箱日記

ライブに行った感想を細々とつづっています。

2019年3月17日 アシュラシンドローム TENJIN ONTQ Kieth Flack

赤い実をつける桜は、桜前線の開花予測よりも少しだけ早い。
今年は暖冬で、あの春のウキウキとした空気が冬の切れ端に混ざり合ってしまったように感じる。

12月の終わりに福岡であったフェスに参戦して以降、ライブに行くこともないまま2ヶ月半が経過していた。
2018年から2019年となり、だからといって何ら代わり映えするでもなく、わたしは日々仕事に追われる毎日。
Twitterを覗けば、全国至るところでライブは開催されていて、そのお知らせを演者側とお客側と双方眺めながら押す『いいね』ボタンほど、本来の意味に近いことはないのではないかと思う。

 

そんなわたしにもようやく、サーキットフェスというチャンスがやってきた。
福岡にはライブハウスがたくさんあるのだな、というのがまず第一印象だ。
サーキットフェスは、1枚のチケットでたくさんのライブハウスを回るのだから、近場になければ話にならない。
親不孝通りの近辺に、ライブハウスがいくつかあるのは知っていたが、マップを見たら思ったよりもたくさんある。

イベントとして楽しむ意味合いの他に、その地域のライブシーンを盛り上げるという意味もあるのだろう。
福岡のお客さんは重たい、なんてことを数十年前に誰かしらから聞いたような気がするが、もともと音楽が根付いている街でもある。

久々すぎて、何を用意すればいいのかすっかり頭から抜けていて、忘れ物が多かった。
取りあえず息子に赤いストレッチパンツを履かせて、ふと足首が見えてることに気がつく。
息子がこれを履くのはアシュラのライブの時だけなのだけど、それだと最後が10月の終わりなので、もう約5ヶ月も前のことだ。(自分でも書いててビックリした!)
わたしは5ヶ月経っても太ることくらいしかできないが、息子は背を伸ばすことができるのである。
このライブを機に、普段着へ降格させることをわたしは密かに決めた。サイズアウトする前に。

財布とスマホとチケット。とにかくこの3つをなんとかカバンに入れて、息子のイヤマフは忘れ、お手紙を書き忘れ、ラババンを腕に装着してバスと電車で約1時間ほどでフェス本部がある長浜公園に到着した。
チケットをリストバンドへと交換する。最近わたしが遭遇することが多かった紙製ではなく、少しだけ強度があるビニール製のものだった。
予算の関係かもしれないが、こちらの方がありがたい。

タイムテーブルを確認するとアシュラの出番は2バンドめだ。
わたしは心配性なので、入場規制をいつも恐れているのだが、場所のせいなのか今のところは規制に巻き込まれたことはない。
しかし今日が最初の入場規制になるかもしれないと思って、やはり1つ前のバンドから見ることとした。
本当は日割りが発表された段階で、ビレッジマンズストアを見てみたかったのだが、アシュラのスタート時間とのタイトさとビレッジが演る箱との遠さで諦めてしまった。

キースフラックは建物のことは知っているが、一度も足を踏み入れたことがない。
親不孝通りには福岡…いや九州にやって来るツアーバンドを牛耳っていると言っても過言ではない『DRUM』という系列のライブハウスがある。
長浜公園から細い路地を抜けた目の前にキースフラックはあり、その斜め前にはキャパ200の『DRUM SON』。SONと同じ建物の1階部分がキャパ350の『DRUM Be-1』。マンションを挟んで同じ通りに面したキャパ1000の『DRUM LOGS』というラインナップだ。
しかし今回のサーキットフェス会場にはなっていない。わたしはこの部分に関しては何でなのかなーって思っていたりもする。
本部がある長浜公園の真ん前に位置しながら、なぜなのだろうと考えはじめたら夜も眠れなくなるので、あまり考えないでおこうと思う。
とにかく、若かりし頃はDRUM系列のライブハウスによく行っていたので、マジックスクエアという名前のごとく、少し派手な作りのビルにあるキースフラックは外からなら何度も眺めたことがある。
しかし中に入るのは初めてかもしれない。
景気づけにポプラでお酒を買って飲み干してから、よし行くぞとリストバンドを高々と掲げて建物の中へと入った。

イヤマフを忘れてきた息子の耳に、途中で買った耳栓を挿し込む。これがなかなかサイズが上手く合わないのだが、ないよりはマシだ。
鉄製の扉を開けると、知らないバンドが演奏していた。
途中から入ったのでもしかすると見逃してるだけなのかもしれないが、MCがないまま淡々と曲だけを演っていくスタイルはどうしても興味が湧きづらい。

しかしそこそこ埋まっていたので、もしかするとわたしが知らないだけで人気なバンドなのかもしれないなと思った。

そして演奏が終わり、お客もサササーっと波が引くようにいなくなった。
これからアシュラなんだけどな、と思いつつ下手の最前に取りあえず立つ。

セッテイングを見るのが好きだ。そんなところを見せてもらえるなんてやっぱり嬉しい。
転換に時間は30分取ってあったのだけど、慣れた感じでサクサクと準備がなされていく。

しかしガランとしている。
待っているこちらがやきもきしてしまうほどに人がまばらだ。
でも、おそらく少し離れたキューブリックのビレッジを観ていたお客さんがきっと頑張って大移動しているはず。
客層が被ってるから、きっとそうなのだ。…と思っていても拭えない不安感。

音出しで【山の男は夢を見た】
「3曲目の曲をやります!」とナガさんが言って、音出しだけど初見のお客さんに向けての練習も兼ねて一曲。

1番までサラリと流して「東京からきた、アシュラシンドロームです」
から始まるちょっとしたおしゃべりタイム。
亞一人くんがフロアの数を数えてみせると、何回数えても両手で足りる程度の集客。
「今日はここにいる皆さんのためだけに演りますよぉー」
何度か数えたあとに亞一人くんがそう言った。
もうね、大丈夫だって思ってるんだけど、わたしもサーキットフェスが初めてなもんでハラハラしてしまったよ。
でもステージの上からフロアの数についてネガティブな発言はNGワードでもあるから、微力ながらもアシュラが始まるよーなんてツイートをしてみたりして。
「うちのTシャツ着てる人たちは問答無用でもう少し前に来て」と言われたのでオズオズと少し前に寄る遠慮がちなわたしたち。
空いていた前方の隙間は埋まったけれど、「オレたち一度捌けますんで…」とナガさんが言ったのが予定時刻の約10分前。「あ、まだ前に来なくてよかったのか」って亞一人くん…。
袖がない小さなステージから降りたメンバーをまだ余裕のあるフロアにて左右に分かれて花道を作って見送った。

そうして誰もいなくなったステージ。なぜか落ちている照明。しかしひたすらに暗い中で佇むわたしの不安はすぐに解消されることとなる。
始まるまでの数分であれよという間に人が増え、気がつけばパンパンとはいかないまでも普通に後ろまで埋まっていた。
ふと振り向けば真後ろにいたビレッジを終えたフォロワーさんとも無事お会いできて、聞けばみんなここを目指して走っていたとのこと。
わたしは福岡県在住だけど、このあたりの地理に明るくないので近道が思い浮かばないが、Google Mapで徒歩7分。丸かぶりではなかったがビレッジを諦めたのは、子連れでは絶対に間に合わないと思ったからだった。

パルプフィクションが流れれば、アシュラのライブが始まる合図だ。
この曲は息子が大好きな『イッテQ』の中でよくBGMになっていて、耳にするとついライブ前のワクワクや緊張感を思い出してしまうようになった。

もしかすると次のツアーからは別のものになるのではないかと思っていて、だから今日が聴き納めになるかも知れない。

先程見送ったときと同じように、真ん中が割れて花道となる。
メンバー全員がステージに上がって楽器を構えれば、5ヶ月ぶりのライブが始まった。

開口一番「ONTAQ出れたぞーーー!!!」というガッツポーズが3回。力強い。亞一人くんのガッツポーズはなぜだかものすごく既視感があるのだけど、なぜだろう…。
(開口一番って書いたけど、実は久々のライブで、案の定MCがどのタイミングで入ったのか覚えていない…)

ハーイハーイハイハイハイのコール&レスポンス。
そして始まる1曲目は【男が女を歌うとき】


安心安定の1曲目。もう皆勤賞。初見の人も多かったのだろうか。どうだったのだろう。
わたしは最前にいたので後ろの様子はあまり分からなかったのだけど、「愛しい人よー♪」の後の「さようなら」パートをどうするかなーって思いながら聴いてたら、委ねてくれて嬉しかったです。
フロアからの声を聴いた亞一人くんがめちゃめちゃ良い顔で笑っていた。

2曲目【D×S×T×M】


わたしこの曲ホント好きなの。やっぱりイントロで嬉しくて飛び跳ねてしまう。
飛ぶのはここじゃないのに、サビなのにって飛んだあとに気がつくんだよね。下手にいると姿は見えづらいけれど、ナオキさんのベースがよく聴こえる。カッコよくてすごく好きな曲。

ところでライブが終わってから飲食ブースの店員さんに、今日観に来たバンドのことを聞かれて、「何系?」っていう質問に「ロックです」って軽い気持ちで答えられなかった。
わたしが音楽に詳しくないということもあるけれど、ジャンル分けって本当にむずかしい。
去年のボロフェスで『スカパンク』なる紹介文が掲載されていたけれど、裏打ちリズムがスカだったのか!そりゃ好きなはずだよという納得感と、パンクはなんとなくイメージと違うのでは?という気もして、こういう時にサラリと答えられる言葉が欲しいと思った。
ステージの上では「食品を売っているバンド」って言っていたけれど、その曲は今日は演らないって言っていたし、たしかにわたしもワンマン以外では聴いていないし、前回参加したワンマンでは途中でペリーさん出てきてファミチキ買いに行くくだりが入っていたので、もうどうしようって感じだったし。
というよりも、それを知らない人に対してバンドの説明として用いるには「青ばん」の説明からしなければならないので、なかなかのハードルの高さだ。

予告通りの3曲目【山の男は夢を見た】


「あなた方の頭の上に山は見えてますか」から促される。音出しで練習したアレだ。ステージを観るわたしの視界の下の方で息子の小さな手がヒョコヒョコと山を作って動いている。

実は5ヶ月のアシュラブランクを経験した息子はライブ前にこんなことを言っていた。
「ぼく、今日は前じゃなくていいよ」
理由を聞くと「恥ずかしいから」と。
わたしにとっては季節が少し動いた程度の時間であれ、まだ10年しか生きていない彼にとってはきっと様々な変化があるに違いない。
そう思ってたまには後ろで大人見も良いだろうとそう思っていたのだ。
もちろん安全第一なので、その日の箱とフロアの雰囲気次第でこれは危険だと思えば、たとえ前に行きたいと言ったとしても問答無用で後ろに下がるつもりでいる。

取りあえず最前に待機して、どうだろうなとチラチラ息子の様子を見ていたのだが、いつものように手を上げたり、振ったりしながら楽しんでいたようで安心した。

絶対彼氏以上】


イントロの後、オイ!オイ!と声を出す。
Aメロの裏打ちが気持ちいいこの曲は大好きだ。
わたしはいつもこの曲を聴くときは『お願い道しるべをちょうだい』という歌詞を聴き漏らさないように気をつけてるのだけど(理由:好きだから)、今回はいつの間にかサラリと流れてしまっていた。どうやらじっくり聴くというより、ひたすらにその場の空気を楽しんでいたようだ。
良し悪しではなくて、しまったぁ!!!と思った。
「踊ろうぜ福岡ー!」だったかな「オンタクー!」だったかな。忘れちゃったのだけど、相変わらずのオリジナルダンスの亞一人くんを微笑ましく眺めながら、ふと目に入った上手側の最前にいた男性二人がとても慣れた様子で踊っていらして、あれ?もしかしてここはツーステップをするべきなの?このダンスを強要される場面での正解はもしやツーステと呼ばれるアレなの??
…と今更ながらに思ったけれど、色々と気が付かないふりをしている。

ツアーの話が出て、今月の27日に発売される新譜に触れて、でも今回のツアーに福岡が入っていない事実について、「九州を信じられなかった」とナガさん。
でも今日を経て、九州を信じられたということで「必ず帰ってくる」という言葉を今度はこちらが信じて待つ番になるのだ。
東京との物理的な距離。わたしが飛行機を使って移動するその長い長い道のり。
ただひたすらに、ひたむきに走るバンドワゴンがわが町に到着する日を、新たな約束として待ち続けようと思う。

「知らねえ曲だからって盛り上がらないなんてことはないだろう」という煽りとともに、ついに聴けた新曲【FinalFight】

初披露からずっと聴けない日が続いてたのだけど、ベースがすごいってのは感想ツイートなどでも少し目にしていた。
そういえば、ナオキさんのベースが6弦じゃなくて5弦だった。6弦ってやっぱりネックがかなり太いので、楽器の見た目に圧があるんだけど、今回はすっとしてた気がする。5弦だってハードなはずなのにね。どちらにせよ指板の上を滑らかに動いていく指使いは見ていて気持ちがいい。
ライブでは初めて聴くし、フルで聴く事自体が初めてだったのだけど、全曲トレーラーを聴いていたので、初めましての曲なのにサビで感じる安心感。「あ、ここ知ってる知ってる」って嬉しくなるからトレーラーはやっぱりいいなあと思う。
曲の途中でジャンプを2回するタイミングがあって、4回じゃなかったから何度かきたそのタイミングも、1回目を外しまくってしまって、結果1回しか飛べないこのフラストレーション。早く新譜を聴いてワンマンではちゃんと飛びたい。

ライブが終わって、ふとフロアが緩む。ビレッジ終わりで走ってきたであろうフォロワーさんたちと本当に簡単な挨拶をして、片づけをしているメンバーを横目で見ながら外に出たいと言う息子と共にライブハウスのある2階から物販のある1階へと降りた。
新しいグッズは札幌のワンマンから発売なので、今日はどうしようと思いながら、だむクジを引く事を楽しみにしている息子にお金を渡す。青ばんはまだ2つ冷凍庫に在庫があるので今日はやめておくことにした。
だむクジは亞一人くんとナガさんがピンで写っているものを1枚ずつゲット。15時からCD販売ブースでサイン会があるということで、これにサインをもらおうよ!と息子とニコニコしながら会話を交わす。
ボロフェスの時に買い忘れていたバックステージパス風ステッカーを1枚購入した。このステッカー地味に嬉しいんだよね。ライブに行った日付と会場が書いてあって、全員分のサインが入ってるから記念品として最高のグッズだと思う。ナイスアイディア。

そしてセトリ写真もゲット!

キースフラックを後にして、お腹が空いたので飲食ブースで色々と購入し、わたしはまたお酒を買った。テーブルの数は決して多くないのに、ちっとも混み合っていないこのゆるさは地方ならではだと思うのだ。いや他のライブを観に行けよというところだと思うが、サイン会まであまり時間がなくて、お酒を飲んでいたらうっかり動けなくなってしまったのだ。
ほんとこの腰の重さは反省しなければなと思う。

しかしすっかり思い浮かばなかったのだけど、どうやらサイン会はCDを買った人、という条件があったようで(そりゃそうだ)、すでに持っているものだったのでブースの前でうーむむと悩む。
もう一枚買うか、と思っていたら、フォロワーさんがどうせ買おうと思ってるからいいよ、という優しい言葉をかけてくださったお陰で無事サインをゲットすることが出来た。

「ちょっと大きくなったか?」と亞一人くんに声をかけてもらって、息子は嬉しそうだ。
標準より小ぶりなので、もしかするとものすごく小さい子だと思われているかもしれないが、一応この4月から小学5年生。親であるわたしも信じられないのだから、傍から見ればよく分からないだろう。

メンバー全員と息子とわたし、で写真を撮っていただいて、しかもえみだむ氏にシャッターを押してもらったのだから贅沢なことこの上ない。
そして息子は亞一人くんとのツーショットも撮ってもらって、横に並んでいるときに他のメンバーが「殴れ!今殴れ!」って声をかけてくれたけど、息子は柔和なタイプなのでそのこぶしを振り上げる事は無かった。

サイン会というもの自体が少し場馴れしない状況ではあるが、それ以上にずっと何かしらの違和感を抱えていたのだけど、そういえば昼間の明るい場所に立つ姿を見るのは初めてなのか、と気が付いた。
いつもライブハウスの中か、もしくは外だったとしても夜なので、こんな真昼間の公園にいる姿を見るのが初めてで、あー生きて動いているなと、サイン会を終えて飲食ブースに立ち寄る後ろ姿を眺めながらそんなことを思った。

札幌のワンマンに行きます!と改めてお伝えして、気が付けば飛行機を予約してからずいぶんと日が経ち、あと2週間というところまで日付は進んでいる。
フェスだと演奏時間は30分ほど。聴ける曲も5曲程度が限界だ。
関東より先に行ったことがない南の民であるわたしが、北の大地に降り立つまであと数日。飛行機が無事に飛んでくれることを今はただ祈るしかない。

春はあっという間に訪れていて、桜前線は始まりの日を迎えている。
程よく酔っぱらった帰り道、ご近所さんの庭先に生えているさくらんぼがなる桜の木は、すでに葉桜の装いだった。

通り過ぎた冬を追いかけて、次は3月30日札幌ベッシーホールワンマンライブ。
チケットは残りわずか。http://asura-syndrome.com/?p=4745