箱日記

ライブに行った感想を細々とつづっています。

2018年9月1日 打首筋少 ついに対バン祭り2018~13年目の検証~ Zepp divercity TOKYO

20180509
59(獄)の日に、人は本当に驚いた時に「わーーー!」っていうんだなとわたしは思った。

それは夕刻、仕事を終えて近所のドラッグストアでの出来事だった。大澤会長のツイートで驚くべき発表があったのだ。
Zepp対バンツアーの発表。ライブの発表は色んなタイミングで行われていて、そろそろ夏フェスの情報解禁などの時期も近づいていたこともあり、昼ごろにあった情報解禁するというツイートにそこまで期待があったわけではなかった。
地方に住むわたしは行けるライブが限られていて、お財布や日程と相談しつつなので、手放しで「行く!!!」と決められないツラさがある。
買い物カゴを片手に商品の棚を眺めつつ、そういえばそろそろ情報解禁の時間だなとスマホを取り出したわたしはそのツイートを見た時、「あれ、間違えたかな」と思った。
わたしのTLはわたしの好きなものの情報が流れてくるように設定されている。打首さんやアシュラなど贔屓のバンドの情報は、公式だけではなく同じものを好きなフォロワーさんたちの『いいね』だったり『リツイート』だったりで見逃しがないよう整理されていて、とてもありがたい存在だ。
その中にはもちろん筋肉少女帯の情報も含まれている。だから一瞬、そっちのツイートを誤って開いてしまっているのかと思ったのだ。

 

「うわ、うわわ、わーーーーーーーーーーーーー!!!!」
と、その情報が間違いなく会長のツイートであったことを確認したわたしは、ここがお店だということを一回どこかに投げ飛ばして声が出ていた。
もう一度ツイートをよく読む。対バン決定?!た、た、対バン!!!??そんな少々どころじゃないパニックを抱えて、お菓子コーナーを陣取っていた息子を探して店内をうろついた。おそらく足取りもおぼつかなかったろうに、通報されなかったのが奇跡だ。

「ちょ、ちょっと、打首さんと筋少対バンするって!!」
と、こんなダイレクトに何の説明もない発言に「ええ!!」と同じ驚きを返してくれる息子は、本当に我が家で純粋培養されていると言わざるを得ないだろう。
オーケンと? 会長?」
「そう! オーケンと、会長!!」
「まじかー。ママ良かったね」
いつか我が家でのスタンダードと他所の家のスタンダードは違うんだよということに気が付くのだろうが、これでいい。これでいいのだ!
そして、わたしのよき理解者である息子は次にこう言った。
「亞一人くんは? 来るの?」

そんな始まり。5月9日はこんな風だった。

20180523
衝撃の発表当日に先行発売のお知らせを受けて、わたしはこれ以上のスピードはないだろうというマッハな速さで、チケットを申込み、宿を取り、飛行機を押さえた。
打首が筋少と対バンすることがあったら、家族で行こうね。そんな風にお酒を片手にライブDVDを観るという夕食時を過ごしていた我が家は、今回は家族旅行という名目を立てることになる。

わたしは、筋少は再結成からの後追いなのだが、何をきっかけに好きになったのかというのがあまり思い出せない。ちょうど結婚式を控えている時期だったのだけど、何を思ったのか毎日毎晩、同じライブDVDを再生するというくらいにハマっていた。おかげで結婚式のBGMは筋少の曲がかなりの数を占めているし、二次会のライブでは筋少コピーバンドにも演奏してもらった。良い思い出だ。
その時にかけらすら存在していなかった息子も、ダメジャンプはお手の物。問うならば!のコール&レスポンスも完璧。そんな楽しい子どもに育っている。

先行チケットの当落発表は5月23日。対バン発表から2週間もないけれど、なんだかとても長く感じた。肝心のチケットが手に入らなければ、どんなに頑張ってもライブを観る事ができない。
世間では転売ヤーという悪の組織が、純粋にライブを観たいという人たちだけでなく、対応に追われる主催側の時間を奪うという暴挙を続けており、非常に腹立たしい存在である。しかも組織化されていることもあり、個人の力では到底太刀打ちできないほどシステマチックなのだ。彼らのネット回線がダイヤル回線となり、パソコンがwindows95になってはくれぬかと、わたしはそんな呪いの言葉をツイートした。

しかし神様はわたしの普段の行いに対して甘めの評価をつけてくれたのか、家族分のチケット確保を無事完了したのである。ライブで遠征が増えて気が付いたことだが、遠征には『公演チケット』『移動手段』『宿』というこの三種の神器が必要となる。わたしにとってこの中で一番何とかなるのは『公演チケット』だ。そして一番どうにもならないのが『移動手段』である。
もう少し近ければ高速バスなど、少し時間はかかれど、ぐっとお財布に優しい選択肢があるのだが、残念ながら福岡東京は飛行機一択であり、移動手段に至っては検索能力などの技術介入余地があまりない。
せっかく遠くまで行くのだから、翌日何も予定を入れないのももったいないとばかりに、南武線オフ会という電車にただ乗って移動してまた戻ってくるという、世間の人々からすれば時間を費やすだけで何ら意味のない、しかし当の本人からすればものすごく楽しいという聖地巡りの予定を入れる事となった。
何を思ったか押さえるホテルを誤ってしまい、羽田空港近くに陣取ってしまったことは少々失敗かと思ったが、実際当日は特段の不便さもなく、結果良かったのではないか。

そう、風はこちら側に向かって吹いている。
なによりもこの対バンが実現するという事実だけで、わたしは心の置き所に迷ってしまうほどに浮かれていた。

購入したコラボTシャツは5枚。我が家は3人家族だというのに、なぜか数が合わない。
背中には大きく「獄」の文字。そしてその下には今回の対バン祭り3か所の、それぞれのバンド名のロゴとライブの日にちと会場が刻まれている。
わたしはこのスタイルのTシャツがとても好きだ。
その昔、メジャーレーベルが作った一つのモデルで音楽が世間に届けられていた頃。発売したアルバムの全国ツアーグッズは、背中にツアータイトルと全会場と日にちが刻まれていることがスタンダードであったように記憶している。
ツアーグッズとはその日その場所に行ったことの証のようなものであり、デザインがどうとかそういう類のものではない。打首さんの武道館Tシャツを買うことが出来なかった暗い過去を持つわたしは、今回のコラボTシャツでその悔しさを消化させたかったのかもしれない。
ネット通販のおかげで、地方組も手軽にグッズを購入できるようになった。それは本当にありがたいことだ。
しかし、お祭りのような記念ライブのTシャツを、実際に着て参戦するというのは、やっぱり抜群に特別なのだ。

 

20180901
台風の季節に片足を突っ込んでいたが、何とか回避した9月1日土曜日。わたしたち家族は早起きをして福岡空港へと向かった。
前日はもう気が付いたら走り出してしまいそうで、実際コンビニの駐車場に車を止めて入口まで走ってしまうという衝動を抱えながらなんとか仕事を終え、自分の荷物は自分で用意するのだと告げて、スーツケースにライブに必要になりそうなものを詰め込んだ。
ふだんは1人で遠征するわたしは、いったい何をどのくらい準備するのかどうかも分からずに、楽しみにしすぎてやっぱり眠れなかった。

筋少と打首さんが対バン。今こうして書いてみても、やっぱり不思議すぎてどうしていいのかわからない。対バン祭りのメンツは7月にDragon Ash、8月にキュウソネコカミ、そして9月に筋肉少女帯だ。(8月19日にアシュラシンドロームという飛び道具もあったがこちらはZeppツアーではあったものの、対バン祭りではない)

大澤会長がヒビを書いてくれるのではなかろうか、とか、オーケンの特攻服を借りて着てくれるのではなかろうか、であったり、コラボして何らかの曲をやるのではないだろうか、そしてそれは米に関連する曲ではなかろうか、そこからさらに『Natto Never Dies』で橘高さんと会長のツインギターが聴けるのではなかろうか…etcと夢は広がり過ぎていた。
筋少を聴いたことが無いというフォロワーさんへお勧めを聞かれて、すぐには答えられないほどに筋少はたくさんの曲があるメジャーデビュー30周年というベテランバンドである。
対して打首獄門同好会は、今年で結成14年目という中堅バンドだ。一体どんなライブになるのだろうか。わたしには妄想は出来ても想像は出来なかった。

また、邦ロックと呼ばれるジャンルの暴れん坊さんたちは、フロアで激しいモッシュやダイブを繰り広げるのだが、一方の筋少はというとダイブという文化はない。わたしが初めて筋少のライブに行ったのは、再結成してすぐ、今は無き横浜BLITZであったが、その時は、ライブTシャツにタオルというスタンダードな姿の人々の群れの中に、背中に『南無阿弥陀仏』と書かれた特攻服姿の人や、ロックライブだというのにロリータ服に身を包んだ女の子や、スタンディングフロアでスタート待ちをしているときのわずかな灯りで文庫本を読む男性など、それはもう様々な人たちが散らばっていて、非常に驚いた記憶がある。
獄Tがそのほとんどを占める打首さんのライブにおいて、果たしてその異文化はどのように混ざり合うのだろうか。わたしは対バンが発表されて少し落ち着いてからずっと不安に思っていた。
わたしは2バンドのどちらも大好きで、焼肉とハンバーグみたいな組み合わせの定食を白飯片手に食べるかのような盛りだくさん感がある。
フェスのような、もしよろしければサラダもいかが?というビュッフェスタイルではなく、がっつりメニューになったスペシャルな定食なのだ。
しかしながらどちらかをメインディッシュとする人たちにとって、デミグラスソースに焼肉のたれが混ざることが許せるのだろうかというのは気になるところであった。
しかしみんな大人なのだ。平均年齢はこの対バン祭りでおのずと一番高くなる。わたしはライブを愛して愛して長い人たちがたくさん集まる素敵な土曜日となる事を祈った。

 

40分も遅れて飛行機は羽田空港に到着した。何度来ても東京は電車が多くて迷いそうになるのだが、スマホと看板を駆使して行けば何とかなるものだ。今年に入って3回目の東京遠征。羽田で京急に乗り換えることにもずいぶんこなれてきたように思う。そんな小さなことが何だか誇らしい。

お祭りライブの良いところは、全国からこの日をめがけてたくさんの人たちが集まってくるというところにもある。打首さんの武道館の時は福岡からぼっち参戦だったわたしも、今日はたくさんフォロワーさんに会えると楽しみにしていた。息子を連れているのでコラボTを着ている後ろ姿を写真に撮ってTwitterにアップしてみる。こうすると共にいるわたしを見つけてもらいやすいことを、以前のライブで経験していた。

お台場にはZeppが二つもある。ZeppTokyoとZeppダイバーシティ。こんな近くに同じ系列のライブハウスがあるなんて、と思ったが福岡の親不孝通りにはDORUM系列のライブハウスが3つ集まっている。規模は違うが同じようなものかと思いつつ、前日の会長のTwitterアナウンスに沿ってガンダムをめざした。
さすがに最寄駅に降り立つと背中に獄の文字を背負った人々をチラホラと見かけることになった。
長いエスカレーターに身をゆだねると、フォロワーさんから声をかけてもらい、ああ東京に来たのだと急に実感がわいてくる。

わたしはどうしても顔と名前を覚えるのが苦手で、だから息子の後姿を放流しているのだけど、思った以上にたくさんの人に声をかけていただいた。
「もしかして…理さんですか?」という枕詞で話しかけられるわたしを息子が不思議そうに眺め、「ママって有名人?」と謎のつぶやきを残した。
ただ単に、物珍しくて分かりやすいので声がかけやすいというだけなのだが、たくさんの人と初めての挨拶を交わすのが楽しくて楽しくて、不思議で面白い体験だったと思う。声をかけてくださったみなさん、本当にありがとうございます。嬉しい以外の感想がありません。

 

すっきり晴れているとはいえない曇り空。少しグズついて、湿っぽいけれど夏の終わりを感じさせるには十分な空模様だった。雨粒が少しだけ降り注いで、それでも頭の上にわずかに落ちる程度だったのは、晴れバンドと呼ばれる打首さんのなせる業なのか。
彼らもフェスの回数が増えてきて、さすがにミラクルもそうそう起こらないところがリアルだなと思わせるけれど、それでもこの日は困るほどの雨は降らなかった。

今日のために購入した舞台用のメーカーのアイライナーでヒビを入れる。
獄を背負って顔にはヒビを入れる。それは対バン発表の日から今日という日を待ち望みながら、何を準備すればいいのかを考えていたわたしの1人コラボである。
メイクをしたともいえないくらいに簡単なものであったが、書いている本人はすっかり忘れてしまうということもあり、すれ違う一般人の人たちが少し不思議そうな表情で通り過ぎるのを受けて「あ、そうだ顔にヒビがあったんだった」と思いだす。トイレでまた自分の顔を見て「わ!」とびっくりしたりする程度には長い時間を、何をするでもなくダラダラと過ごす。
このまったりとした空気がとても好きだ。ライブ本編はオープンから終了までであることは間違いないが、わたしのライブは少なくとも前日くらいから始まっていて、当日はどれだけ早く会場にたどり着けるかだけを考えている。
そんなに早く行って何をするのかと夫は不思議そうにするけれど、何かすることがあったとするならばそれは大問題だ。そんなものは早く終わらせて、何もしない時間を満喫したい。
走り出したい衝動を抑えてたどり着いた会場で、手に入れた何もしない時間にやることはたくさんある。
それはライブハウス前の看板を眺めることであったり、リハの音漏れ(今回は聴こえなかった)を聴くことであったり、物販の列を眺めることであったりするのだ。

ライブ前に酒を入れるかどうかは悩みどころだ。何といってもトイレ問題勃発の可能性があり、ふだんからトイレをおろそかにしがちなわたしにとっては、中々の戦いなのである。逸る気持ちを抱えて行くトイレほど面倒なものはない。わたしは色んなことを同時にするのが苦手なので、ライブの日はどうしてもトイレと向き合えないのだ。いや、いつだってトイレとは向き合えない。おろそかにする人生だ。可能なら誰かに預けて代わりに行ってもらいたいくらいである。

 

オープンの時間が迫ってきた。チケットの整理券番号は474番。2000人というキャパを考えるなら3ケタの真ん中は良番である。多少の前後があってもいいだろうと思うれど、思うけれどやっぱり今日は前で観たい。
息子はお友達家族のファミリー席に混ぜてもらい、わたしと夫はフロアで参戦という子連れだというのにライブを余すところなく楽しむための素晴らしくありがたい状況を手に入れていた。会場入りしてからの夫の素早い動きに戸惑いながら、必死で彼の背中を追いかけて柵だらけという噂のフロアに感慨深い思いを抱えながら、気が付けば下手の2列目というステージからとても近い場所を陣取った。
実を言うとこんなに近い位置で打首さんを観るのも、筋少を観るのも初めての事だ。場所が決まればまずは一安心して、セッティングされたステージへと視線を向ける。DVDで何度も観た、上手に積まれたマーシャルタワー。実は一個しか音は出ていないと夫が言う。
こんなにワクワクする時間はない。わたしは今筋少のライブがはじまるのを待っている。しかしながら背中には獄の字を背負っていて、いずれ打首さんのステージだってはじまるのだ。もう意味が分からない。
対バン発表の時からずっと、ずっと楽しみにしていたけれど、眼前に広がるステージを改めて視界に入れて、さらに今日という日が分からなくなる。
流れている曲はいつもの筋少のライブとは違っていて、打首さんのライブ開始を待っているときのソレなのだ。わたしにはあまり耳なじみがないけれど、でも聞き覚えのあるものもいくつか混ざっている。でも待っているのは筋少なのだ。下手にはエディのキーボードがセッティングされている。まっすぐ高い位置にマイクがセットされていて、今日は歌うのだろうか、何か話してくれるのだろうかなどとワクワクが止まらない。

おいちゃんが、ウッチ―が、そして長谷川さんが、エディが、橘高がオーケンが、あと数十分でステージに出てくる。
筋少のライブはとにかく音の圧がすごい。3ピース+VJの打首さんもステージの上は5人だけれど、筋少は純粋な演者が6人いて、テクニカルな面はもちろんだけれど、それぞれ尖った個性を奇跡的なバランスでまとめ上げているとんでもないバンドなのだ。
ソールドアウトしているライブだけれど、後学のために観に来たいバンドマンがいたら気軽に連絡をと会長がツイートしていたことを思い出す。筋少がどのジャンルに当てはまるのかということは置いておいて、観においでと誘いたくなる気持ちが分かる。
50代で激しいロックをやっていくのは大変だとよくステージの上でオーケンが言っているけれど、現在進行形で進んでいるその姿は何かの指針になるべくものなのだろうと思う。

そんなことを考えていたらBGMの音が小さくなり、客電が静かに落ちて、会場の興奮が静かにステージへと集まっていった。
そしてはじまる――――――。
ステージに次々と現れるメンバーを、まるで夢でも見ているような気持ちで眺めた。SEが流れて特攻服を着たオーケンの背中に「筋肉少女帯」の文字。背中にバンド名を背負う姿がわたしは大好きだ。

1曲目は【サンフランシスコ】ドラムからはじまるこの曲は、間違いなくアガる1曲。エディのキーボードが美しい旋律を奏でたらジャンプだジャンプ!
ちょうど朝、準備をしながらこの曲を流していて、サンフランシスコはじまりだったら嬉しいななどと思っていたから、もうドラムの音を聴いた瞬間に頭の中のネジみたいなのが何本か飛んでいった。気にしていた押しも圧もなく、とにかく近いステージで粒のそろった音を聴く。目の前ではおいちゃんがニコニコと満面の笑みでギターを弾いている。オーケンの歌声が聴こえて、ソロに突入すれば橘高のギターとエディのピアノが美しく混ざり合うのだ。
「サンフランシスコ!」と声をあげて手をあげる。なんて気持ちいいのだろう。

2曲目はカーネーションインカーネーション
もうどの曲もイントロを聴くだけで、すぐに分かるのがうれしい。定番なのだ。長く活動していてたくさんの曲があって、ライブでどの曲をやるのか全く予想がつかないのに、実際に目の前にするとどの曲も何度も聴いた曲だ。
筋少のライブはとにかく再現率が高い。音源とライブの出来が違うバンドも多いけれど、オーケンの本日の歌詞も含めて筋少は演奏陣がとにかく安定しているのだ。
そしてアウェーというほどアウェーではなかったが、やっぱりフロアの多くは打首さんのお客で、筋少のライブが初めてという人も多かったのだろう。
Aメロの折りたたみをいつもより丁寧に見せているオーケンが印象的だったと、筋少ライブの常連さんがツイートしているのを後から見たが、たしかに分かりやすくやっていた気がする。
フロントマンとして数えきれないくらいステージに立っているそのさじ加減が、またベテランの域を感じさせるじゃないか。わたしは、筋少はワンマンしか行ったことがないので、たしかにいつもよりカッチリとやっていたように思う。
再結成ライブのDVDで「くるくるまわって、リインカーネーションしているみたいだね」曲に入るきっかけとなったこのオーケンの言葉がとても好き。

――昔の人は生きることを苦しむことと考えていて だからもう二度と生まれてくることのないように リインカーネーションの輪から 解き放たれるために…

ライブでは聴く事があまりないが、ピアノの美しい旋律とかぶさるセリフの部分がすばらしいので、打首ファンのみなさんにもぜひとも音源を聴いてもらいたいなと個人的には思う。

1曲終わるごとに「ありがとう」と言うオーケンが好きだ。
今日は打首獄門同好会に呼んでもらって、だから共通点を探していくとけっこうあった、というようなMC。何かがくるのだという予感を感じさせるその言葉に、今日が特別な日であったことを思い出す。
この数日前、オーケンがやっているイベント『のほほん学校』のゲストとして会長が呼ばれ、なんとカラオケで『日本の米は世界一』を二人で歌ったという羨ましすぎる出来事は、行った人の感想ツイートで知っていた。カラオケ嫌いの会長が、普段歌わないパートを一生懸命歌っていた事実。そして会長パートをオーケンが歌うという、何だそれはその映像を売ってくれたら言い値で買うぞというくらいのミラクルだが、それをなぜ『のほ学』でやってしまうのだ。
なぜ、今日のステージでは観られないのだ!!とハンカチを噛んで悔しさを表現しそうなくらいであったが、筋少の次の曲は、もう何年もバンドでやっていないという、ある意味レア曲の【日本の米】だった。

「知らないのか、納豆にネギを刻むと美味いんだ」というキラーフレーズから曲に入る予定が、どこまで自分が言うのか分からなくなってしまい、「あれ、ネギを刻むと…まで俺が言うんだっけ?」とネギだったけジャコじゃなかったっけと、曲に入るきっかけだというのに分からなくなってワタワタするのが可愛すぎた。「お前をネギにしてやろうかー」ってそれは聖飢魔Ⅱ好きの私へのご褒美ですかね?ちょっと待って待ってと曲が始まってからストップをかけるのとか、もう楽しすぎますが…!

レア曲はセトリ予測が難しいのだが、今日だけはこの曲を絶対に演るのではないかと予想できた。きっと誰しもがだ。
たとえばこれが「I LOVE YOU」だとか「夢」だとかそういった類のものであったなら、世の中にはタイトルかぶりなど山のようにある。
しかし『日本の米』と『日本の米は世界一』がかぶること自体がレアではないか。それが決してインスパイアされたものではないというのだから、マニアックな視点と思考が上手い具合に重なり合った瞬間なのだろう。
フォロワーさんがこの曲を予習しようとして音源を聴いたが、CDバージョンは「コメが美味い」と「金だよ金」というやり取りが印象的な寸劇が収録されており、曲が入ってこないと言っていて、「たしかに!」と思って笑ってしまった。わたしもライブで聴くのは初めてだ。
米米米米!」というコール&レスポンスが楽しい。筋少の曲は映像がなくても、しっかりコール&レスポンスが出来る仕様になっている。
サビに入る前の橘高さんのギターフレーズがカッコいいんだ。そこからの「米米米米!」やっぱり筋少最高だ。

食べ物で寄せていくならば、絶対これは外せない。【日本印度化計画】。打首さんとの対バンだから、ではなく筋少のいわゆる世間一般の人も知っている代表曲の一つだ。「ボヨヨン、カレー、ブー」で「B・C・B」とネタにしていた時期もあるほど、定番中の定番曲だが、ライブでは本当に盛り上がる。
「日本を印度に」とオーケンが言えば「しーってしまえ!」のコールが楽しいし気持ちいい。そしてギターが入るこのくだり、何度聴いても本当に楽しい瞬間である。
のほ学で会長にカレーの曲がないの!?なんで!?とオーケンが聞いていたようだが、シブガキ隊の『寿司食いねェ』に勝るとも劣らないこの曲があるからこそ、打首さんにカレーの曲がないのだと思うよ。
まったなしの「ヘーイヘイヘイヘーイヘイ」は何回聴いても笑ってしまう。小節なんてものはないんだ。待たないんだ。4つの頭からなんて音楽理論なんて知らないわたしでも体で覚えているほどのお約束なんてものはなく、もうオーケンのタイミングに後ろが合わせるし客席も合わせるというスタイルである。

筋少のギタリスト二人のギタースタンドには、たくさんのピックがついている。基本曲が終わるごとにピックを投げてくれるのだけど、いつも真ん中あたりで観ていたわたしは、ピックが届く範囲に身を置くのが初めてで、今日は取るぞ!と息巻いていたけれど、中々これが難しい。
2列目という位置はピックが頭の上を追い越していくのだということを知った。おいちゃんのピック、狙ってたけど結局取れなかったのが残念。あのずらっと並んだピックに慣れていたわたしは、打首さんのライブで会長のピックが2個しかついてないのを見て「え? 少ない!!」って思ったのを覚えてる。投げたらなくなるじゃんと思ったら、ピック投げサービスは行われていなかったのがわりと衝撃的だった。
みんな投げると思っていたけど、よく考えたらピックだってたくさん用意するのは大変だ。

わたしはサポートキーボードのピアニスト三柴理(みしばさとし)ことエディが大好きなんだ。(あ、HNがかぶっているのは偶然です)昔は正規メンバーだったが、バンドブームで筋少が売れて忙しくなってピアノの練習をする暇がないからって一度脱退し、現在は筋少のサポートとしてほぼすべてのライブに参加している。それでもサポートという立ち位置を崩さないのだけど、色んなバンドの鍵盤の中ではもうエディが頭一つ抜けて上手いと思う。でもエディの良さはそこだけではなく、とにかくキャラが立っているところ。今回は対バンでお呼ばれされているから、一言も声が聞けなかったのが残念だけど、キーボードがない曲の時に1曲まるまる袖に引っ込むとかなら普通にあるとしても、曲の途中でキーボードの出番がないからってフラリといなくなる人なんて見たことがない。
いつの間にかまたふらーっと戻ってきて、鼻血出るほどメロディアスなフレーズを奏でるのだから、もうエディ大好きだ。

筋少のステージでは、楽器が頻繁に変わる。わたしはあまり楽器自体に詳しくないけれど、わたしの後ろにいた夫がひとつひとつに反応していて、なんだか楽しそうであった。そういう見方が出来る事が羨ましく思う。色んなタイプの曲があって、盛り上がる曲も静かな曲もあるのだけど、今回は打首さんがラウドロックだから盛り上がるのばかりでセトリを組んでるのかと思わせきや、去年発売した新しいアルバムに入っているものも演奏するあたり、やっぱりそこはベテランバンドの味を出してくるなと思った。
セッティングの時にエレアコの音がしたから、何を演るんだろうと思っていて、まさか『航海の日』というインストを?とか思ったけれど、違った。

筋少はバラードも演奏するんです、とオーケンが言ってはじまったのがサイコキラーズ・ラブ】だ。
ピッキングの音がしっかり響くエレアコ2本で奏でられるこの曲は、人の気持ちや愛が分からない「サイコパス」な2人が、それでもお互いに寂しさを持ち寄って共に生きて行こうという、オーケンの独特な歌詞の世界観に彩られた名曲だと思う。
オーケンの愛の曲はいつもどこか寂しい。欠けていることを否定しない優しさが、何かが足りなくて夢とか愛とかそういった誰が見ても綺麗なものから目をそむけてしまう人の心に沁みていくのだと思う。

――パズルをやっとみつけた

という言葉からはじまる歌詞は、本当に秀逸だと思う。
ずっと二人で生きていこう、ずっと一緒に生きていこうと何度も繰り返されるのに、最後の最後で

――もし耐えられないときは あなたがあたしを手にかけたらいいよ

そんな風に締めくくられる。
流れる空気をガラリと変えてしまう事に迷いはない。それはまさにステージ歴の長さを物語る瞬間であり、ライブというものの純度の高さを表している。ベテランはこれだから恐ろしい。盛り上がる曲を立て続けにやって客を煽るだけに終わらない。静かな空気を取り出してもなお、自らの色を放ち続ける。装いを変えても決して中だるみさせず客の満足感が落ちることがない。それは歴史に裏付けされた実力がなせる業なのかもしれない。

今回の筋少は驚くほどに通常営業だった。
自分たちよりもずっと若いバンドにレジェンド扱いされることをオーケンは好まない。筋肉少女帯オーケンに影響を受けた表現者はたくさんいて、それはバンドに限らず漫画家だったり小説家だったりするのだけど、オーケンの世界観をリスペクトする気持ちが強すぎて、目の前にするとどうしても強すぎる想いが噴出してしまうことが多々あるようだ。思春期の頃に多大な影響を受けた人、いわゆる「憧れの人」を目の前にした人がどうなるのか。
それは常に何物でもないままのわたしには分かりすぎるくらいによく分かる。ふわっふわとして足元が覚束なくなり、強すぎる思い出に支配されて、自分の立ち位置と目の前の人との距離感が正確につかめなくなるのだ。

大澤くんはアワアワしない。オーケンは会長をそう表現した。
洋楽キッズだった会長は若かりし頃に筋少をあまり通っていない。もちろん尊敬の気持ちがないわけではないが、あくまでも同じバンドマンとして純粋に先輩としてのリスペクトであり、個別に思春期の特別な思い入れが存在するわけではないからこそなのだと思う。
これはわたしが打首獄門同好会をはじめて認識したときの、会長とオーケンの対談記事でも分かりやすいくらいによく表れていた。
オーケンとの対談記事は、大抵が筋少との出会いだったりオーケンとの出会いだったりを語るところから始まるのだが、会長は少し違っていた。一方的なリスペクトから下から入ってくる感じが全くなく、「なんかちょっと様子が違うな」といった印象を持ったことをよく覚えている。

この曲だって演るだろうと思っていた。フェスというアウェイの場でもみんなでジャンプ。絶対に盛り上がる【踊るダメ人間】
どの曲を予習しておけばいいかと聞かれたわたしも、この曲だけは絶対に勧めておこうと一番に思いつくほどに定番の曲だ。
「ダーメダメダメダメ人間。ダーメ」ダメジャンプと呼ばれる、X JAPANのエーックスというジャンプが元になったとされているが、わたしはX自体をあまり知らないので、ルーツよりも身近に感じている。途中で入る橘高キックの打点の高さは美しい。
この日のオーケンはお客さんをよく見ていた。獄Tで彩られた会場が、筋少のお約束を一つずつこなしていく姿をとても嬉しそうな表情で眺めていたのがとても印象的だ。
フロアはいつもステージの上から与えられるものを受け取って、精一杯楽しんでいる。しかしながらその様子を受けて心底嬉しそうにする顔を眺め観た瞬間とは、何と嬉しいことだろうと思うのだ。長くステージに立ちつづけ、それでもその日のライブに漂う空気を喜びとする。その姿はとても尊いとわたしは思う。

もう一曲くらい激しい曲がありそうなMCから始まったのは【イワンのばか】だった。
どの曲もイントロだけですぐに曲が分かってしまう。
「イワンのーーーーーばーーーかーーーー!」とタイトルを言ったところで少し尺があまってしまった。オーケンのこの感じはずるい。計算されつくしたといってもよいくらいにハイスペックな楽器隊の演奏に、独特の世界観でつづられる歌詞というのが筋少筋少たる所以であるが、時折みせる、この音楽的センスがものすごく高いボーカリストならば決してみせないであろう隙が、オーケンがオンリーワンであると言わざるを得ない瞬間だと思う。
この曲はとにかくヘドバンだ。折りたたみではなく八の字ヘドバンだ。わたしの位置からも橘高さんの美しいヘドバンがほんの少しだけ見える。きっと上手側は大変な盛り上がりであろうことは予想できた。
筋少はセリフが入る曲がたくさんあるのだけど、中々ライブでは聞く事ができない。この曲も長いセリフがあるのだが、音源で余すところなく聴くことが出来る。

――短い命と知った子どもたちは、毒を飲み 次々と死んでいった。
これは‘07バージョンのものであり、元は違った。

――この世の裏を知った子どもたちは、世をはかなみ 毒を飲んで次々と死んでいった。

筋少の歌詞はオーケンがライブ中に作る「本日の歌詞」とは別に、バージョンが変わった時に歌詞が変わるということもある。なぜなのかは分からないけれど、わたしは古い方が好きである。

そしてラスト。筋少ステージのラストは【ディォネア・フューチャー】だった。これは2017年発売のFuture!というアルバムに収録されている。もうすぐ新アルバムが出る予定だが、現存する一番新しいアルバムはこのFuture!だ。
聴いたことが無い人が多かった事も無理はないが、一緒に歌うところの歌詞は「無意識 電波 メッセージ 脳 Wifi」だ。言葉遊びのような歌詞。オーケン語彙の中に多く出てくる「電波」とは、時の流れを経てもそこにあり、脳、あるいは脳髄と近しい位置に一方的に流れ込んでくるものという概念で存在している。
サビでぐっと色っぽくなるこの曲は、咲きと呼ばれる少しビジュアル系をルーツとしている(のかな?)動きがある。知らないであろう人たちのためにオーケンが率先してその動きをすることで、フロアにはディオネアの花が咲き乱れていた。
最後にオーケンが「来世でもまた会いましょう」そう言ってくれるこの曲に救われる人はきっと多い。過去は過ぎ去りもうない、未来きたらずまだないと、これは特撮というオーケンのもう一つのバンドの歌の一節だが、過去も今もただ受け入れて、その先にある未来が明るいとか幸せだとかそんな安易な事を歌うことはなかったというのに、飛び越えて来世の約束を交わすのだから、もうすっかり心を掴まれてしまうのも無理はない。

わたしは、ラストは『釈迦』だと思っていた。でも違っていた。再結成からずっと今も走り続けている現役のバンドは、常に進化している。
お呼ばれでステージをやる事には慣れているだろう。アイドルや声優など、50代のロックバンドとどれほど異色なコラボであっても成功させる説得力がある。しかし今日の主催は曲調や歌詞の世界観、アルバムのタイトル、MCの噛み方もかぶっていると言われ続けたバンドであり、今の音楽シーンの中心であるフェスに引っ張りだこの勢いのある若いバンドだ。しかしそうした存在からの対バンの申し入れであっても、必要以上にファイティングポーズを取るでもなければ、すり寄っていくわけでもなく、自分たちのステージを完遂する。その姿は本当にカッコいいとわたしは思った。

筋少のステージが終わり、わたしは胸がいっぱいになった。丁寧にお辞儀をしてステージを後にする面々。いつもならもう少し曲数はあるが、十分に満たされてさあ帰るか、楽しかった、最高だとビールを求めて外に出るところだったが、何と今日は違うのだ。

これから始まるのは打首獄門同好会のステージ。対バン祭りとはなんと贅沢でスペシャルなことだろう。焼肉とハンバーグ定食だ!しかも白米大盛りである。
先ほどのステージで「余力を残すな」とオーケンは言ったが、余力とはなんだろう。残すような余裕はないけれど、空っぽになって尚、新たに腹の底から湧きあがってくる何かはある。

幕の下りないままのステージは、打首さんたちのセッティング風景が丸見えだった。
「幕閉めないんだ」とわたしの後方から夫がつぶやいた。これはおそらく近年増えたフェスの影響なのだろう。わたしはセッティングとか舞台袖とか楽屋とか、対バンの演奏中に二階席に現れるバンドマンとかが大好きなので、じっくりとステージが筋少から打首さんに変わっていくその様子を眺めた。

Zeppはライブハウスとして考えるならかなり大きな箱だったが、想像の中のそれよりはずいぶんと小ぶりに思える。それはやはり3月に観た武道館の様子が頭に焼き付いているからかもしれない。
そもそもの人数が多く、上手にはマーシャルタワーを積み上げた筋少のステージセッティングと比べると、打首さんのステージはずいぶんとコンパクトに見える。
しかし後ろのスクリーンはとにかく大きい。映し出される映像はきちんと作りこまれているからこそ、ついライブ中に見入ってしまう。歌詞が出るのは分かりやすいし、VJシステムは画期的で大好きだが、違う違う、演者を観るんだった、といつも慌てて目線を変えることになるのだ。どちらも観たいけれど、やっぱり目の前でステージに立っている姿を観たいのが乙女心というものだ。

セッティングが終わって一度袖にはけていくメンバーを眺めていたら、影アナのアナウンスが流れた。筋少が作った空気の温度だけを引き取って、打首獄門同好会のライブへと変えていく工夫である。会長はこうした仕掛けが抜群に上手い。客であるわたしたちの心の置き所をしっかりと誘導して、巧みに操るのだ。自分たちの立ち位置を常に意識したうえで力を過信しない謙虚さが、多様性にあふれたフロアの隅々まで心を整えるための道筋を作ることに長けている。
見習いたい手腕だなとわたしはいつも思っている。

今回の対バンライブの趣旨が改めて伝えられることで、SEが流れるよりも前に打首さんのライブの空気感を会場に滲ませていく。そしていつものSEが流れる頃には、綺麗に会場のスイッチを切り替えてしまった。
そしていつものSEが流れる。バックドロップシンデレラの「池袋のマニア化を防がnight」。

今日はお祭りだと、そう言ってはじまるのだから1曲目は【DON-GARA】
「どんどんどん」「がらがっしゃ」と声を掛け合うこの曲は、お祭りというだけあって大きなステージで演ることが多い曲だと思う。
とにかくイントロを聴くだけで気分が一気に上がる。それは単に盛り上がる曲だというだけではなく、わたしにとってはやっぱり武道館のライブを思い出すからという要素も忘れてはならぬエッセンスだ。
筋少の時には比較的穏やかだったフロアも、この曲で一気に後ろからの圧が迫ってきた。今日は柵が多いのでそこまで大人数でモッシュとはならないと踏んでいたが、それでも前列にいればその影響をモロに受けるのは致し方ない。
運の良いことにわたしの前、最前列の柵を握っていたのはフォロワーさんだったので、その点は少し安心だった。
打首さんも含めて、最近の邦ロックと呼ばれる人たちの曲は1曲の演奏時間が短い。長くて4分くらい?それはモッシュの限界タイムなのかもしれないとわたしは勝手に思っている。

「日本を島国に、しーってしまえ!」からはじまった「俺に魚を食わせろー! 俺はいつでも鮮度にこだわるぜ!さかな!」って可愛いな。
最後の「さかな!」ってあたりが可愛すぎるのだが、打首さんが演奏する筋少!これはわたしとしてはもう脳のキャパを無理やり内部から広げなければ受け止めきれない。フロアもわっと湧いたように記憶している。前日の会長のツイートでも特別な対バンだからと言っていたけれど、まさに体現した瞬間だった。
打首さんの音はゴリゴリしているけれど、やっぱり絶対的な音数は少ないのだなと3ピースバンドであるステージを眺める。
そのまま【島国DNA】、そして日本はもとから島国なんだ。この曲はイントロのギターが本当にカッコよくて大好きだ。わたしの大好きなマグロたん(マグロの浮きぶくろ?)もステージから投げ込まれる。せっかく前列にいるのだから触りたいと手を伸ばしたが、残念ながら下手の方にはやってきてくれなかった。
会長の「問うならばー」が聞けて満足。

次の曲に入る前、ふと打首さんでは耳慣れない曲が演奏される。おおおおおおこれは!!『レジテロの夢』じゃないですか!!!!先ほどの『日本印度化計画』とは違い、これはマニアック。そして何の説明もないところがまたニクい。筋少ファンはさぞアガったことだろう。わたしも夫の方を振り返り、「これは!!!」という表情だけで会話を交わす。
「おまけのいちにち(闘いの日々)」というアルバムに収録されているこの曲を替え歌にして、「メシテロ!」「メシテロ!」とつなげていく。
あとから思い出したことだけど、オーケンと会長が初めて会った対談記事の頃に発売されたアルバムがこの「おまけのいちにち(闘いの日々)」なのである。そして筋少を封印していた会長が、オーケンに誘われて初めて観た筋少のライブがまさにこの「おまけのいちにち闘いの日々ツアー」最終日なのだ。
これは対談の後日談として会長がブログに書いているが、1曲目が始まったら泣けてきたって書かれているそれこそがこの『レジテロの夢』だ。
https://natalie.mu/music/news/166208
音楽ナタリーの記事を見つけたので貼っておくけれど、この写真のどこかにいたのかな。
次の目標は同じステージに立つこと、2015年11月の会長のブログにはそう書いてある。
レジテロとはレジスタンスとテロリストのことだ。レジもテロも誰かの夢、「夢なんだ  行かなけりゃね」で締めくくられるこの歌。13年目の検証と銘打たれて大々的に叶えられたのは「目標」で、でも突き進んでいるのは夢と言われがちな現実だ。筋少ファンへのサービス以外にどれほどの意味が込められていたのかは語られなかったから分からないけれど、勝手に想像して楽しむことはこちら側の特権だと思っている。

そして曲は【ニクタベイコウ】メシテロ曲は多々あれど、やっぱり肉は食の王様だと思う。この曲は「そうしよう!」のコールが楽しすぎる。そしてめしくまのイラストが可愛すぎてついついスクリーンを凝視してしまうのだ。

たくさん食べた後にはアフターケアが大事。おっとこれはと思ったら【歯痛くてfeat. Dr.COYASS】。今回はどっちだ、と思ったらやっぱり登場したのがCOYASS先生。白衣を着た歯科医バージョンで、筋少リスペクトが強いMCをされていた。
メタルを愛しているCOYASS先生が筋少を通っていないはずがないと思っていたが、やはりガッツリと大好きな様子が垣間見れて嬉しく思う。この曲は地方のライブハウスではラップパートも会長が歌うのだが、やはり東京の大き目の箱の時は、本家が来てくれる安定感がすばらしい。ギタープレイに集中する会長が見られるのもレアといえばレアである。
後ろの映像がところどころ歯科医院の宣伝映像のようになっているのも乙である。中目黒に開院するCOYASS先生のところに通いたい、と数日前に完全に横向きであるために生えてはこない親不知のおかげで喉まで荒れたわたしは切に思うのであった。
「あ、よいっしょー」の前に「ぱぱんがぱん」っていうのを会長が入れるのは、ワンマンではあまりなくて対バンの時だけかなと思ったのだけどどうだろうか。(とか思ったけど武道館でもやってた。てへ)
この「ぱぱんがぱん」のタイミングはオーケンの「へいへい」と違って、ちゃんとこちらが言いやすいように頭からだなと改めて思った。似てるも見つけるけれど、違いも見つけていくよ!

食べるのアフターケアは歯磨きだけじゃない。こちらも切実な問題だと思う。糖質制限ダイエットやってみた】
この曲の通りにやれば会長みたいにちゃんと痩せられるの?ダイエットの歌作ってくれてるのに食べる方ばっかり楽しんでしまうのは一体どういう了見なんだわたし!
「パン」「ダメ」「麺」「ダメ」ってダメダメ言うのが楽しい。先ほどまでのダメジャンプの名残もあって、OKよりダメ出しの方に力が入ってしまった。そうだよダメなの、ここには普段食べているけれどダメだよってものが羅列さてていて、ケーキとかチョコレートとかそもそも糖質をがっつりとるために存在しているようなものは、ここに歌われるまでもなくダメなのです。

ここでMC。今日の企画趣旨が再び会長の口から語られる。打首獄門同好会を始めるまで、人前で歌ったことなんて数えるほどしかなかったのに、いざ歌い始めたらなぜか「大槻ケンヂさん好きなんですか?」と聞かれる。似てる似てると色んな人から言われるけれど、オーケンの衣装を担当していた人からも言われるなんて、これはもう一体どういうことだってね。

今回の対バンで今の打首さんと同じ年くらいの頃に筋少が演っていた曲で有名なのはどれかなーとか、わたしも一瞬考えたのだけど、歴史を紐解いていくと打首さんたちの結成が2004年で筋少再結成が2006年という事実にぶち当たった。
筋少が活動凍結したのが1998年。筋少はデビューが早くて活動凍結時、オーケンは32歳。
再結成当時オーケンが40歳だったわけだけど、そこに時空の歪みが発生していて、おそらく会長が似てる似てると言われていたオーケンは現在進行形ではなく20代の頃のオーケンなわけだ。
オーケンからも中学生の頃の俺に似てる、と言われていたし。

意識していないのに似てると言われるということは、波長が似ているということで、このままでは筋少ジュニアになってしまうという危機感を感じたことから、会長は筋少を封印したと言っていた。打首さんだって手さぐり状態で今を作ってきたわけだから、何かにインスパイアされてしまうのは怖いことだもんね。

ーー俺に似てるが立っているなぁーって感じではひとっつも無かったんだけど。
というのは筋少のライブを初めて観た会長がブログに書いていた言葉。この感覚をきちんと持てるまで封印したのは本当に正解だと思う。わたし個人としては筋少と打首さんが似ているかと言われると、そうかなーって思ってしまうのだけど、オーケンも会長も好きで、さらに高校の頃から斉藤和義も好きなので、何か共通点があるのかもなと思う。

新曲お披露目に立ち会うという、ある意味これは宝物のようにラッキーな瞬間だ。
「WORK×WORK」という任天堂Swichのゲーム主題歌を担当するという情報を耳にしてから、もしかしてと思っていたが、ステージで初披露というありがたい出来事を経験することが出来た。
ゲーム会社からの依頼で真面目な方と様子がおかし方と2曲のデモを作ったが、満場一致で様子がおかしい方に決定したという新曲。ボツになった方だって聴いてみたいところだが、打首さんにオファーをかけてくるわけだから、そちらが選ばれるのはなんとなく分かる気がする。タイアップってそういうことなのかも。

タイトルは言わなくても後ろの映像を観るでしょ、ということで曲に入る。会長がニューギターをおもむろに弾…あれ、おもむろに弾い…あれ。
オーケンさんもやり直してたし、アルペジオ苦手なんだよな、など結局2回やり直して、3回目でようやく曲がスタートしたけれども、実際3回目も結構ギリギリだった気がする。
とはいえ、こういうところがライブの良さだなとほほえましく思ってしまった。どちらかというと速弾き系の人はアルペジオ苦手な人が多いらしい、というのは夫情報。
【はたらきたくない】という、どストレートなタイトルとゲームの映像がコラボしたかわいい映像がスクリーンに大きく映し出されて何ともかわいらしい。
「客がつよい」というのがキラーワードすぎて、会場からも笑い声が上がる。生活密着型ラウドロックバンドは飯風呂寝るときたらやっぱり反対側にある働くことへの意欲低下についても歌わざるを得ないのかもしれない。
わたしは「働く」ということに対して意欲喚起する仕事をしているので、仕事自体が嫌という感情は薄いのだけど、それでも楽しい休日を過ごした翌日は布団の中から出たくないし、できればずっと寝ていたいと思う。
打首さんの新曲『はたらきたくない』は仕事自体のことが嫌だ嫌だと歌っているわけではなく、それでも一生懸命頑張っている人のあるあるを歌うから、だから好感が持てるし、共感度が高いのだと思う。これは会長のアンテナがどういう立て方をされているのかを表しているし、彼は間違いなく仕事が好きな人なのだろうなと嬉しくなってしまう。
働くをイコール我慢にしてしまうのではなく、日々の中に寄り添う大事なものだとした上で、「はたらきたくない」と思う瞬間を切り取っていく歌詞がとても良いと思った。

曲が終わり、ダメ人間の歌だねという言葉から、「ダーメダメダメダメ人間」とまたも筋少の曲を演奏する打首さん。この贅沢さがたまらないではないか。要所要所で筋少エッセンスを入れてくるものだからホント気が抜けない。

【布団の中からでたくない】は冬の曲だけど、夏フェスでもどうでしょうキャラバンでも演っている、最近の定番曲だ。これはやはり武道館をソールドアウトにしたきっかけになった曲だからだと思う。そしてフェスやどうキャラはお客さんがファンだけではなく、また大人だけというわけでもないので、きっとこの曲を演る機会が多かったのではないかと推測している。
もちろん新作が発表されて2番目となったが、それまでは最新曲だったからということもあるだろう。
『はたらきたくない』をオファーしてきた側が、このMVを観て話をもってきたということでテイストが似た曲を立て続けに出すことになったと言っていたが、それもなかなか冒険だなと思った。
求められるものを提供するというのはプロっぽいけれど、どちらかというと『布団…』はそれまでの打首さんと少しテイストが違うタイプの曲ではないかと思っていたので、あーそれOKなんだなと。ただどんな曲をやっても「らしい」と思わせるだけのブレなさと説得力を手に入れているので、それは一つの個性を尖らせたいわゆる「様子のおかしいバンド」の特権だと思うのだ。

あす香さんのドラムが聞き覚えのあるリズムを刻み始めたら、やっぱりここは【New Gingeration】
一度はけて、新生姜ヘッドをかぶって再び現れる。何度見ても不思議な光景で、大好きだ。「岩下の新生姜!」という商品名でしかないそれをコールするのが本当に楽しい。
新生姜ヘッドをかぶった会長が、あす香さんの分を手に持ってステージに戻ってきて、雑に渡す瞬間がいつも何だか可愛いなと思って見てしまう。この曲、Junkoさんがいつもヘドバンしすぎているのだが、この日もヘッドが回って前が全く見えなくなっていた。すかさず直しにくるスタッフぐっじょぶ!ちゃんと音が聴こえるように作られた特注品らしいが、そういう問題ではないトラブルがいつも発生していて面白い。
ハンバーガーに挟んだり、サンドイッチに挟んだり、冷奴に乗せたり。タルタルソースに混ぜるくだりがとてもかわいい。そしてソロが少しメロディアスなところも大好きな曲だ。「新生姜」と小さな声でコールを返すのも楽しくて、お約束がいっぱいあるこの曲は本当に様子がおかしいのにライブ映えするすばらしい曲だと思う。

そして美味しいサイリウムが配られる【デリシャスティック】
前列にいるのは初めてだったので、スタッフの方々が大きなビニール袋を抱えて待機している姿がなかなか面白い。2階席は今回どのように配るのかなと思っていたら、同じように袋を抱えたスタッフの方が2階にも登場したらしいという話を息子から聞いた。
絶対に1本もらえると分かっているのに、心がどうしても焦ってしまうけれど選ぶ間もなく掴んで素早く他の人へと回す。落ち着いて自分の分のうまい棒を見てみると「レモンスカッシュ味」だった。何だこの味は。いったい何味なんだ(レモンスカッシュ味です)
うまい棒は本当に味付けに企業努力が感じられるので、レモン味ではなくちゃんとレモンスカッシュ味なのだろうと思うのだが、あれから数日が経っても食べるのを躊躇してしまっている。ライブが終わってすぐにうまい棒を腹に収めるお菓子好きの息子も警戒して手を付けなかった一品だ。
うまい棒を回している間はビジネスのお話をする、というのがお約束だが、今回もコラボTとタオルについての話があった。
それぞれ大阪、名古屋、東京と対バンツアーの相手がイラストになったデザインは本当にカッコよくて、わたしはこういうの大好きだよ。
DragonAshが龍、キュウソネコカミが鼠、そして筋肉少女帯は蜘蛛。筋肉でも少女でもなく、筋少のロゴが蜘蛛だからということで蜘蛛なのだと思うが、打首さんに至っては猫の歌をよく歌ってるから猫ということで、もはや主催が一番コンセプトを掴みづらい作品に仕上がっているのではないだろうか。
ただ、本当にカッコいいし、何よりバックプリントの獄の文字と共に、対バンのバンドロゴに日付とライブハウスが刻まれているところは素晴らしいまでに大好きな仕様だ。
フェスTっぽいという感想も目にしたが、バンドのツアーTといえばこれでしょ!と言わざるを得ない素敵すぎるデザインで、だからこそ我が家は3人家族だというのに5枚も購入したのだと思う。タオルも横で� ��なく縦デザインで、お札(ふだ)か、幟のようにも見えるこちらもとても良い。
そして次に大きな会場でのライブ告知を、ということでスクリーンに大きく出たのはつい先日発表されたばかりの「サカムケ卒業祭り」。
言わずと知れたマネージャーVJサカムケちゃんの卒業を記念したライブだったが、筋少ファンの人たちにとってはよく分からないだろうということで、会長の説明が入る。
打首獄門同好会はこっちから3人がメンバーです、という今さらながらの紹介に笑ってしまった。たしかにわたしも最初にライブ映像を観た時に、え?何?誰?と思ったのを覚えている。
武道館の「きのこたけのこ戦争」を観た別アカウントのフォロワーさんから、「会長ってギターを持って歌ってる人の事?」と聞かれて、間違えようがあったっけ?と思ったら、VJの2人ときのことたけのこのぬいぐるみを持ったバックドロップシンデレラの2人までいるステージだったものだから、それは確かに!と納得してしまった。
それほどまでにVJの存在が当たり前となっている打首さんのステージで、個性を発揮していたサカムケちゃんの卒業は少しさみしいものがある。
ただ、彼女はこれから自分の音楽活動をやっていくという前向きな理由での卒業であり、だからこそこういう大きな会場で告知をしてくれる会長の優しさを感じました。

筋少のファンの皆さんは、デリシャスティックを振りながら「うまい棒うまい棒!」と歌うのは楽しかったかな。わたしは最初にこれをやった時、本当に楽しくて、なんてバカなんだ!楽しすぎる!と思ったので、楽しんでくれていたならばこんなに嬉しいことはない。
1本10円の駄菓子が今日もフロアを埋め尽くしていた。後ろの映像で「入手困難」や「高画質画像入手困難」となっているうまい棒のパッケージ写真は、大人の力でそろそろ手に入りそうな気はしているが、面白いのでこのままでいい気もしている。

【きのこたけのこ戦争】わたしはきのこ派なのだが、下手に陣取ってしまうことが多く、ここはたけのこゾーンである。しかしながら今日はおそらくWODはないだろうと踏んでいた。さすがに文化の違いが顕著に表れるし、慣れていない人が巻き込まれたら怪我をしてしまう危険があるからだ。危険ゾーンから逃げれば、という発想がすでにWODを知っているからこそのものであり、そういう文化がないライブで育っているとまず何が始まったのかがよく分からないし、そうこうしているうちに逃げ遅れる。初めてそんな場に巻き込まれてしまえば、何がどうしてどこに行けば安全なのかがピンとこないものなのである。
きのこきのこきのこキノコパワーと歌ったそうなのだが、わたしにはその記憶が全くないのだが…。

気が付けばまたこの時間となってしまった。【日本の米は世界一】
なんともう終わりなのか。楽しい時間というものは本当にあっという間で、あんなに盛りだくさんだったはずなのに体感時間としては非常に短い。
ご唱和くださいと会長が言って、今日という日を最高に楽しむための準備は万全すぎるほどに整った状態でフロアが叫ぶ。「世界一!」と。
一番カッコいい。一番大好き。途中で米米クラブの「KOME KOME WAR」を全く知らないわたしが、今日のライブで一番戸惑ったのはこの瞬間だったと思う。打首も筋少も聴きこんでいるわたしは今日のネタはどれも絶対に拾えると自負していたが、米米クラブは通っていなかったので、「なんだこれは?」と頭の上にはてなマークを盛大に飛ばしてしまった。

これを機に初めて「KOME KOME WAR」を聴くなどしてみたら、「米をー米米を」のところはそのまんまなんだね。先日少し年齢が上の友人たちとカラオケに行った際に息子と歌ったら、その部分で異常に盛り上がってみんながコールしてくれたのはそういうことだったのか、と今かよと盛大に自分へツッコみたいところだ。
そのまま筋少の『日本の米』へとつながっていく。
「知らないのか納豆にネギを刻むとうまいんだ!」先ほど本家と一緒にやったコールをまた再び打首さんでできるのだから、KOME KOME WARの戸惑いもすぐに忘れて楽しんでしまっていた。
スクリーンにはネギを刻む映像が使われており、細かい!と思わずにいられない。

そうして本編ステージが終わり、ここからはアンコールとなる。打首さんのアンコールは「最初から」だ。本当に最初から観たい。愛にあふれたコールが会場を包む。お代わりを強請っているのだ、この楽しすぎる時間をもう一度とそう言っている。
打首さんのライブでこのコールが出来る瞬間は本当に嬉しい。ワンマンや主催のツアーじゃないとアンコールがないので、フェスや他のバンドのツアーにお呼ばれする事も多く、ライブ回数自体は多いけれど、出来ればこのコールが出来るライブに参加したいなと思ってしまう。

打首さんが登場し、「筋少から」という掛け声をきっかけに「筋少から、筋少から」というコールが始まった。なにこれ楽しい。
「ええ、筋少から!?」と言ってやってくれるかどうか聞いてくる、と下手袖に一度姿を消した会長が「ダメだってー」と戻ってきた茶番が可愛いかった。

翌日の筋少は同じお台場で夏の魔物というフェスステージがあるしという言葉よりも、何よりまたマーシャルタワーをここにセッティングしないとというような事を会長が言った瞬間に、そうかそうだわと、コラボ…はないのかと少し残念に思った。
筋少の演奏陣と打首さんのコラボ曲を楽しみにしていたから、そうかーないのかーとガッカリしてしまった。今冷静によく考えれば、まあちょっと難しいなと思うけれど一抹の夢を抱いていたんだ。

アンコールの曲はMCの流れから推測出来た。この曲を演るということは本当にこれで最後なんだなと少しだけ寂しい気分になったわたしを、「早計だよ!!!」と肩を掴んで揺さぶってやりたい。

この日の【フローネル】は伝説じゃないですか?
風呂入ってソッコー寝る計画!から始まったいつものアンコール曲、フローネル。わたしはすっかり忘れていた。この曲のBメロは「あ、Bメロですよーまだ終わりじゃないですよー」と会長が注釈を入れていた頃の映像がyoutubeに残っているのだが、そうだった、この曲は長々とダラダラMCをすることが少ない会長の、ある意味でMCタイムのようなものだ。

幸せって…と会長が言ったその時、出てきた!オーケンが!
トコトコとステージの上に現れるオーケン。特攻服のまま、コラボTを着るでもなく、自分のステージ衣装のまま出てくるところもまた時空の歪みが発生しているようで、とても良い。
ついにステージの上でオーケンと会長が並んで存在しているという、わたしが夢にまで見た光景が目の前で繰り広げられている。
しゃべっていたことはもうほとんど覚えていないので、どこで何を話していたのかはバラバラになってしまうけれど、まずは似てる似てないのトークから。

「似てますかね」と言った会長に「あのねー楽屋でステージを観ててね、メンバーが『あ、今の90年代の大槻に似てる』とか『あの瞬間が似てた』とか言ってたの」と、そんな話をしながらみんなで観てたのかと思うと、筋少可愛すぎる。
大澤くんは俺と髪質が似てる、って確かに今のオーケンは短髪のグレーヘアだけれども、若かりし頃は髪が長くてパーマヘアだったから、会長のくるくるヘアと近しいものはあるかもしれない。
「パーマかけてるの?」「天然なんですけど、少しだけパーマも…」という会話を「普通の会話だ」ってオーケンがツッコんだとこ面白すぎた。
会長とオーケンの間に斉藤和義がいて、最終的にガダルカナルタカになるとかもう誰が得する話なんだ。

少し前の筋少ライブで新しいアルバム告知をするときに、紙を渡されて読み上げるという何ともアナログな手法を用いていることに不満を持っていたのはニコ生で観たのだけど、僕ねえスクリーンでライブ告知がやりたいって30年前から言ってるの、とオーケン
今日はちょっと大きい会場なのでレンタルしたけれど、プロジェクターはヤフオクで10万くらいで売っているという情報を伝える会長。

声が似てるのだろうかと、一緒にしゃべってみようかって2人が一緒にしゃべってからの「混ぜるなー一緒にしゃべるなー」、混ぜるな危険という曲の1節を歌って。これはあす香さんとJunkoさんがグッジョブすぎるだろう。どんなきっかけで入るって決めてたのか分からないけど、あんなグダグダなしゃべりから演奏に入れるんだから巧いなあ、さすがライブバンドだ、と思わざるを得ない。

後ろのフテネコをちゃんといじって、曲に戻らなければならないのだけど、「あのねえ、僕もね…」とまたオーケンが話し出すたびに、会長がそれをちゃんと受けて、だからずっと終わる様相が全然ないまま本当にただしゃべってる時間で最高に面白かった。
ライブであんなに笑ったのって初めてかもしれない。

ちゃんと新曲のゲームの話にふれてくれたのだけど、ゲームの制作会社と任天堂とはまた違う会社だからと、大人の気遣いをしたオーケンに、ゲームソフトが売れればハードも売れるから問題ないと会長。そのハードとは任天堂Swichなわけだけども、「64(ろくよん)」ってオーケンが言ったのがわたしの中で最大のハイライト。おじいちゃん…もう大好き。

ようやく曲に戻ってサビを一緒に歌っていたが、これは…うろ覚えにもほどがあるぞ!という感じが漂っていて、その状態でステージに出てくるのさすがだなと思った。
爪痕を残そうとしない、というオーケンの良さがものすごく出てるなと。

新生姜ヘッドの話をしていて、かぶり物はひとりだけちょっと難しい人がいるからなーってそれは橘高さんのことですね、って思ったけれど、最終的には「意外とかぶるの」って言ってて、たしかに!って思った。橘高さんは意外とかぶってくれると思う。

朝は憂鬱って話もしていたな。オーケンは朝は憂鬱なことしか考えたことが無いと。
会長は、お兄さんが寝起きが悪くて、大澤を起こしに行くという罰ゲームがあったと言っていた。会長は朝が弱いイメージがあんまりなくて、実際に朝からカツカレー食べれるって言ってたけれど、打首さんのライブってネタは盛りだくさんだけど、こういう普通の話をMCとしてすることがあんまりないので、なんだか新鮮。グダグダのMCが大好物のわたしとしては、ありがとうありがとうと感謝しかない。

オーケンは一度引っ込んで、そしてまた2番のBメロで出てきた。2回目。
フテネコの映像をいじりながら、でもすぐに脱線してオーケンが「あのね、僕もね」とか「昔ね…」とか話を膨らませていくもんだから、またも収拾がつかない。それでもしっかりとついていく会長はさすが、アワアワしない大澤くんだと思ったよ。その安定感がすばらしいと思う。

二度寝のところでJunkoさん「もう二度寝とか今日はどうでもいい」って言ってて、あす香さんやJunkoさんもフロントマン2人のトークを爆笑しながら聞いている姿がとても微笑ましくてかわいかった。
もうどこを切っても楽しいしかない。そんなライブ最高じゃないか。

終わってからこのフローネルは27分という長さで、過去最長だったと会長がツイートしていたけれど、曲ではなくて、いや曲なんだけど、こういう形のコラボになるのも、らしくていいなと思う。
日本の米は世界一を一緒に歌ってくれたって良かったけど、でもフローネルのBメロでトークを一緒にやるってコラボの形は、なんていうかもうお腹いっぱいになって今日という日を終える、最高の仕掛けだったなと思った。

正直、打首さんの曲の間に筋少のフレーズがたくさん入ってきたのが、少し多すぎたんじゃないかなってのも感じていて、楽しくて嬉しかったけれど、もう少しだけ抑えても大丈夫だったのではないかな。会長はいつもあれもこれもと一生懸命考えて企画に盛り込んでいく足し算スタイルなんだと思う。それはエンターテイナーとしてお客さんを喜ばせたいという強い気持ちが根底にあるからで、本当に素晴らしい心構えで大好きなんだけど、打首さんが普通に曲を演るだけで、十分すぎるほどに楽しめる気概の人たちが集まっているわけだからもう少しシンプルなところもあってよかったと思う。

オーケンのブログに「終わってみれば、当然のことながら、どこにも無い独自の世界観を持つ2つのバンドであったなと。」という言葉がつづられていて。
わたしもそれは本当にそうだと思っていて、違うものが混ざるからこそ生まれるものがあって、だから打首さんのステージも、もっとシンプルであったとしてもきっとさらに良さが際立ったのではないかと個人的には思っている。

もちろん、盛りだくさんで仕掛けを詰め込むところこそが、打首さんのステージの良さだったりもするから、一概には言えないけれど、対バンバンド2つのどちらも、それぞれ全く別物として大好きなわたしとしては、そんな感想を持ったりした。

でもこの対バンライブがわたしにとって最高だったというのはもう紛れもない事実であって、発表された5月から約4か月。本当に楽しみにして、楽しみで楽しみで、たまらなかった。
そして実際に当日を迎えたら、バカみたいに楽しくて、どっちのステージも最高で、こんなスペシャルな日があっていいのかってずっと思っていた。寿命が縮むくらい緊張してたけれど、終わってみたら何だか長生きできそうな気がしてくるくらいだ。ライブを観て泣くことは少ないわたしだけれど、笑いすぎて涙がちょちょぎれるというまさかの展開に驚きを隠しきれない。

最後に記念写真を、と呼びこまれた筋少のメンバー。橘高さんは衣装替えをしていてさすがである。おいちゃんはコラボTシャツを着ていた。うっちーは普通のお洋服で、オーケンは特攻服。このバラバラなところがいいんだ。
いつもは「せせりコール」で笑顔を収めるところだが、今回は新曲から「はたらきたくないねー」でみんなの笑顔を引き出して写真を撮った。
わたしは下手の端だったので、真ん中くらいしか写らないのかなーと思っていたが、やっぱりプロのカメラマンさんのカメラはすごい。しっかり会場全体が写っていて、こんなに綺麗に写るもんなんだなと妙に感心してしまった。当たり前なんだけど。

会長のTwitterにアップされた写真を何度見ても、やっぱりわたしにとっては特別感が特盛MAXだし、焼肉とハンバーグ定食白米大盛りだ。どちらも余すところなく食して、お腹いっぱいで本当に幸せだった。

長いドリンクの列を経て、外に出ると獄を背負った人たちが今日の興奮を語り合っている。すっかり暗くなったお台場は、ガンダムも色を変えて、時間の経過を分かりやすいくらいに伝えてくる。

息子と合流し、どうだった?と聞くと、楽しかったと。ご一緒させてもらったお友達は筋少の曲をそこまで知らなかったのだけど、うちの息子がコール&レスポンスが完ぺきだったと褒めてくださった。筋少のステージが終わって「どうだった?筋少?」と一体どの立場で何者なんだという問いをキラキラとした顔で繰り出したらしいという話を聞いて、子どもというのは親の影響を多大に受けて成長するものなのだなと改めて思ったりもした。

「あのねママ、あのね、亞一人くんがいた!」と興奮気味に言っていたが、息子よそれは残念ながら幻であったようだ。

大好き×大好き=∞ 混ぜるな危険。