箱日記

ライブに行った感想を細々とつづっています。

2018年9月5日 アシュラシンドローム 小倉FUSE

どこからが『遠征』なのか、という話をしたことがある。
遠い近いは置かれた環境や感覚により人それぞれ違うのだろう。わたしは観たい映画を思い浮かべて考えるようにしている。
「あ、観たいな」と思った時に気軽に行ける範囲は遠征ではなく、もうちょっと待つか諦める距離であったとしたならばもうそこは『地元』ではない。そういう意味で同じ県内であっても小倉はわたしにとっては『遠征』の距離であった。

 

 

週の真ん中水曜日。週休3日制を望むとすれば、おそらくこの日を新たな休日として指定する声が多いのではないかと思われる中だるみの日。わたしは半日休暇を取ろうと目論んでいた。目的はひとつ、小倉で開催されるイベントでアシュラシンドロームのライブを観るためだ。

わたしの最寄駅から小倉駅まではJRの普通電車が走っている。
昨年、日帰り出張ベースで仕事をしていた時に『小倉行』という電車に揺られている事も多く、なんだか身近に感じていたのだが、改めて調べてみると思いのほか遠い。そのことに気が付いたのは、ライブ当日まであと何日といった直前のことであった。

それでものんびりと普通電車に揺られて行けば、17時30分というオープンには間に合わないかもしれないが、6バンド+DJタイムという長丁場になりそうなイベントなら問題ないだろうと軽く考えていた。
しかし、小学生の母としての顔を持ちつつも、ほとんどその役目を果たしていないわたしは本日の同行者である息子の時間割などというものは全く頭に入っていない。おかげで学校が何時に終わるのかというのはおぼろげな自身の記憶を頼りにしているため、基本的に間違えている。
小学校が終わるのはなんと16時10分。最近はそんなに遅くまでやっているのか。高校生の頃の記憶をたどっても15時台には終わっていた気がするのだが、本当に記憶などというものは信用ならぬものである。

社会人として社外の人と会う仕事には少しそぐわない髪色を、ウイッグで誤魔化して働いているわたしは、一度家に戻ってシャワーを浴びなければライブには出かけられない。
なおかつ普通電車での旅はどうやらたっぷり2時間はかかるようで、それはさすがにどうだろう。
様々な準備をある程度までやったら一度手放してしまう悪い癖をもつわたしは、けっきょく前日に新幹線のチケットを準備するに至ったのだ。新幹線に乗るとなれば、地元で気軽に観るライブ、というには財布に優しくない。やっぱり今日は遠征だなと改めて思った。
そして職場のホワイトボードに書かれたわたしの休暇予定は「午後休」→「15時まで」→「14時まで」と何度か書き換えられることとなり、前日の早退申請であっても誰にも文句を言われない働き方は非常にありがたい。

 

ライブ用のバンドTシャツに袖を通し、バッヂをたくさんつけたショルダーに色んなものを詰め込んだ。抜かりなく準備をしてから、息子を連れて家を出る。
ふだんは1人で移動をするので最近は獄ヘッドフォンで音楽を聴きながらというのが多いが、今日は同行者がいるからまた勝手が違う。
彼の話に耳を傾けながら、トイレについて声をかけながら、30分。思ったより遠いのか近いのか分からないまま小倉駅へと到着した。

なぜか当日の朝、スマホが壊れていっさいの通信環境がない状態になってしまい、ライブキッズな恰好の人を追いかけていくという原始的な方法で今日の箱を目指す。
小倉といえば『小倉WOW』というライブハウスくらいしか思い当たるものがなく、FUSEは初めて聞く名前だった。調べたら2006年にオープンした箱のようで、キャパとしては同じくらいの規模であることが分かった。


アシュラのライブはわたしが3回目、そして息子にとっては初である。
限定ものならやむを得ないとばかりに家族を置いて遠征に出かけるわたしがライブの話をするたびに「亞一人くんは来るの?」と聞く息子が、ついにアシュラのライブを初めて観る日がやってきたのだ。
思えば打首さんの武道館で「亞一人くんが吊るされていた」という字面にするとちょっと意味が分からない事実を伝えたことにより、ライブといえば亞一人くんが吊るされるのではないかと思っていた息子は、吊るされるのではないタイプの亞一人くんをようやく生で観ることができるのである。

山口県周南市というところで打首さんのライブを観た帰り道、徳山駅にある『ホテル青木』の看板を眺めながら「あいとくん…」とつぶやいたり、つい数日前家族で参戦した、打首筋少の対バン祭りの会場では、「あいとくんがいた!」と興奮気味に幻を見ていたりと、とにかくお気に入りの存在であることは間違いない。
カラオケで『山の男は夢を見た』を歌いながらステージングを真似る姿が板に付き、『絶対彼氏以上』を朝から口ずさむという小学生は、学童保育の先生に対して青ばんの認知度を広げようと試みるなど、わたしの理解を超えて、なんだか楽しい存在になっていた。

わたしはといえば、8月3日のワンマンライブのステージを思い出したり、Zepp札幌に魂を飛ばして237回という1日のツイート数としてはどう考えてもツイ廃以外の何者でもない暴挙を思い描いたりと、息子とは違った観点で心が忙しい。

お互いにベクトルが同じなのか定かではない想いを抱えて、たどり着いたライブハウスの前でオープンを待った。

あと数分かなといった時、目の前をカズマさんが通り過ぎて行った。周南でお昼ご飯を食べに外に出てきた大澤会長を見かけた時の反省から、「今日のライブ楽しみにしてます!」という答えやすい声掛けをすると決めていたにもかかわらず、やっぱりアワアワしていたわたしたちに気が付いて、通り過ぎた先から手を振ってくれた。なんて良い人なんだ!!と2人で顔を見合わせて笑いあう。

フォロワーさんにもお会いすることができて、なんとかオープンと同時にライブハウスの中へともぐりこんだ。
ライブキッズあるある中の人が主催のこのイベントは、バンドTを着てくる、あるいはラババンを付ける、もしくはディッキを履いてくるなどが入場のために必要とされるものであったが、ライブキッズと入口で伝えればそれらがなくとも無料で見られるというものであり、見回す限りふだんわたしが参戦するものよりもずいぶんと年齢層が若い。
そんなところも落ち着かずドキドキしてしまう。


メインターゲットであるお客さんたちと同じ年齢だったころには『ライブキッズ』なる概念が無く、わたしにとってライブハウスは20代前半の社会人としての遊び場であった。そし20代後半からライフステージの変化により子育て期に入っていたわたしにとって、まだまだリハビリ段階でもあるのだ。
しかし、わたしがライブハウスから足が遠のいていた理由となっていたはずの存在が、ライブTを身に着けて横にいるのだから、月日というのは確実に流れているのだとそんなことを思う。

入口でお目当てのバンドはと聞かれ「アシュラシンドロームです」と答える。中に入ると物販とドリンクコーナーがあり、ぐるりと見渡すとアシュラの物販にはカメラマンのえみだむ氏が立っているのが見えた。
渋谷クアトロのワンマンライブはさすがに違っていたが、地方のライブハウスの物販はえみだむ氏とカズマさんが立っている事が多い。
息子は今日のために亞一人くんに手紙をしたためていたのだが、果たしてこれを預けるべきなのかを迷う。
出来れば本人に手渡したいところだが、終演までとなればさすがに時間が遅くなってしまうだろう。明日も学校ということを考えれば、やはりそれは非常に難しい。わたしだけならダラダラと飲みながら宵っ張りになったとしても問題ないが、そこは保護者として線引きを余儀なくされるところである。

まだ時刻は17時を過ぎたところ。もう少しチャンスをうかがって、タイムオーバーになってしまったら誰かにお預けする形を取ろうということにして、ラババンとバッヂ、それから『だむクジ』を2枚購入した。


さて、とばかりにフロアへと移動する。6バンドの順番はよく分からない。DJというシステムに至っては全く予想がつかない、という状態でまだ余裕があるフロアに足を踏み入れた。
下手好きのわたしとしてはまず下手端にその身を置いてみるものの、やはり不安だ。DJブースは下手の後ろに設置されていて、今日の箱は最前に柵がある。
いったいどこで観るのが正解なのだろうかと、注意深くフロアを見渡して、袖に置かれた楽器を見てどうやらトップバッターではないという情報だけは得ることが出来た。

「ギターがある」「あれはベースだ」という会話を息子と交わす。

うろうろとフロアをうろつこうとするわたしに、息子は前じゃないと見えないと苦情を申し立ててくるが、いかんせん安全が第一である。この広さならステージ後方でも充分見えると思うし、何より怪我だけは避けねばならない。ライブ中の怪我は絶対にあってはならないことだ。痛いうえに誰も得をしないどころか、迷惑をかけてしまう。

とりあえず人手があったほうが安全なのではないかと、先に入ったフォロワーさんを探した結果、上手側の壁を陣取った。
時計を見る暇もなくセッティングされたステージを眺めていると、主催であるライブキッズあるある中の人さんから今日の注意事項が発表され、ついに始まった。トップバッターは沖縄から来たバンドで、恐らくスリーピースなのだと思うが、上手端っこからではベースの人しか見えない。時々ギターの人が見え隠れしつつのステージで、なにやらニコニコと終始楽しそうな顔で演奏しているのが印象的だった。

1バンド目が終了すると転換タイムがDJタイムであるらしく、邦ロックとはと問われて説明できないわたしにとっては初めて聴く曲が流れて、それを聴きながら楽しそうにサークルモッシュをするライブキッズな方々を眺めることとなった。
ステージには幕が張られていて、しかしカメラを抱えたえみだむ氏の姿を確認したことで、ははーん次だなと思いながらもフロアは楽しげなDJモッシュタイムが繰り広げられており、わたしも息子も壁際から動けない。

「次はアシュラシンドローム」と声がかかり、やっぱり!!と思いつつ、まあここでもいいのかなと思っていたわたしを中央から少し上手寄りの位置を陣取ったフォロワーさんがわたしたちを手招いてくれた。
慌ててそちらに移動して、柵前に息子を設置してその後ろから手を伸ばして柵を掴む。ちょうど柵のところに顔が埋まっている息子は果たしてライブが終わるまで無事でいられるのだろうかと思っていたら、アシュラのメンバーが満を持してステージへと姿を現した。

わたしは相変わらずライブの記憶をすぐになくしてしまう。
今回はセトリすらどこにもなくて、この拙い記憶でどこまで書けるか定かではないが、1曲目はやっぱり『男が女を唄うとき』だ。


アシュラが福岡でライブをやるのは初めてということで、お客さんのほとんどがたぶん彼らを知らない。わたしにとっては何度も聴いた定番曲であるが、フロアを煽りながら登場したはずなのに最初の歌謡曲風な部分を歌い始めた亞一人くんを他のお客さんが少し不思議そうな顔で眺めている。
静かなフレーズが終わり、一気に音が鳴る。ああそういうことだったのか、という空気が流れると同時にステージからの熱量も一段階大きくなる。
この瞬間がとても気持ちいい。息子の安否を気遣っていたはずのわたしが、振り上げた右手で彼の頭を殴るという事案が発生してしまうのも、すべてはアシュラのステージが楽しすぎるからだ。

息子よ見えているかい?亞一人くんだぞ。画面の中でカブを運転しながら「うわああああん」とか「こわいいいい」とか泣いていたり、「ロクロロックンロール茶碗♪」というアナタのお気に入りの歌を歌っていたり、タコを取りに船に乗ったり、武道館で吊るされていたのとは違う、アシュラシンドロームの亞一人さんだ。どうだカッコいいだろう。

いつも画面の中にいるけれど実在していて、今日は目の前で歌っているぞと心の中で息子に語りかけながら彼を見ると、柵の間から小さな手をヒラヒラと振りながらステージを凝視していた。

2曲目は『Whiskey Coke Brandy Strike!!』


前日の鹿児島も初上陸だったけれど、小倉もライブキッズが最高だから必ずまた帰ってくると、地方民にとってはそう言ってくれることは本当に嬉しい。
東京から九州はどうしても物理的距離があって、バンドワゴンでの移動を考えれば東京のバンドが来るのはやっぱり大変だ。
分かっているけれどそれでも新たなライブ予定が解禁されるときにはどうしても期待をして、そして落胆することを繰り返している。ライブは生ものだから、その場の空気はたとえ映像化されたとしてもすべてを味わい尽くすことは不可能である。そんなことは100も承知で、それでもツイッターにアップされた短い映像を繰り返し再生して、つぶやくのだ「頑張れるぅ…」と。
ほんのわずかであってもその日を知る事が出来る文明の利器には感謝の気持ちでいっぱいだ。

『山の男は夢を見た』

たくさんの人が頭の上で山を作って、サビでは亞一人くんの動きに合わせて高く掲げた手が左右に振られて、また嬉しそうな顔でその様子を眺める姿を下から見上げて…そんな風に互いに喜びを交換するような時間が本当にわたしは大好きだ。
ステージから飛ぶ汗が色のついたライトに照らされてキラキラと光る。やっぱり耳に届く音は偏っているし、見える画だって限定的だけれど、それでも音に合わせて手を振れば最高の一日がそこに生まれていく瞬間に身をゆだねることができるのだ。

『D×S×T×M』(ミニアルバム『俺達が売れたのは、全部お前たちのせいだ』収録→https://asura.theshop.jp/items/10906361)ではいつも先走って飛び跳ねてしまうのだけど、今回はサビまでぐっと我慢した。"Don't Stop The Music"、そう、音を鳴らし続けろ!
この曲はホントカッコいい。Bメロのスネアが入るところがすごく好き。おそらくだけどライブキッズといわれる年齢の方々にとっては曲調の年代がすこーし違うと思うのだけどどうだろう。
わたしは大好き。アシュラの曲は歌詞がつまっているものでも亞一人くんの声の出し方に色があるので、まっすぐな歌メロかと思いきやちゃんと緩急がついて良い感じになるんだよなー…って語彙が少なくて適した表現が見当たらない。
でもうまく言葉にはできないこの部分が、バラードになるとものすごく特徴的に表れるので、だから静かな曲だとわたしは安らかに召されてしまうのだなと再確認した。

最後は『絶対彼氏以上』


今回は『月はメランコリックに揺れ』でも『Daring Darling』でもなく、この曲でラストだった。息子が朝、この曲を口ずさんでいたから聴けてよかった。わたしはノリの良い曲=テンポが速い曲だとは思っていなくて、自分自身が好きだなと思うのは、裏のリズムだったりするので、この曲は聴いていてとても気持ちいい。
ギターソロ前、「好きに踊れよーー!!!」と亞一人くんが言うのが良いと以前ツイートしていた方がいて、わたしもその意見に大いに頷かざるを得ない。
そしてドラムの方を向いて好きに踊ってる亞一人くんのオリジナルなステップもとても好きなのだ。他のバントのライブ中によくある統率のとれたヘドバンも、お約束のコールアンドレスポンスも大好きで、ライブだ!と思うけれど、縛られることなく身体を動かす許可を与えるなんて、むしろ支配的だとすら思う。好きに踊らせといてこっちを見ずに自分が踊ってるのもまた良い。
亞一人くんのステージングは煽っていくタイプのMCが活きるので、どんなに優しい声かけであったとしても、わたしはここがとても好きだ。

全体的に持ち時間が少なくて、短かったけれど「楽しい!」というよりやっぱり「カッコいい」だ。ライブの感想は色々あって、わたしはいつもふさわしい言葉を探しているのだけど、アシュラのステージは「カッコいい」だと思っている。もちろん楽しいも嬉しいも様々な感情を内包しているけれど、一番表に出てくるのはそれがしっくりくる。
もしかすると昔からのファンの人だとまた違うのかもしれないのだけど、そのあたりどうなのか新参者としてはぜひ聞いてみたいところだ。


アシュラのステージが終わると休憩タイムに突入した。ワンマンぶりに…といっても1か月しか空いていないけれど、規模は違えどあの日と同じ楽しさがあった。Zepp札幌は観に行けなかったけど、大きなステージを経た経験がこれからも生かされていくのだろうと思うとワクワクする。

フロアが色んなバンドのファンであふれてる会場の時は、客席を見回してしまったり、終わってから感想を口にしてる人たちの声に耳を澄ましてしまう。
ドリンクと物販のスペースに出てきたわたしの近くで、アシュラのグッズがほしいというお若い方がいて、もう自分のことのように喜んでしまうくらいだ。ドリンクチケットを酒に替えて、ライブが終わったばかりでまだ誰もいない物販スペースの前で待つその方と少しだけお話する機会に恵まれた。
初めてアシュラのステージを観たという、きっと20代に突入したばかりかもっとお若いかといったその方は、何を買おうか迷っていた。わたしは満を持してCDをお勧めしたのだが、なんとデッキを持っておらずCDが再生できないのだと。
これは驚いた。ジェネレーションギャップに驚くというのは、自分の中の常識がアップデートされていない瞬間を思い知らされる。
やっぱり興味を持った方には音源を聴いてもらいたくて…と思っての行動だったが、なるほどCDが売れないと音楽業界が悲鳴を上げている事は知っていたし分かっていたつもりだったが、やはりわたしはもう古の人間なのだなと改めて思う。

YoutubeでMVを観てって言えば良かったし、『月はメランコリックに揺れ』

をしっかりお勧めできればよかったのだけど、いかんせんわたしのスマホが壊れてしまっていたのと、ライブが終わったばかりで頭が回っていなかったのが悔やまれる。

でもライブハウスで新しいバンドに出会ってほしいという、このイベントの趣旨がしっかりと息づいているのだと感じた。
新しい文化の中で、それでも中心にはステージを見上げて届けられるものをしっかりと受け取る2者間の関係がある。バンドと群衆、でも結局はもっと小さな単位で心に直接ささるから、だからまた観たくなるし足を運びたくなるのだ。たとえジェネレーションにギャップは生じたとしても、そこだけはこれからもシンプルで変わらないだろう。

今回のイベントには制服姿の女子高生も混ざっていて、その様子を横目で見ながら懐かしさをアルコールで流し込んだ。
きっとこれから音楽とのかかわり方はもっともっと色んな形が出てくるのだと思う。しかしどんな風に変わっていっても目の前で鳴る音や声や、その熱と空気はいつだって身体の隅々まで浸み渡り、楽しかったりカッコよかったり、心を鷲掴みにされたりと、感情を揺さぶり続けていくのだろう。

わたしが初めてライブハウスに足を踏み入れたのは18歳の時。地元に小さなライブハウスがあるのだと知って行ってみたくて行ってみたくて。意を決してなんでもない日に電車に乗って、駅からずいぶんと歩いて迷いながらたどり着いた。ど平日の昼間にライブなんてやっていなくて、併設された練習スタジオで同じ年くらいの男の子たちがある有名なバンドの曲を練習していた。
入口からそっと覗いていたら中に入れてくれて、初めて楽器を演奏している音を聴いたその記憶はわたしの一番古いライブハウスとの思い出だ。

お酒を手に入れ、椅子を手に入れたわたしは息子に尋ねる。
「どうだった?」
「あいとくんがカッコよかった!」
未来のライブキッズには今日のライブはどう映ったのだろうか。どのような思い出に格納され、取り出される日はやってくるのか。

「あとママに頭を殴られた」…いや、もうそれはスマンとしか……。

この後、息子にはミラクルが起こるのだけど、それはステージ以外のお話なので簡単に。
お・ん・ぶキターーーーーーーー!!!

「あいとくんの背中は温かかった」だそうです。お疲れのところ感謝しかない。ありがとうございました。

 

…あと少しだけ。
3月のワンマンライブに行くことを決めているわたしはその事をお伝えした。北海道に行ったことがなく、初めて北の大地に足を踏み入れる事をとても楽しみにしているのだと。
「寿司はやっぱり食べないと」と亞一人くんが言った。故郷の美味しいものについて語る嬉しさはわたしも良く知っている。
イクラが好きすぎて、寿司といえばイクラばかりを注文する息子の事を少し話して、札幌でライブが観られる事をとても楽しみにしてると、わたしは伝えることができた。

たくさん食べるよ。わたしにできることは少ないけれど、寿司もラーメンもスープカレーも、ジンギスカンもチーズもバターも牛乳も。たくさん食べてライブを観て、あー楽しかったと笑いながら街を歩いて、サッポロビールを片手にまだ残る雪を眺めてそっと触れて、顔を出した月を見上げる。そんな最高の1日を、札幌の夜を、わたしは楽しみにしています。

次は10月16日福岡。