箱日記

ライブに行った感想を細々とつづっています。

ザ・マスミサイルのこと。

ザ・マスミサイルというバンドが好きだ。いや、好きだった。
過去形なのは、決して嫌いになったとかそういうわけではなく、ただ今よりも「好き」が日常生活を侵食していた時期があったというだけのことだ。

 


マスミサイル(以下「マス」)は、今年で結成20周年なのだという。ということは2000年結成なわけで、カウントしやすいことこの上ない。
わたしが初めてマスを知ったのは2004年だっただろうか。正式に覚えているわけではないのだが、ちょうど「人間でよかった」というアルバムが発売になってすぐの頃だったことを記憶している。
ちなみにこのアルバムはSONYの忘れ形見「CCCD」という形式のもので、PCには入れられないんだったかな?とにかく不便で不便で、翌年にiPod(第三世代)を手にしたわたしは非常に憤慨したのを覚えている。
出てくるワードがいちいちレトロなのは、それらが全て2000年代半ばに起こった出来事だからである。ちなみにこのiPodの裏側には、よっくんにもらったサインが残っている。

マスは2020年の現在までメンバー交代が多いバンドだと思う。5人編成のバンドで、いっきに3名の脱退となったときは本当に驚いて、ツアーファイナルが急遽脱退ライブとなってしまい、慌てて渋谷まで遠征した。そうバンドにおける【大切なお知らせ】の怖さを教えてくれたのはマスだ。

その後少しだけ活動をお休みしていたが、再出発のライブが行われた。2007年12月15日のことだ。正確に日付まで覚えているのは、わたしの結婚式と日程が丸被りしているからである。
ライブの日付が印字されている記念Tシャツには、後にライブハウスでお願いして結婚祝いの言葉をもらった。

マスの曲は仕事がキツくて本当にメンタルがやられ気味だったころに知って、その時は本当に歌詞がストレートにこっちに向かってくるところが大好きだった。初めて観たライブでは号泣した記憶がある。たしか千葉Lookだったと思うのだけど、わたしの初めての遠征だ。
ライブが終わってからその日に来てくれた人たちにスタッフから一つずつメンバーからのメッセージカードみたいなものを渡されたのだけど、たしか「拝啓」という曲を発売したときのツアーだったからかな?
とにかくその中に一言ずつメッセージがあって、誰の言葉だったか忘れてしまったのだけど「泣いてるの見えたぞ」みたいなことが書いてあった。
それを見て、あ、泣いてる人多いんだなと思ってとても安心したのを覚えている。でもその頃のチケット半券とかフライヤーとかはなくしてしまった。
さすが15年前ともなると記憶が曖昧だけど、事実、ライブハウスで人が泣くってスタンダードと思っていなかったから驚いたんだよね。

それから夢中でライブに通っていた20代。メンバー脱退から少しの間活動を休止していて、その間にわたしが結婚をして、子どもを産んで、そしてわたしはあまりライブハウスに行かなくなった。行けなかったというのもある。お酒もたばこもやめてしまって、朝5時に起きて夜9時に寝てしまう生活を繰り返していると、ライブハウスがとても遠く感じるのだ。昼間のきらきらとした明るさの中で公園なんかに行っちゃって、滑り台やブランコで遊ぶ息子を追いかけている毎日。
その毎日がとても充実していると、夜がぴかぴか光って見える大人の楽しさにあふれたあの場所に足を踏み入れる生活がとても遠くなってしまった。


マスはよっくんの「言葉」を聴く音楽だとわたしは思っていて、その中に込められているものが仕事をしていない時期のわたしには少しだけ響く場所も変わっていたのかもしれない。

とはいえ、出産後の初ライブはマスだった。ちょうど高松で暮らしていたということもあって、DIMEがわたしのライブ復帰だった。
その時の感想を当時のブログから引用。

マスのライブを観て思ったこと。
ステージの上と下に人がいて、伝えたい事とそれを掴もうとしている瞬間がそこにある。
それがすごく良くて、やっぱりそういう生のやり取りでしか伝わらないことがきっとあるよな、と。
自分を持って腹をくくって何かをやってる人はやっぱり輝いてる。
それを下から眺めるその他大勢の中の自分は、その輝きを少しだけもらって、また日常生活を生きていくためのちょっとした糧にするのです。

10周年ツアーだったので、ちょうど10年前。今のわたしと全く同じようなことを考えていて、たった10年ぽっちじゃわたしも変わらなけりゃライブハウスもライブも変わらない。

……そう本当は変わっていないはずだったのだ。
だけど、実際は世の中がこんなことになっている。ものすごいスピードで変化をしている。
ただそのおかげで今回のようにマスのライブを観る機会が増えた…そう思うと世の中は悪い事ばかりでもないのかもしれない。

今ここ、目の前にあるもの、置かれた状況で何ができるのか。それを必死に考えて、がむしゃらに突き進んでいくスタイルのバンドだと思う。
マスの言葉、よっくんの歌詞やMCはまっすぐだと思うけれど、綺麗事というか整ったものではないところが好きだ。どこをいつ切っても同じ顔が出てくる人がわたしは好きなのだけど、まさによっくんもそうで、有言実行なところがいつもカッコいいと思う。若い頃は弱いんだか強いんだか分からないなーと思っていたけれど、今はナチュラルな人なんだろうなって思ってる。
マスのオリジナルメンバーはよっくんと、ベースの洋輔さん。猫が好きでのったりとした癒し系。

久々にライブに行ったのは去年。福岡でのワンマンライブ。
マスのライブはこんな風に何年かは空くのだけど、思い出したように行くっていうのがここ数年続いていて、そのたびに「登場SEが変わらない」のと「”キーポイント”始まり」の2点がわたしの中でポイントが高い。
キーポイント始まりはもちろん絶対ではないのだけど(今回も違ったし)、定番スタートってやっぱり嬉しくなるよ。一気にブランクが埋まってしまうんだよね。ハマると一つのツアーに何回も行っちゃうし、そのハマりから外れるとライブに行かなくなるから、こうやって間に何年か空いてから行くというのとてもいいね。今のところそういう楽しみ方ができるのってマスだけなんだな。

わたし的ブランクの間にリリースされた曲もあるから、知らない曲があるっていうのも新鮮だよね。楽しい。

「マスは今のマスが一番カッコいい」というのはフォロワーさんからもらった言葉なのだけど、本当にそうだねと思う。きっと長く続けているバンドは、いつだって今この瞬間が一番カッコいいんだよ。昔しか知らないわたしは古参なんかじゃなくて、ただの昔ファンだった人でしかないのだけど、今のマスが一番カッコいいって本当によくわかる。
ステージの上で色んなことを知って、気づいて、変わっていく。大事なところは変わらずに、それができるからこそ長くステージの上に立ち続ける。だからカッコいいんだよね。
配信ライブが楽しかった。有料の配信ライブをちゃんと購入して…と思うだけで、無料ライブを観てしまうのってきっとダメなんだろうな。すまぬ。

とはいえ、マスのライブは本当に観に行けない人達がたくさんいると思うんだ。だって自由な時間や本当の意味での自由がないほどに、マスが刺さるだろうから。
そうたとえば家庭との調整で、金銭的な問題で、身体的な事情で、精神的な理由で。そんな風に本当に様々な人があのまっすぐな言葉を聴きたいのではないかな。
だから配信にすることで少しでも誰かのところに届くといいなと思う。
あの頃、仕事がつらくて辛くて、それでも機動力と自由になるお金だけはあったわたしがライブハウスで救われたように、機動力がなくてもスマホさえあれば、簡単にアクセスできれば、きっと必要な人に届く。いや届け。

配信ライブ、まだツイキャスアーカイブが残っていて、無料だから誰でも見られるのでマス知らないって人に観てほしい。
こういうことを面と向かって言うと照れるよねみたいな暗黙の空気や、ちょっとくすぐったいなは完全に通り越して、思わず引き込まれてしまうから。

(ちなみに上記配信アーカイブは9分45秒からライブが始まるよ)

わたしはやっぱりライブバンドが好きだ。
そして3月に予定していたアシュラシンドロームとの対バンライブ。北九州でまたやってくれるって言ってくれたからただひたすらに待ってるんだぞ!

「教科書」がやっぱり一番好きな曲。