箱日記

ライブに行った感想を細々とつづっています。

2018年10月16日 アシュラシンドローム 福岡Queblick

ステージから観る景色をわたしは映像でしか観る機会がないのだろう。ならば映像に残らないライブでは想像する事しか出来ない。

 

仕事終わりの平日にライブに行く。
まずもって『ライブ』といえば、イコール遠征という図式を描かざるを得ないのだから、田舎暮らしのわたしにとって平日ライブは憧れと言っていい。

今日は3バンド。対バンの数と持ち時間の長さは反比例する。
主催のバンドがトリであることは間違いないとして、お目当てのアシュラは2番目だろう。なぜって明確な理由はないのだけれど、なんとなくそんな予想をしていたわたしは、オープンスタートに間に合わなくても大丈夫だろうとタカをくくっていた。
しかしお昼休み、Twitterのタイムラインに流れてきたツイートを見て、思わず立ち止まり「マジか!」と思った。そして思っただけではなく口にも出していたし、ツイートもした。

 


フルコンプで驚いたわたしはとにかく今日の予定を立て直す。普通電車に乗って行っても充分間に合うと思っていたが、これはやはり新幹線という文明の利器を使わねばならない。この距離で新幹線を…と思わないわけではないが、背に腹は代えられない。何度も観に行くうちの一つではないのだ。待って待ってようやく観られるライブなのだから、ここは頑張りどころというやつだ。

だとしても超特急、急がなければ間に合わない。残業を「するな」と言われているありがたい環境で働いているけれど、それにしたって終業時間と同時にダッシュしなければならないのは、思ったより大変であった。
自宅へ一度戻り、ライブTシャツに袖を通す。夜中に書いたラブレターと息子の独特な表現が面白すぎる手紙を持って、チケット、タオル、ラババン…など前日夜に必要なものを詰めたリュックを背負い、息子を連れて家を出る。

博多駅で地下鉄に乗り換えて数駅。福岡市は本当にコンパクトシティだと思う。福岡空港博多駅が地下鉄でたった2駅というのは、遠くから来る人にとっては本当に便利だ。そして福岡とイコールに結ばれているであろう『博多』からさらに2駅行くと、一番の繁華街である『天神』にたどり着く。
博多はビジネス街というイメージが強く、遊びに行くなら天神だ。一昔前ならばツアーバンドが来るライブハウスといえば親不孝通りにあるDRUM系列が多かったように記憶している。DRUM Logosを筆頭として大きさの違う3つの箱が集まっているその場所は天神駅から徒歩の距離なのである。

しかしながらどうやら福岡の音楽シーンも色々と進化を続けているようで、今日の箱は天神からさらに1駅行った『赤坂』から徒歩1分という立地であった。どうやらオープンからちょうど5周年という新しいライブハウスで、わたしが子育てに追われながら転勤で引っ越しを繰り返している間にも、こうして街は様変わりしていく。

地下鉄の出口を間違えないよう進んで、地上にやってくる。スマホを開いてアプリを起ち上げると、ナビを使うまでもない距離が表示されていた。真っ直ぐそのまま行け、と近すぎればまた逆に分からなくなるGoogleマップと現実の景色を見比べるため顔を上げると、もはやそこに看板が見えたのであった。
数日前に自宅に届いたアシュラパーカーと同じものを着て並んでいる人の姿が目に入る。列があるということは今がまさにオープンではないか。時計を見ると18時40分。スタートに間に合えば何とかなると思っていたが、これはなかなかの好タイムだったのではないだろうか。

チケットを取り出して列に並ぶ。他のバンドグッズを身にまとった人たちの背中の文字を眺めながら、階段で地下へと進んでいく。受付でチケットを手渡すと「どのバンドを観に来ましたか?」といつもの質問を受ける。
息子が「アシュラシンドロームです」と答えたので、わたしは無言でいると「二人ともですか?」と聞かれて、そうか推しが違う可能性だってあるよな、とコミュニケーションの難しさを感じたりもした。
「あのね、アシュラのね…」と息子がなにやら受付のお兄さんに話しかけようとしていたので、何を言い出すか読めない発言は怖いということでそこは制しておいた。一体何を伝えようとしていたのだろうかは分からないが、彼はすぐに「あいとくんがね…」と言い始めるので、ここは止めておいて正解だったと思う。

入ってすぐのところに物販スペースが展開されていて、カメラマンのえみだむ氏が息子に「久し振りだね」と言ってくれた。先月の物販でお会いした時のことを覚えていてくださったのだと思うが、そんな風に言ってもらえて息子も喜んでおりました。
今日のもう一つの目的である、8月のワンマンライブのDVDを今すぐにでも買いたい欲がむくむくと湧きあがったが、荷物になってしまうしライブを観てから他の物も吟味しつつ買うのが正解だろうと、あとから買いますとお伝えする。
ドリンクチケットをポケットに忍ばせて、ドリンクカウンターの前を通りすぎ、フロアへと足を踏み入れた。そこそこ人は集まっているが、中はまだ余裕がある。
上手と下手のどちらにしようか迷ったが、進みやすい場所が上手だったので、上手の壁際からステージへと視線を向ける。柵があるライブハウスで良かったと思っていたら、フォロワーさんとお会いすることが出来て、2列目のセンター付近にその身を滑り込ませた。最前のドセンにいた方のご厚意で、息子はその横に呼び寄せてもらい非常に見えやすいポジションをゲットしていた。
よれないようにか、横軸が走っているタイプの柵だったので、そこに乗り上がることで成人女性と同じくらいの高さとなった息子は、ステージの上にすでにセッティングされている楽器を指さして「これってアシュラの人のだよね」と嬉しそうだ。

ダイブやモッシュが激しいバンドならばさすがに息子を最前につれていくことはできないが、これまで行ったものを思い起こすに、この福岡という場所柄そこまでダイバーがいるということはないだろう、という予測のもと開演を待っていたら、おそらく絶叫ファンの男性だと思われる方が、「アシュラの時だけ代わりましょうか」とわたしに前列を譲ってくださった。
おおこれは憧れの!最前交渉というやつなのでは!!と思いながら、一生懸命お礼を言った。本当にありがとうございますありがとうございます。

オープンギリギリにライブハウスに到着し、トッパツが出番だとあっという間にスタートの時間が来るということを知った。だいたい15時ごろから用事もないのにライブハウス前をウロウロとするのを至高とするわたしにとって、なんだか早送りで時間が過ぎているような感覚に陥った。
BGMの音が絞られて、フロアの照明が暗くなっていく。時計を見る。19時ちょうど。
最近の若い人は腕時計というものを付ける習慣がないと先日テレビで言っていたが、ライブの時はスマホも確かに握りしめているけれどやっぱり腕時計が一番時間を確認しやすいように思う。取り出しやすく仕舞う必要が無いからだ。そしてもう一つ、わたしはデジタル時計よりもアナログ時計の方が、あとどのくらい待てばいいのかの感覚がつかめる気がしている。

いつものSEが流れる。パルプフィクション。下手側の奥からメンバーが登場してくる。今日は息子用のヘッドフォンを忘れてきてしまったので、1円玉で耳をふさいでおくことで何とか対応していたが、個人的にアシュラの曲は大丈夫なのではないかと思うのだ。
もちろん子どもの耳は大人に比べて成長途中なので気を付けなければならないが、高音域の尖った音が突然鳴り響くタイプの曲ではないので、ハウリングさえなければ1円玉で今日は何とかやり過ごしてもらいたいところだと思った。

コール&レスポンスから始まるこの展開は、きっと1曲目はあの曲だ。
いくつかライブに行ったことを思い出して思い浮かべたその曲は【男が女を唄うとき】。今回のライブでアシュラは4回目なのだけど、いつも1曲目皆勤賞のこの曲。


「ハーイハーイハイハイハイ」とこちらも声を出してから始まるのが定番だ。一度盛り上げて、静かな展開へと進んでから、また弾ける。今回は前にいたので後ろの方の人たちがどんな風に思っていたのかが確認できなかったけれど、緩急のある展開は知らない人にとって、これから何が始まるんだろうと思わせるのではないだろうか。
ギターソロの後、「愛しい人よ」の次の「さようなら」は、フロアのパートだと思っているのだけど、そこはその土地によって変わってくるのは仕方がない。

フロアを煽る時、「博多―――!」と言われることに違和感を覚えてしまうので、ずっと「福岡」と言ってくれるのが嬉しかった。博多は新幹線の駅付近の地名であり、「福岡」が正解だと思うのだ。すっごく細かいことで本当にどうでもいいと思うのだけど。

次の曲は【絶対彼氏以上】。

まだ購入していないワンマンDVDの中から、1曲だけyoutubeに公開されたこの曲をさんざん聴いていたので、今日やってくれて嬉しかった。【男が女を唄うとき】からのこの流れは、ワンマンの時と同じで、アシュラのライブの中では本当に定番なのだと思う。
こうして感想を書くのも4回目なのだが、ほぼ毎回この流れを書いているので、安定の曲順というものなのかもしれない。
いつも亞一人くんばかりを見てしまうので、他のメンバーだってしっかり観たい。と、楽器隊に視線を移しながらステージを観る。
ちょうど前日にTwitterでとあるバンドの感想を書いたブログを読んだとき、『歌モノのバンドあるいは盛り上がってなんぼのバンドにおいて、間奏というのは観客にとってはブレイク的な意味合いというか、ちょっと休憩の時間、みたいになっていることも多い。』とか『ボーカルレスのタイミングは煽ることを優先して、楽器演奏の間に観客のボルテージを下がらないように努めるバンドも多い。』といった、いささか同意しかねる文面に、そんなことないだろう、楽器隊のソロなんてご褒美以外の何物でもないじゃないかと思うのだ。

もちろんフロントマンというだけあって、ボーカルはバンドのステージをマネジメントする役割を担っていると思う。MCも含めて、特にアウェイでの立ち回りでその力量みたいなものを感じて「ああ、ライブバンドってやっぱりすごい!」と感激するタイプなのだけど、それはそれとて歌も演奏も含めて全部を楽しみたいと思っている。

だから実のところ手を上げたりクラップする(クラップする、であってるかな? 「Clap Your Hands」って亞一人くんが言うから…)場面が若干多いと、今聴きたいのに!と思ってしまう時もあったりするのだ。一緒に楽しむという点において「オイオイ」の煽りも、ヘドバンの煽りも余すところなく楽しむ気概でいるけれど、チョーキング一発で思わず耳も目も釘づけになってしまうような演奏だって期待しているというのが本音だ。
音楽理論も何も知らない素人だけど、リピート機能を使って何回も何回も同じ曲をずーっと聴き続けてしまうので、音がばらついたりリズムがモタったり走ったり、そういうところは説明する口を持たなくても感じることはあるなーと思っている。

だからといって音源と同じが良いではなくて、ライブならではの気合いや目の前で繰り広げられる演奏というのは、やっぱり宝物のような瞬間だなと思うのだ。
亞一人くんの「好きに踊れー!」とナガさんの「手を上げろー!」がめっちゃ好き。

ここでMCが入ったんだったと思うのだけど、わたしは本当に記憶力が著しく低いので、もしかすると違ったかもしれない。
今ちょうどやってる野球の話題。前日が広島で、カープの話題から、やっぱり福岡といえばソフトバンク。そして日ハム。わたしは野球のことはさっぱり分からないのだけど、分からないのにソフトバンクの「いざゆけ若鷹軍団」が歌えてしまうくらいに、やはり地元球団というのは地域密着なのだなとそんなことを思う。
地方ライブのMCはその地方に触れていくのが定番だけど、やっぱり遠くから来てくれた人たちがその地域のことを話題にしてくれるってだけで嬉しいものだ。

3曲目は【Whiskey Coke Brandy Strike!!】。

この曲のイントロで亞一人くんがジャンプしてて、「あ、MVと一緒だ!」と思った。わたしは演奏映像メインのこのMVはとても好きだ。ドラマ風だったり、色々凝った映像のMVも好きだけれどこういうオーソドックスなMVは大好きだ。
オリジナルダンス(?)を披露してくれることが多いのだけど、わたしは亞一人くんのステージングはとても好き。背が高いので縦の動きが大きくて、ステージ映えするよなーといつも思っている。今までボーカルが背の高いバンドはバランスがあまりよくないと思っていたけれど、そんなことないなって。え?贔屓? してるよ?
願わくば上手側にももう少し向いてほしいかな。マイクを右手で持っていることが多い関係からか、歌っているときはほとんど下手側に身体が向いているから。

この曲はナオキさんのベースがカッコいい。最近は打首さんのおかげで5弦ベースや7弦ギターは馴染み深くなったと思うけれど、さすがに6弦ベースとなると相変わらずネックの太さが見慣れない。腕の筋肉はすごいけれど思ったより小柄なので、ものすごく楽器が大きく感じるけれど、指先を見てるとても繊細なんだ。

ワンマンライブ後に廃盤になってしまっていたCDをレンタルしたら、この曲も収録されていて古いアレンジも聴いたけれど、やっぱり現メンバーで再録したバージョンの方がカッコいい。同じ曲のアレンジ違いを一つのプレイリストに入れて、交互に聴くなどの楽しみ方も乙なものだと思います。

ナオキさんがベースソロを弾いてる時に、そちらを目立たせるように視線を促していくのが良かったと思う。やっぱり楽器隊の出番があるライブが好きだ。わたしは古の人なので「ベース、ナオキ!」的なのが入るともっと大好物です。名乗りを入れてほしい。
最近は検索すればすぐに情報が出てくるし、曲もyoutubeで聴けるのであんまりなくなってしまったけど、昔はアマチュアバンドでもメンバー紹介ってのをよくやっていた。白黒コピーのアンケート文化と一緒に廃れてしまったのかもしれないけれど、ソロの名乗りがあるライブ、好きなんだよな…。

そして【山の男は夢を見た】。

頭の上に山を作って、フロアが盛り上がるこの曲。待ってましたと頭の上に山を作る息子が可愛かった。こういうのがライブの楽しみだよなと、その姿を見ながら思う。
この曲は本当に楽しい。サビで左右に手を振るのもやっぱり盛り上がるし、こういう分かりやすく楽しめる曲が1曲あると、ライブって楽しいよ。右から始めるか左から始めるかを悩むところなのだけど、後ろから見た時にバラついているのもまたいい。
個人的にわたしはステージ上のボーカルの動きに合わせるの派なのだけど、そんなことは関係なく思い思いに振るのがいいのだ。

次の曲は【D×S×T×M】。この曲本当にカッコいいんだ。盛り上がるのかと言われれば、ブチ上がるみたいな爆発力とは少し違うのだけど、アシュラの曲はこういうひたすらにカッコいい曲があるところが本当に好き。わたしは『My Ocean World』もすごく好きなのだけど、同じような位置づけでこの曲が好きなんだ。
滑舌が良くて聞き取りやすい亞一人くんの歌が好きで「薔薇の香り赤い希望確かに触れて和らいで今を生きろ抱きしめてよ息が続かない」ここを一気に歌うところが本当に好き。一息で歌う最後の歌詞が「息が続かない」というところが切実な想いを体現しているようでとてもいい。
ジャンプするタイミングがあるのに、どうしても我慢できなくて曲始まりからずっとジャンプしてしまう。そしてわたしとしては、最後は絶対八の字ヘドバンが譲れないのだけど、後から公式でアップされたその日のライブ映像には、客席で一人頭を振っている自分の姿を発見してしまって、お、おう…ってなったけれど、でもどうしても譲れないし、異論は認めない。

このタイミングだったかは定かではないけれど、ワンマンライブのDVDを持ってきました。というMCをナガさんが。
このDVDはお金を払うと買えるんです。と直接的な宣伝をしていたのだけど、亞一人くんがそういう言い方はどうかと思うみたいな流れから、なんかちょっとだけ良い事を言って得意げだったのを覚えているのに、なんて言ったのか覚えていなくて、誰か覚えている人がいたらこっそり教えてください。
たしか、ライブはその場で1回きりで感じられるものだけど、DVDなら何回も観られるみたいなことを言っていたような…あれ、それはわたしがいつもTwitterでつぶやいてることだっけ。なんか混ざってよく分からない。ライブ中は記憶が曖昧で、そんなわたしとしても映像化されたものは何度も観られるから最高だと思っています。詳細求む!

でも本当にライブは生もので、それはこの日に購入したDVDを家で観た時にも思ったことだけど、わたしが観た景色とDVDに収録されているものは、同じなのにやっぱり少し違っていた。
切り取り方が違うというのももちろんあるけれど、ステージの光が、熱が、音と一緒にこちらに押し寄せてくるあの感覚は、映像にはどうしたってすべてを残すことはできないのだろうと思う。
それでも誰もが個々それぞれにいろんな事情を抱えていて、すべてのライブに行くことはできないから、やっぱり機会があるのなら映像化して多くの人に届けてほしいという気持ちは変わらない。
そしてワンマンDVDの宣伝ツイートでアップされていたこの舞台袖の映像が本当に好き。この気持ちが入っていく瞬間の表情が。静かであまり動きはないけれどゾクゾクするほどいい顔してると思いませんか?

 

そして【TM NEET WORK】。

嬉しい。この曲聴きたかったんだ。レア曲ってわけではないけれど、地方の短い持ち時間だと聴けないこの曲。折りたたみヘドバンが楽しいこの曲はベースのスラップがものすごくカッコいい。まだアシュラのライブが未見なお友達が、この曲のMVを観てライブに行ってみたいって言っているのだけど、そうなると持ち時間が40分は必要なのかな、などと思ったりもした。
わたしの中では【絶対彼氏以上】と同じ箱に入っているのだけど、あちらは煽りが曲の中に組み込まれているから盛り上げやすいんだと思う。なので短い時間だとセットリストからもれてしまうのかもしれないけれど、またどこかで聴けるといいな。ワンマンはもちろんやってくれると思うけれど、地方でワンマンライブとなるとまだ難しいかなと思うので(やっていただけるなら嬉しいけれど…)短い持ち時間の時でもチャンスを見つけて聴きたい曲だと思う。
実は折りたたみヘドバンはあまり得意じゃなくて、一回後ろに行くタイプのⅤ系のものなのか、それとも前から行くバージョンなのかを迷って、後ろの方には迷惑をかけてしまったかもしれないなという反省点も残しつつ、次はリベンジしたい。亞一人くんの折りたたみは近くで見ると、迫力が、すごいのだよね。基本ステージの上で歌っている時は目が殺す目になってるから。そこが好きなんだけど。

【月はメランコリックに揺れ】


先月の小倉では聴けなかったメランコリック。「あーいぇー」が出来なかったフラストレーション。今回は満を持してという感じで、恐らく前回も来たよという福岡のファンの方々も同じ気持ちだったのかもしれない。
3マンのフロアということで、対バンを目当てに来たであろう人たちにも楽しんでもらうためには、説明が必要。確かにそうなんだ。だから「あーいぇー」の説明をとっても丁寧に始めた亞一人くんは全く悪くない。
いつもTwitterで「あーいぇー」しましょうと、予習しておくようにと、MVのリンクが貼ってあるのだけど、実は「あーいぇー」だけではなくて、そのままワンフレーズどころか繰り返し歌うというのがワンマンなんかでは定番なものだから、こちらはもうそのつもりで歌い続けてしまうよね。
だって、待っていたんだよ!九州勢は!福岡でやりたかったんだ。
「あーいぇー照らしてよ、月はメランコリックに揺れー」と歌うところでしょ、と歌っているアシュラファン。一方の亞一人くんは初めてのお客さんに「あーいぇー」だけでも言ってもらいたいと思って準備してきていたのだと思われる。たしかに初めての人たちは歌えない。
しかもこの似てるのに少し違う歌詞っていうのは覚えづらい。
「どうか君よ、愛してくれよ素直なあの日々を」と「どうか君よ、光の果てに消えてしまわぬよう」の二つはどっちがどっちだっけ、今はどっちだ、と迷ってしまうしね。
「ちょっと待ってくれ、嬉しいけど待って」って一回止める事案が発生した。わたしはこういうライブでのちょっとしたハプニングが大好きだよ。愛があふれてて。
仕切り直して、みんなで「あーいぇー」を一緒に歌えて本当に満足でした。

ラストは【Darling Darling】。この曲はライブの最後の定番なのだけど、やっぱり持ち時間によっては聴けないこともある曲。そして亞一人くんが柵に足をかけて乗り上げて、客席からはその亞一人くんにみんなが群がっていく、いわゆるモッシュが起きる曲。また野球になぞらえて札幌出身の亞一人くんが俺一人対ここ全員でかかってこいよと。
わたしこのフロアから手を伸ばして群がる姿って、宗教画みたいだなってぼんやりと思っている。だって何の意味があるのかって言われれば特に意味はないじゃない。でも光のある方へ何かを求めて手を伸ばしている姿が、希望の描かれた壁画みたいに見えるんだ。

最前にいたのだけど、この時ばかりは息子の後ろに行って、一応簡単な盾となりつつわたしもぐぐぐっと近づいて手を伸ばす。後から「ママがすごい押してくるからさー」と文句を言われたのだけど、もう子どもが最前にいる事に対するリスクはわたしが負うって思っているから、むしろ潰すなら自らの手でと思いながら参加していました。そしてこのくらいの圧はめちゃくちゃに楽しい。
この時ばかりは最前じゃなくて3列目くらいにいたいなと思う。演者が乗り出してくるので、むしろステージとの距離がマイナスになる瞬間だなと。
この曲は音源で聴いているときは普通に良い曲なんだけど、ライブでやると本当に盛り上がる不思議な曲だと思う。

最後じゃないから、今日はまだ始まったばっかりだからと次の2バンドに繋いだところで、アシュラのステージが終わった。

ステージからはけていくときに、フロアからメンバーに声がかかる。それを羨ましく思ったのか、息子が「あいとくん!!」と声をかけたら、振り向いて目線を合わせてくれたのだそうだ。息子はそれがひどく嬉しかったようで、終わってからドリンクを交換してからもずっと「あいとくんがこっちを見てくれた!!」と興奮気味に言っていた。うんうん、うれしいよね、ファンサービスだよね。
普段ずっと子どもの声を聞いているからあまり意識してなかったけど、大人の声と子どもの声って声質が違うから、もしも子どもの声だと気が付いて振り向いてくれたのだとしたらとてもうれしいし優しいなと思いました。

終演後、握りしめていた手紙をわたしも息子も渡すことが出来て、物販では本日の目的であるワンマンライブのDVDを無事購入することが出来た。翌日の夜、そのDVDを再生しながら、今日のライブと8月のワンマンライブとの記憶が混ざり、色んなものを上書きしていく。
平成最後の日々を、わたしはどこよりもたくさんライブハウスに通っている。手帳に書いた仕事のスケジュールの間にある予定を眺めながら、指折り数えてその日を待つ。

やっぱりわたしは音楽が好きなのかどうかがよく分からない。ただ楽しみがある人生は色鮮やかだ。


次は3月30日、札幌。