るスケジュール。札幌はさすが北海道というだけあって、気温が低かったそうだ。そして一度東京に戻ってから鹿児島、ということで気温を調べたらその高低差が10度近くあったということで、暖かい地域用の荷造りをしてやってきたと言っていた。

確かに今年は暖冬で11月だというのに半そでTシャツとパーカーくらいでいけちゃう陽気の日が多かった。この日も薄手の上着で充分であった。
そんなちょうどいい気温の日にこの曲は演奏された。
【布団の中から出たくない】

そしてラストのラスト、本当のラストは【フローネル】
この曲って最後の曲なのに、Bメロでたくさんしゃべってくれるから、ものすごくお得感がある。対バンバンドの小ネタを混ぜてきたり色々なのだが、筋少と対バンしたとき、オーケンがステージに出てきてひたすらにおしゃべりタイムとなってしまった。わたしの中であの日を超えるフローネルはまだ体験していない。

トイレに座っているフテネコの画の時に、会長が働きたくないアテレコをするのだが、「働きたくないねーエビバデ、セイ!」というと、フロアから「働きたくないねー♪」とコールがかかる。
このやり取り、地味だけどとても楽しい。

junkoさんどうぞ、というjunkoさんタイムがあるのもこの曲の特徴だ。
二度寝について調べたというjunkoさん。Wikipediaによれば二度寝とは『目覚めた後に間を置かずにもう一度寝てしまうことである』とあるのだと。
今まで二度寝はしないと思っていたが、深夜に目が覚めてまた寝るのも二度寝になるじゃん、ということに驚いたという話だった。

ちなみにこれを書くためにWikipediaを開いて驚いたのは、概要の欄に『二度寝は、主に冬の早朝に起こる。』と書いてあることだ。これはひとつ前の曲のことではないか。

ナイスなタイミングであす香さんのドラムが入り、曲に戻る。
そして、幸せって何なのか、最高最高と連呼しているうちに曲が終わっていくのだ。フローネルのコール「最高!」ってのは最高に素敵だと思っている。あの最後に畳みかけるように「自転車、野良猫、牛乳」ってなるの最高じゃない。こういうときにチョイスする3つの中で、最高すぎる組み合わせだと思っている。何が最高かなーって考えたときに色んな選択肢が浮かんだ中で、これを最終的に採用する会長のセンスが好きだ。

最後にジャンプして締めるところ、好き。
客出しのBGMは【だらだらしたい】。この曲絶対に客出しになると思っていたのだけど、やっぱりだった。
ありがとうございましたで終わっていって、それでおしまいなのかなって思っていたら、会長が真ん中で指揮をとりながらワンコーラス「今日はーやる気がでないからーだらだらしったいー♪」を一緒に歌って締めだった。
この終わり方とても良いなと思った。はけるのを見ているだけってのももちろんいいし、名前を呼び掛けたり、全体にこたえるように手を振ってくれるのを眺めたりという時間もすごくいいのだけど、客出しBGMを一緒に歌ってからの締めってなんだか温かくて良いではないか。
もちろん獄バスタオルを掲げて帰っていくだけだった今までもずっと温かかったけどね、打首さんは。今だってライブに行く回数が多いわけじゃないけれど、打首さんのライブって優しいよね。ご新規さんは特に感じたんじゃないかな。フェスも未経験で、ライブハウスに初めて来ましたって人たちには対バンが体育くんだったし、とても良いカードだったと思う。

出口に向かう人の波に紛れながら、最後列にいる家族のもとへと戻ってきた。途中、わりと真ん中の方にいたのに、コートを着ていた人などがいて、暑いのでは!?と思ったのだが、きっと暑かっただろう。

外に出ると物販の列ができていた。地方ツアーは赤字なのだと聞いたことがある。チケットが売れてとんとん、物販が売れてようやく少し黒字になると。それは今の打首さんや体育くんでもそうなのだろうか。
何を売るのか、どう売るのか。と、またその話に戻ってきてしまう。

ライブハウス前の細い路地にはまだまだ人が溢れている。配信された音楽を気軽に楽しむことと、ライブ会場で直接ステージを観て、音を聴いて楽しむこと。それは文化としての歴史が違うだけで根本は変わらないのだと思う。便利さが上がれば、不便と感じるハードルが下がってしまうだけのことだ。どうするのが正解なのかはそれぞれによって違うのだと思う。例えばスニーカーが同じサイズ表記でもメーカーによって大きさが若干違っているように、大まかな基準はあれど必要なものは個人で選び取っていく時代だ。

わたしは購入したワニさんタオルをリュックに入れて、駐車場までの道を歩き始めた。