箱日記

ライブに行った感想を細々とつづっています。

2019年8月17日 打首獄門同好会 RISING SUN ROCK FESTIVAL 2019 in EZO.~後編~

…きっと忘れないと思った。

 

涙は心の汗。…ということで涙腺がカッチカチなわたしの目にも涙が溢れた。
しかしそれは感情から来るものではなく、目にゴミが入ったことによるハードコンタクトのズレであった。
わたしは感情の振れ幅があまり大きくなく、ポジティブな感情と涙腺が分離している。自身の結婚式と出産で外しているのだから、もうそんな日は来ないような気がしているがどうだろうか。
ただけっして『無』というわけではなく、人並みに感動だってしていて、そのことを後からこうして文章にしたりするのだ。
書き連ねるという動作には、頭の整理を伴う。グダグダと考えないで、目を真っ赤にしてステージの感想を言う姿を羨ましく思う。一方で衝動的な感情が怖いという思いもある。
わたしだって追い詰められて泣くこともある。そう考えると感動の涙というのは感情に追い詰められているのかもしれない。
どこからか分からない『想い』というものが、自分でコントロールできないほどに湧き上がってくるなんて、怖いじゃないか。だからそれをいとも簡単にやってのける人の強さに憧れている。

 

大きな満月を視界に置いて、水を求めて歩き始めた。トイレ横の手洗いは飲料水ではないということで、飲みはしないが目に入れるものを洗うには適していない。
せっかくだからと、再び石狩市場を目指した。
RSRのメインであるSunstageの前を横切り、Earthtentを通りすぎて、入口から一番離れているその場所へと歩き進める。
メインステージはメインというだけあってとても良い場所に設置されている。入口からゲートをくぐり、真っ直ぐ目の前に設置されていて、大きなモニタにステージの様子が映し出されている。
花道のように伸びたその両脇にはテントが張られていて、個人が各々バーベキューなどを楽しんでいるのでずっとどこかでいい匂いがしている。

フェスのことをあまり知らなかった頃、連日開催される場合は全てテントを張って夜通し楽しむものだと思っていた。通し券を買う人は何らかの形で会場に残り、日が暮れてもずっと音を聴きながら過ごすのだと思っていたのだ。それはきっと素敵な夜で、そういう楽しみ方が出来るのがフェスだと思っていたらどうやらそれは間違いで、夜通しその場にいられるのは限られているということを知った。
例えば去年参戦したサツマニアンという鹿児島のフェスは、1日目終了後はそこに残る事が出来ないと聞いて驚いたものだ。
わたしはアウトドアとは縁が薄く、学生時代のクラスメイトにキャンプや海に誘われても断って、当時の彼氏のスタジオ練習について行ったりしていた。散らかった狭いアパートで同じフレーズしか弾かないベースの音を聴きながら、ぼーっと過ごしていたのだ。

運が良いことに雨が降る事もなくずっと晴れていて、それは夜になっても続いていた。月が綺麗な光を届けて、薄明りの中で流れる音を聴きながら歩く。
夜が来てもどこかに帰る必要がない。好きな時間にお酒を飲んで、ふらりと音楽を聴いて、美味しいものを食べる。少し冷えてきたかなと思うくらいの肌心地の良い気温で、蚊もいない。石狩の夜は最高だった。


22時からサイン会があるということで、それまではしばし休憩と余韻に浸ることにした。サイン会といえば福岡のサーキットフェスの時にも一度経験していたが、タワレコで商品を買うとサインがもらえるというやつだ。予め購入を済ませて、イベント参加券をゲットしていた。
前回の時はあまり人が集まらなくて、わたしたちを含めて数組で終わってしまったが、今日はあのステージの後だしきっと人も多いはず。
そう思っていたのにゆっくりしてしまっていたら、フォロワーさんから『整列が始まってます』というDMをもらった。慌ててタワレコブースを目指す。時間は決まっているし、途中で終わってしまうことはないだろうがついつい気ばかり焦ってしまい、走ってその場へと向かう。

いた…。
列よりも先に、すでにブースに設置された長机のところに並んで座るアシュラのメンバーを見つけた。さっきまでステージの上にいた人たちが地上に降りてきている。
わたしはライブの感想を直接言葉で伝えるのが上手くない。『最高だった』ということを伝えるために1万字以上も文章をつづってしまうのだ。ほんの数分、しかも本人を目の前にしてしまえば舞い上がってしまって言葉が上手く出てこない。
とりあえず列に並ぼうと整列されている人たちの横を通ると、よく知った人たちがすでに並んでいて、ちょっとした言葉を交わしながら最後尾に並んだ。
わたしの前後にいる方々は全く知らない人だった。女性よりも男性が多い気がした。RSR限定Tシャツを着ている人もいる。
イベント参加券をもらうために先にブースに来た時に、一緒に行ったフォロワーさんはアシュラのCDを持っていないと言っていて、どれを買おうかと悩んでいたので『ロールプレイング現実』をお勧めした。
持っていないと言われて「え!持とう!!」と思わず言ってしまった。他のアルバムもとても良いけれどやはり今まさに走っているバンドは成長しながら進んでおり、そうなれば常に前作を超えていくのだと思う。

長い列が出来ているということは、自分の番まで時間がかかるということなのだが、この列が嬉しかった。わたしのように元々思い入れを持って遠くから照準を合わせて観に来たわけではなく、例えばたまたま名前だけは知っていて、アシュラのステージを初めて観たという人もたくさん並んでくれているのだとしたら、それってすごいことだよなと思うのだ。
最初の一歩が重たいタイプのわたしは、偶然観たバンドのサイン会なんて、よっぽどステージが良くないと並ばない。もしかするとそのハードルがわたしよりも低い人も多いのかもしれないが、それでも何か一言声をかけたいと思って並んでいるのだと思う。

是非は置いておいて、わたしは出待ちをするファンなので、これまでサインをもらったことも写真を撮ってもらったこともある。お手紙を渡したりとか色々あるのだけれど、今日はやっぱり特別な場所だから今日の感想を今日伝えられるというのはとても嬉しい。

CDにサインをと思っていたが、CDじゃないものでも大丈夫ということを先に並んでいた方から教えていただいたので、限定Tシャツに書いていただく事にした。
相変わらず目の前にするとどうしてもドキドキしてしまって、この鼓動のスピードは小動物だったら死んでしまうくらいだ。

目の前に立つと、あっという間にどうしていいのか分からなくなった。
「今日、息子は?」とサインを書きながら亞一人くんが聞いてくれて、「置いてきました」と答えるわたしは母親歴10年で今一番の大冒険の末ここまで来たのだと改めて思う。
開催できてほんとに嬉しかったこと、ステージは最高すぎてカッコよかったということ、本当に来られて良かったこと、来てよかったということ、もう切れ切れの単語マシーンかというくらいに何とか伝えて、握手をしてもらった。
ナガさんも開催できてよかった、と言っていて、本当に良かったです嬉しいと伝えて。ずっと気になっていたのだ。Caffeineで偶然会った時、初日が中止になる事を知らなくて、雨が降ってしまうかもしれないと言ってしまったことを後悔していたのだ。会えて本当に良かった。
ナオキさんもいつもの笑顔で対応してくれて、カズマさんは「息子くんによろしくね」と言ってくれた。息子は行きたいと泣いていたが、いつもニコイチみたいに存在していることを覚えてもらえていてよかったねえと心底思ったものだ。

ツアーにも行きます!福岡行きます!と伝えて、わたしの順番は終わった。少し離れた場所からサイン会の様子を見守りながら、フォロワーさんと今日のことを色々と話しながら、何だろうこの贅沢な時間は、と思う。
メンバーの記念撮影をする姿を見守りながら、タワレコスタッフの方からみなさんでと言われておずおずと『NO MUSIC NO LIFE』の枠を使って集合写真を撮る。実はタワレコ札幌ピヴォ店の公式FaceBookで見ることができるのだが、数日後アップされていたものはとても良い写真だった。
わたしはヲタクなのでいつもどこに行っても自分を入れた写真を撮ることを忘れてしまうのだが、こうして形に残してもらえてとてもありがたいし、ものすごく良い記念になったと思う。

心臓を傷めながらもなんとかサイン会を終えたわたしは、再び石狩市場へと移動して鮭醤油ラーメンを食べることにした。10獄放送局を観ていて、やっぱりそれは外せないだろうと思ったのだ。
ラーメンの国から来たせいでうっかりしていたのだが、福岡のラーメンはデフォルトの麺量が少ない。細麺が特徴なのだが、伸びることを異常に嫌っているカタ麺文化が浸透しているので、最初から少な目に設定されていて、足りない人は替え玉をするというのが通常なのだ。
鮭醤油ラーメンはとっても美味しかった。しかし量がものすごく多くて、お腹いっぱいになってしまった。フェス料金なのかと思っていたが、これは通常料金なのではないだろうか。お得だ、お得なのだがまさにお腹がHARETSU!お腹がHARETSU!である。

打首さんのステージは3時から。気がつけばあと少しというところまで迫ってきている。ひとつ前のバンドから会場に行かなければ入場規制なども心配だ。
わたしはテントに戻ると、Tシャツを着替える。獄至十五Tシャツに袖を通して、Earthtentへと向かった。

トリを観るということは、もう日の出を迎えた後のバスで帰る以外の方法がないということだ。それは周りにいる人たちも同じで、トリ前のバンドを観ている人たちとの入れ替えがあまりないのではないだろうかと考える。
打首さんのフロアはアシュラのそれよりも暴れん坊が多く、最前か少し後ろでないととてもじゃないが帰りの飛行機なんて乗れない気がした。
色んなフォロワーさんに確認すると、もう一泊ホテルを取っている人と、その日の昼には移動して飛行機に乗る人とに分かれていて、わたしは後者であった。
さすがに4泊は家を空けすぎだし、月曜日は午前休みを取っているが午後からは仕事である。何としてでも帰り着かなければならない。となれば体力ゲージをゼロにしてしまうわけにはいかないのだ。

フレデリックというバンドのステージは、大人な音楽だった。どこかで聞いたことがあると思ったら、昨年末の福岡のフェスに来ていたような気がする。ダイブやモッシュというタイプのバンドではなく、どちらかというと踊る感じで、真ん中あたりで観ていたがお酒を持ったまま楽しんでいるお客さんもいた。
わたしはハードな音楽も好きだが、ベースがスラップするような曲も好きだ。

しかし眠みも襲ってくる。心地よい音楽は健やかな睡眠欲も刺激するものだ。時間も時間で、わたしの身体は大したこともしていないというのに、石狩市場とdefgarageのあたりを何度も往復したことで地味に体力を削られていた。
しかしフレデリックのステージが終わり、果敢にも前を目指して進んでいく。Earthtentは大きな会場なので、フロアが3つのブロックに分けられている。センターブロックを進み、ど真ん中の2列目に到着した。2列目なので視界良好である。
しかし不安にも襲われた。センターブロックのセンター2列目。ここはダイバーの通り道だ。そして掴める柵がないという状況。台風で言えば右下にあたる強風域のようなものなのだ。
『センター2列目』とツイートしてみる。深夜だというのに、命の危険を心配するエールのリプが飛んできた。これは…ヤバいかもしれない。
わたしはとにかく無事にRSRという日を終えたい。最前を目指すのはステージを観たいからなのだが、頭の上をダイバーが飛んでいくことにより往々にして観えないという矛盾を抱える場所ではないか。
わたしは、ここは危険ゾーンだと判断して下手側に移動した。ライブを楽しむ場所は人それぞれだ。
Junkoさん側の3列目。少し前に人が増えてしまったが、先ほどの場所よりも安全そうだし、ステージも高いのでよく見える。
何よりも下手側は上手奥にあるステージ袖がよく見えるのだ。
わたしの斜め前はおそらくフレデリックの時から移動しないまま、打首さんも観ていこう、という比較的軽い気持ちでそこにいる若い女性2人がいて、わたしは思ったよりもギュってなるから気を付けるんだよ…と心の中で思った。そして左横は大柄の男性だった。
さすがに前列の方は獄Tの人も多い。フェスの場合はどこで何が起こるか予測が難しくて、以前福岡のフェスで観た時は、『私を二郎に連れてって』で謎のサークルが出来た。危険度はライブハウスの方が上なのか、それともフェスのフロアなのか。どちらなのだろうかとそんな風に�� �う。

打首さんのセッティングが始まった。
石狩市場で見かけた時は髪を下ろして獄ハットをかぶっていたが、ステージ仕様のちょんまげ姿で会長が出てくる。スタッフの人と風乃海くんがVJ用のスクリーンを設置しているが、どうもうまくいかないようで手間取っている。
ここにスクリーンを置くということは、Earthtentの外に設置されている大型モニタは、ステージの様子が映しだされるのかな、なんて思いながらもすでに中にいるわたしにはそれを確認する術はない。

「おはようございまーす!」とあす香さんの大きな声が響く。朝のそれと業界的なそれが混ざっているのか、何にせよ可愛い。今年のEarthtentは場所が以前と違うといったことも聞いたが、テントの作りは同じなので、10獄放送局で観たあのステージと変わらないように思えた。
打首さんのステージが出来上がっていく。深夜だというのにもう眠気はない。疲れも感じていない。きっとこれ以上ないほどにアドレナリンが出まくっているのだと思った。

音だしの曲は【ヤキトリズム】
わたしは本当にこの曲が大好きだ。
先日、福岡でのライブの時に久々にフルで聴いたのだけど、この曲のイントロとBメロのギターリフが本当に好き。
この曲って打首さんの楽曲にはよくある、コールがはっきりしていて分かりやすい曲だと思うのだけど、全部を歌っちゃう人が近くにいてわたしは少しこの先の展開を案じてしまった。
もも『ねぎま』もも『ねぎま』でしょ?『ももねぎまももねぎま』で歌う人を初めて聴いたので、少しびっくりしたぞ。
焼き鳥で言うならネギの方でよろしくお願いしますと言いたいけれど、そんなことは言えないし、少しモヤついたまま、分かりやすく『もも』と『ねぎま』の振る舞いを変えてみるといった地味な行動をとってみたりした。

設置したはずのスクリーンが一度倒れてしまって、ステージもフロアも少しざわついた。そこにある道具で可能な範囲でめいっぱい広げて大きくしてるものだから、絶妙なバランスで設置されているのだと思う。
先日会長がDIYにて制作に成功していた大クラさんではなく、スクリーンなのはやはりここが北海道だからということなのだろうか。大きくて飛行機には載せられない?と思ったのだがどうなのだろう。

会長がとにかく眠そうで、少しふわふわとした表情をしていたのが印象的だった。
そりゃそうだ。一週間前に北海道は釧路空港に降り立ち、納沙布岬という東の端っこから石狩まで、自転車で5日間かけて移動してきているのだから。
そんなの、ゴールと同時にすぐさま身体を休めてもいいくらいの案件だ。
発表された時、わたしは「なんという無茶なことを…」と思った。わたしは会長とは同じ年なだが、若さだけで何とかなっていた頃を通り過ぎてしまったことを実感しながら日々を過ごしている。もちろんわたしとは違い、普段からハードなステージをこなしているのだから、体力はあるだろう。ジムにも通ったということだったので筋力だってつけているはずだ。
それでもキャパというものがある。睡眠や体力温存が日々生きていくのに非常に大きな意味を持つ。膝や腰といった身体を動かすのに大切な部分が普通に動いてくれるからこそ、日常生活プラスのことが出来るのだ。
身体を動かすと頭の中が空っぽになって気持ちいい。だがきっと今回は天候のこともあり、到着してから本番の日を迎えるまで、頭だってフル回転させていたはずだとそう思う。
これはわたしの想像でしかないが、亞一人くんは自分のステージのことで頭がいっぱいだったと思う。でも会長はそこにも気を配りながら企画を遂行していたのではないだろうか。企画を立てた以上、アシュラのRSRステージの成功と、自分たちの企画の成功と、自分たちのステージと、そして後に公開される10獄放送局についてと、考えることは山ほどあったのではないだろうか。
プレイングマネージャーというのはただひたすらに大変な役割だ。それをやってのける会長は本当にカッコいいし、仕事のできる男だなと感心してしまう。

もう1曲【まごパワー】
まごは長らくフルで聴いていない。短いのを聴くのも久し振りかもしれない曲。新しい曲が増えていくということは、ライブで聴けない曲も増えていくということだ。
そういうこともあって、音だしの曲はその日に演らない曲をやってくれるのではないかと思う。きっと会長の優しさなんだろうなと思っている。ライブに行く回数ってきっと大多数の人が年に行っても1回か2回くらいだと思うのだが、そうするとどの曲を聴いても久し振りということになる。ツアーって基本は同じセットリストだしね。

今回驚いたのは、セキュリティの方が屈強な外国人男性だったことだ。たくさんいるセキュリティの中で何人かが、というのなら別に驚かないが、最前柵とステージの間にいる人全員がそうだったので、これは狙ってやっているのだなと思った。
ムキムキなのだ。本当に。あれ?海外のフェスに来たんだっけ?と思ってしまうほどの眺めが出来上がっていた。たぶん日本人のセキュリティの方だって筋肉に自信ありだと思うのだけど、やはり視覚効果というやつなのだろうか。
どこだったか、先日の大分のライブハウスだったか、それとも鹿児島のフェスだったか、どちらかはわりと細身のスタッフさんだったのでそれはそれで不安もあった。
アシュラの京都ワンマンの時は、わたしの足元に華奢な女性スタッフさんがスタンバイしていたのだが、その時はわたしが踏み潰してしまわないかと心配してしまったこともある。
個々人の能力が分からない以上、見た目というのはとても大事な要素だとそんな風に思った。

もうすぐ3時だ。3時と言えば、オヤツの時間だ。という会長の言葉。オヤツ持ってる人―?と聞かれて、みんな持っていないと答えるのがここの正解だ。
それは大変だ、今からみなさんにオヤツを配りたいと思いますー!ということで、うまい棒配布タイム。どこからともなく「うまい棒まわせ!うまい棒まわせ!♪」という声がかかり、近くの女性2人が「なにこれ??どういうこと?」と不思議そうに言っていた。そうだよね、その感想、ごく普通の感覚だと思います。

そして本日もうまい棒ゲット。近くの人たちにもちゃんとまわってきて、無事みなさんゲットしていた。
「え、これどうすんの?曲の途中で食べるとか?」という声が聞えて、わたしの前にいた獄Tの方が「これを曲の途中に振るんです」とお伝えしていたが、「斬新~!」という感想の声。いやいや、どちらかというと曲中に食べろって言われる方が斬新なのではないだろうか。

セッティングがすべて終わり、メンバーが袖に一度引っ込む。フロアに期待感が充満していて、あともう少しで始まるのだなとそう思った。Earthtentのトリ、時刻はもうすぐ3時。おやつの時間までもう少し。

BGMが絞られて少し音が割れていたように思うがいつものSEが流れる。今日もバックドロップシンデレラの『池袋のマニア化を防がNight』。音と共にJunkoさん、あす香さん、会長が出てきてフロアを煽る。オイオイから始まるステージ、いつだってワクワクする。

美味しいおやつの時間。1曲目は【デリシャスティック】
ギターから始まるこの曲、音が鳴り始めた瞬間からぐっと圧が強くなる。後ろからぐーっと押されて、潰されそうになりながらも手にしたうまい棒を掲げて懸命に振る。
たこやき、チーズ、コーンポタージュ…最初に聴いたころは歌詞を覚えるのが大変だなと思ったが、すっかり覚えてしまいうまい棒の種類にも詳しくなってしまった。
Junkoさんのヘドバンが本当に綺麗で、ふわりと舞った金色の髪の毛が照明に照らされて色がつくのがとても美しい。

1曲目でデリシャスティックだったとき、その後の曲のときは美味しいサイリウムうまい棒をポケットなりに仕舞いたいのだが、いかんせん手が下ろせない。それほどにフロアは密着度が高くて、圧がすごいのだ。ダイバーも飛んでいて、屈強なセキュリティの方々が受け止めては横にいなしていく。
ダイブ、モッシュは禁止とされていながらも、どうしたって起こってしまうものなのだなとバタつく足と靴の裏を見ながらそう思った。

本日のデリシャスティックはショートバージョン。1番のみで、次の曲は【こどものねごと】
オッケーライジング遊ぼうぜ!と始まる。会長の声を聴いて、ああRSRだったと思い出す。アシュラのステージにはたくさんの意味が上乗せされていたけれど、今回の打首さんのステージにはそれはあまりなく、通常営業なところがまた楽しい。
音を鳴らしたら遊びの時間なのだ。それがどこであれ、楽しい時間であることに変わりはない。
1曲目にきても、そうでなくてもとにかく盛り上がれる曲。音源で聴いた時に早くライブで聴きたいと思った曲だった。

北海道は海の幸。【島国DNA】
今日も元気にまぐろたんがフロアを泳ぐ。1タッチできたのがとても嬉しい。
魚魚魚魚魚魚貝貝、字にすると本当に面白いコールだと思うけれど、やっているときは本当に真剣に叫んでいる。こんなに大きな声で「貝、貝」と叫ぶことなど、打首さんのライブに来ている時以外にはない。貴重な貝コールだ。
この曲の時はJunkoさんに注目してしまう。2番の「ひらめ、ひらめ、ひらめの刺身」の動きがとてもかわいくてお気に入りなのだ。フロアを一番煽るのはJunkoさんで、ステージパフォーマンスの派手さと可愛さのバランスがすばらしいと思う。
会長は基本的にギターを弾いている時は殺す目をしていて、その表情も大好きなのだが、Junkoさんはイカツめの表情の時と、笑顔の時とのギャップがまた良くて、下手側で観るのが最高だなと思うのだ。

魚だけではない、もうそう言われたら次の曲はこれしかない【ニクタベイコウ!】
北海道は本当に美味しいものの宝庫だから、飯テロバンドの打首さんの曲は映える。メシテロ映えだ。
『そうしよう!』のコールが気持ちよすぎて、本当に幸せだ。魚も肉もギターのズクズクの音が心地よくて、重めの音が本当に好き。
わたしは会長のヘッドレスニューギターよりもナチュラルな方のギターが好きで、もっというと少し前に使っていた黒いギターの方が好き。音楽理論のなんたるかなんてものはさっぱりわからず、音作りがどうとか全くうんちくの一つも語れないただの素人なのだけど、単純な好みなのだと思う。
ズクズク、よりもゾンゾンゾンゾンという音が好きなんだよ。オノマトペでしか語れないのって知識の無さを象徴しているのかとも思うのだけど、知識があっても結局はオノマトペになってしまう現象に名前を付けてほしいものだ。
わたしの知り合いのギターキッズも、素人のわたしに向けて話すからかどうか知らないけど、いつも「ズク」とか「シャリシャリ」とか「ゾンゾン」とかそんな表現ばかりだった。分からない、けど分かる。そんな曲はもう少し先に演奏された。

【私を二郎に連れてって】
札幌にもあるんだね。と思ったのだけど、たしかに地図にはあったのだ。わたしも行きたいと思ったけれど、せっかくの北海道なんだからと思って躊躇してしまった、ラーメン二郎

Aメロの時に手を叩くのがお決まりなのだけど、うまい棒が邪魔をして上手く叩けないのはいつものことだ。ポケットに仕舞いたいと何度か挑戦するけれど、周りの人の邪魔になってしまいそうで結局持ったままのクラップ。
この曲はあす香さんの歌声が綺麗に響く。実はアイドルに提供するはずだった曲というのは情報として知っていたが、先日対バンしたエビ中だったということが明かされた。本当のアイドルが歌ったらまた違った良さが出るのだろう。アイドルに関わらず、楽曲提供という道も今後はあるのかな。どこかに楽曲提供したとき、その相手の良さをくみ取りながらも「らしいな」と思わせる曲をどれほど作れるかというのが肝だと思う。会長はそういうのきっと得意だろうから、もしもそんな日がくるならば夢は広がりんぐだ。
オーケンは楽曲提供が多くあり、そのどれもが「らしい」の塊のような人なので、個性というものがはっきりしている人はその良さを味として広げていく事ができるのだろうと思っている。個がはっきりそこにある人がわたしは好きでその「らしさ」を愛でたい。

そして新曲。初めてライブで聴く【なつのうた】
ギターを持ち替えていたのを見て、なんとなく次の曲を予想する。ヘッドレスギターで演奏されるのは最近の可愛いMVシリーズの曲だ。
北海道にはふさわしくないかと思いきや、今年は本当に暑い日が続いていて、涼しいはずの北の大地も30度を超える日が多くあった。
わたしの住んでいる地域が雪に弱く、ほんの少し積もっただけでも交通機関がマヒしてしまって非常に困るのは、町全体がそういう仕様になっていないからだ。
九州が台風に強いのもその一環だし、最近は大雨なんてものもよくあるので対策も少しずつ整ってきたように思う。地域特色が必ずあって、浅間山の噴火で灰を恐れる人たちと、鹿児島の桜島で慣らされている人たちでは町の作りがまるで違うのだから仕方がない。
暑さに弱い北海道では、札幌市内の電気店で売場から扇風機が消えたというニュースに触れて、今年の夏の異常さについて会長が伝えるのを聞きながら、見た見たそのニュース、と身近な話題に嬉しくなる。

あーーーつーーーいーーー!という思いをこれだけ声高にみんなで叫べるのは本当に楽しい。ボサノヴァ調の曲は海岸沿いに流れるBGMのようで、なんとなくファミコンのイメージを持っているのだがどうしてだろう。分かりやすいまでに海、夏、という雰囲気が出ていて、こうぺんちゃんのMVも可愛い。演奏されている後ろで流れている映像に視線を送り、最初に公開された日が本当に暑い日で、仕事の移動中に本当に共感を覚えながら観たのを思い出す。


今日は日曜日。日付が変わってすでに日曜日になっている。ということは明日は月曜日…といったようなことをイントロのアルペジオの音を使って漫談のように話すのが定番となってきた【はたらきたくない】
本当に本当に本当に、時間が止まってしまえばいいのにと思う。
わたしは木曜日から有給を取り、北海道へと飛び立った。このRSRは完全にわたしの、わたしだけの夏休みだ。不安になったり感動したり、たくさんの出来事が降り注いだこの夏を、わたしはきっと忘れないだろうと思う。
しかし現実は押し迫ってきており、バケーションなんてものが根付いていない日本では4連休だって長い方だと思う。非正規雇用のわたしには夏季休暇はなく、残り少ない有給を必死でかき集めてこの日を迎え、そして気がつけばいつの間にか日曜日になってしまっていた。
わたしは仕事が嫌いなわけではなく、どちらかといえば好きな方なのだが、それでも楽しい時間の終わりが見えるのは寂しいものだ。

この曲の良いところは、はたらきたくないネガティブさだけで終わらないところ。会長は仕事が好きなんだと思うのだ。たしかに事務仕事はあまり好きではないかもしれないが、全てが音楽活動につながっている今、きっと楽しい部分が大きくだから最終的にはポジティブな内容になっていく。
個人的には「大クラさん(VJ用のモニタ)」を作っている時の動画を見た時にそう思う。文化祭の夜みたいな、あの楽しいだけの夜が続いているような気がして、わたしは仕事ってあの延長線上にあってほしいといつも思うのだ。
バンドマンなんて雇用された労働者ではないので、基本的に労基法の範疇にはなくて、長時間労働の重労働であることが多い。たとえば関東から九州まで車移動なんてものは、サラリーマンの出張だったらあってはならぬことだ。収入に見合わぬ活動だって多いだろう。でもあんな夜があって、ステージがあって、それを仕事にしていくのだから、働くことはきっと楽しい。
嫌な事だってたくさんあるのが仕事なのだけど、でも全ての人があらゆる場面でそういった瞬間を手にすることが出来ればいいなとそんな風に思っている。達成感と言ってしまえば陳腐な言葉だけれど、人生の中で多くの時間を占めているものが、少しでも楽しくあるように「はたらきたくない」というワードに彩られた歌詞を聴きながら、わたしはそんな風に思うのだった。

オノマトペでギターソロを見る。【Shake it up 'n' go 〜シャキッと!コーンのうた〜】
ついに地上波のCMをゲットしたという嬉しいニュースも飛び込んできた。この曲は何といってもギターだ。ティーティーティロリロリロティロリロリロとか、ホント好き。楽器を弾けないわたしにとって、ギターフレーズはこれだもの。会長はあんまり速弾きをしないので、口で言えるくらいのスピードだけど、速弾きギタリストだととんでもなく文字がたくさん出てくるだろう。
ギターフレーズをこの形で口に出したことがない人なんているの?と思うのだけれどどうだろうか。
ライブ演奏を音源と同じく弾くというのは結構難しいもので、手癖が出てしまうタイプのギタリストもいるが、会長はどちらかというと音源に忠実なタイプだと思う。
とはいえ、後ろにカタカナで出ているならことのほか大変だ。初見の人にもバレてしまうではないか。
MVの映像として面白可愛いからやってみたものの、いざライブでとなると気合いを入れて臨まなければならないのではないかとそんな風に思う。


ライジングの会場からよく見える場所にこれがあり、思わずセトリを変更したという曲は【パ】
そしてわたしも会場をウロウロとしている時に、ああ!あれは!と思って思わず写真を撮っていた。こんなおあつらえ向きなところにあるなんて、それはもう仕方ないことだったと思う。
飲食ブースの向こう側、ホクレンJAの文字と並んである建物には大きく『パールライス』と書いてある。これは絶対にあの曲をやるな、とほくそ笑んだことが現実になっていて面白い。

その言葉が入る瞬間の映像がちゃんとそこにあるものになっていて、こういう演出は嬉しいし、特別感があって盛り上がる。
しかしこの曲ではなくて元々のセットリストに入っていたのは何だったのだろうということも気になるところだ。


まだまだ行けるかということで【きのこたけのこ戦争】
ここで持ってくるのか!と思った。残り少ない体力をとにかく搾り取っていくスタイル。この曲はWODがあるので、端にいればまず先に押しつぶされそうになる。
いつか真ん中で参加してみたいと思いながらも、どうしても怖くて端っこでぎゅっとなっていることが多い。
War~きのこたけのこWar War War の後、1,2,3,4というところが好きだ。覚悟を決める瞬間といってもいい。
そしてうっかりたけのこ派のところに位置していたことは反省したい。わたしは純然たるきのこ派であることを改めて表明しておく。

美味しいおやつの後にはこれが大事だ。【歯痛くて feat.Dr.COYASS】
コヤス先生がいないバージョン。会長がそのパートを歌うバージョンだ。
この曲ちょっと久し振りに聴いたかもしれない。いつが最後だったかなと自分の感想をさかのぼってみたら、去年の打首筋少の時に聴いたのが最後だった。この時はコヤス先生がいるバージョンだったので、会長が歌っているのだと昨年4月の山口のライブの時以来だ。道理で懐かしい感じがしたわけだ。
ゲストボーカルがいる曲は普段のライブで演奏するのが難しかったりすることもあるが、この曲は当てはまらない。わたしは地方民なのでコヤス先生がいないバージョンを聴く事が多いはずだ。二郎の楽曲提供の時にも少し触れたけれど「らしさ」があれば、いつも聴いてる音源との違いに違和感を覚える事が少ない。
会長が歌うバージョンは音源化も映像化もされることはほぼないと思うので、これは本当に観られる人が限定されているライブだけのお楽しみだと思っている。


今日は8月18日だ。17日だと思っている人もいるかもしれないが、すでに日付が変わって8月18日という会長の言葉から次の曲に入る。今日は何の日かと問いかけて、映像で分かりやすくその意味を紐解く。
「八十八」→「米」。お米には88人の神様がいるというアレだね。
いつもどこでも最後の曲はその地域の豊作を祈るあの曲だ。最後の曲は【日本の米は世界一】

曲名が投げかけられる前に、ご唱和くださいの前に自然と右手があがっている。終わっていく寂しさを圧倒的なパワーで楽しさに変えてしまうこの曲は、いつどこで聴いても本当に楽しいし、カッコいい。
定番曲、MVランキングでは1位を守っているこの曲。最近の可愛いMVも話題性は高いけれど、テレビで紹介されるときは、やっぱりこの曲なのだ。

ラストは曲の締めに合わせてジャンプ。この瞬間がよくステージ写真として撮影されていて、その一瞬を切り取って保存してくれるカメラマンには感謝しかない。
ありがとうございました、と会長が言ってステージから去っていくその時、フロアからは演者を呼ぶ声がどこからともなく聞えてきた。わたしも大きな声でそれに倣う。手を振りながらステージ袖に消えていく姿を眺めた。

本来ならこれで終わりだ。しかし今日はトリなのだ。Earthtentのトリ、ということはあるはずなのだ。アンコールが。
打首さんのアンコールは「最初から、最初から」だ。このコールは初めて聞く人からすると不思議に思うのも無理はない。「え、なに?なに?」という声も近くで少しだけ聞えてきた。
わたしはこのアンコールのかけ声が大好きだ。そしてその声に答えて、再び出てきた時の会長の一言を聞くのも好きなのだ。

「最初からだとみんなDragon Ash観られないよ?」と言っていたように記憶しているが、すでにわたしの記憶はカッスカスでもしかしたらねつ造したものかもしれない。
みんなでDragon Ashを観て、日の出を見ようとそう言っていたように思う。
いつもならばアンコールは『フローネル』が定番だったが、ここは北海道。そうだよね、そうだよね、と思っていたらやっぱりだった。


我々のオリジナル曲ではないのですが、と言ってはじまるその曲は【1/6夢旅人】
特別な時にしか聴けないこの曲。たくさん曲を演るワンマンならば1チャンスあるけれど、フェスや普段のライブだと北海道じゃないと聴けない曲だ。

中止になってしまった1日目を使って、あの公園に行ったことを思い出す。あそこはどうバカではないわたしにとって、10獄放送局の聖地としての意味合いの方が強い。好きなものを全力でリスペクトする会長のこだわりを見るのが好きだ。

「一緒に歌ってくれますか」
コールはたくさんあって、一緒に歌う曲ばかりだけれど、会長がそんな風に言うのはこの曲だけだ。
『世界じゅうを僕らの 涙で埋め尽して』
本当にワンフレーズ。一緒に歌ってというわりにとても短いのだが、ここを歌えるという貴重な瞬間を再び手にしたことへの喜びは大きい。
打首さんの歌詞は面白いだけではなく、会長の言葉選びのたまものだと思っていて、だからどの曲を聴いても歌詞には大澤イズムにあふれている。しかし当たり前だがこの曲は作詞者が別なので、聴けば聴くほどに不思議な感覚を持つのだ。
以前、音楽ライターのブログで作詞作曲演奏というのを全てがバンドで行うということが、果たして良いことなのだろうかといったものを読んだことがあるのだが、わたしは断然全てを行うスタンスの方が個人的に好みだ。
打首さんの歌詞には、熱いメッセージ性というものはないけれど、テーマに沿った歌詞の中に会長の言葉選びのこだわりが見える。わたしはそれが好きだったりするので、だからこそこの曲は貴重だなとそう思うのだ。
最新のアルバムでは『おどるポンポコリン』をカバーしているが、あちらはどちらかというと言葉遊びのような歌詞なので、打首さんの普段の歌詞と近しいところもある。しかしこの曲のように言葉に意味がある歌詞を歌っているというのが物珍しくて面白いと思う。
それでもこの曲のカバーをすることに大きな意味を持っていて、こうやって北海道という地で大切に演奏される瞬間に立ち会えて、わたしのRSRにまた1つ想い出が重ねられていく。

アンコールが終わると、本当に終わってしまった。当たり前だ。
RSRでお会いしたフォロワーさんたちもきっとこのEarthtentに集まっているのだろうなと思いつつ、わたしは余韻を抱えて1人テントを後にする。夜は深まり、もう少しでその暗がりを手放すだろう。
SunstageではすでにDragon Ashの演奏が始まっていて、遠くでその音が聴こえてくる。肌寒い空気を吸い込むと、汗をかいた身体に沁み渡る。8月に「寒い」という感情が生まれることに驚いた。ここは北海道なのだと改めて実感する。

拠点にさせてもらったテントに戻り、獄Tシャツを脱いでから荷物を詰める。購入した物を一つずつ確認しながら、わたしのRSRは緩やかに終演へと向かっていた。テントの中で帰りの飛行機の時間に間に合う移動手段を検索して、果たしてバスに乗るにはいったいどのくらいの時間がかかるのだろうかとそんなことを思う。
いつまでもこの地に留まっていたい。しかしそれは叶わぬ願いだった。

テントを出るとそろそろ夜が明け始めていた。Sunstageから『陽はまたのぼりくりかえす』が聴こえてくる。Dragon Ashをそこまで知らないわたしでも一緒に口ずさめてしまう。夜を通り抜けて、もうじき朝が来る。そんな当たり前のこと、これまで何度も何度も経験しているはずなのに、どこかに区切りを置いた日はその瞬間が待ち遠しいとそう思う。

会長がステージから日の出の時間を教えてくれていたが、その時刻を過ぎてもまだ姿を隠したままだった。明けてくる空に視線を合わせたまま、よく考えるとわたしはこれまで日の出というものを見たことがないということに気がついた。
20代の頃、バンドマンと付き合っていたわたしは、スタジオ練習明けのファミレスで朝を迎えた事が何度もある。しかし苦いコーヒーを飲みながらバカみたいな話をしながら笑っていれば、気がつけばいつも勝手に夜は明けていた。当たり前すぎる日常が通り過ぎれば眩しく思える。その頃は目の前のことに精一杯でいつだって見逃していたのだ。

薄明りがじわりと広がり、光の色がさらに濃くなる。空はオレンジ色に染まっていく。光が丸みを帯びた姿を形どって。
Sunstageはアンコールに突入していた。それから何曲も演奏されていて、きっともう予定されていた楽曲ではないのだろう。

『生まれたところや 皮膚や目の色で 一体この僕の何が分かるというのだろう』
ブルーハーツの【青空】が聴こえてくる。小学生の頃、休みの日に学校のグラウンドにウオークマンを持ち込み、ダビングしたカセットテープを聴いていたことを思い出す。ああ、どうしてこの曲なのだろう。わたしはいつまで遡ればいいのか。

わたしはいつだってわたしだけれど、長く生きていればやらなければならない事や、個人に紐ついた役割があって、それはきっと今この場所にいる人たちも同じなのだろうと思う。
イヤホンから聴こえてくる音はずっと同じではない。その時によって様々だ。しかしどんな形であれ音楽はわたしの傍にあり、こうして人生に彩りを添えてくれるのであった。

空が一層明るくなった。長すぎる1日は分かりやすいフィナーレを用意していた。ステージからの音は止み、昇った太陽がただそこに佇んでいる。

駅までのバスに並ぶ人たちが足早に出口へと向かって歩いて行く。わたしもお世話になった方々にお礼を言ってから荷物を背負った。ゲートをくぐり現実へと通ずる道を歩くわたしの後ろで、気がつけば日は高くなっていた。あんなに待ち望んだ日の出の瞬間も、明けてしまえばあっという間に見覚えのある形に変わってしまう。
そんな風にこれからもわたしの日常は続いていく。時間は常に過去に向かって流れてしまい、いつだってつかまえることは難しい。

わたしは写真を撮るのが上手くない。だからわたしは自分の目で見たものを忘れないようにしたいと思う。

初めてのRSR。最高に最高の1日だった。

 

おまけ
【北海道美味いものセトリ】
・お寿司featuringさけいくら&ますいくら(魚一心)
・Afro playのカクテル飲み放題コース(Bar)
スープカレー(hirihiri OH! Do-Ri)
・Caffeine モヒート(洋服屋さん兼Bar)
・ホタテのバター焼き
・ポテト揚げ
・望来豚のフランク(石狩市場)
・鮭醤油ラーメン(石狩市場)
・ちゃんこ鍋(ひろみてゃん食堂)
・きのとや ソフトクリーム
サッポロクラシック(数えきれないほど)

髭神様のありがたいお言葉『太って帰る』を完遂した…かと思いきや、17日から18日にかけての歩数が4万歩を達成し、髭神様のお告げは今回ばかりは外れに終わったのであった。

 

戦利品とともに。

10獄放送局最新企画の放送を、本当に楽しみにしています。